24話 もっと早く来ればよかった(蒼真)
あの日帰ったあと、漣にメッセージを送ったんだけど、二日間既読がつかない。
大学でも会えていない。
こんなことって今までなかった。
会った時に元気がないように見えたのは……。
もしかして何か悩み事でもあった……?
胸の奥がざわざわした。
***
昼、学食に漣はいなかった。
芸術棟に行く。
漣がいつもいるアトリエを覗いた。
いつも座っている場所を見る。
……いない。
漣とよく話している子、悠月くんを見つけた。
悠月くんは目立つ。いつも可愛らしい格好をしていて、高貴な猫みたいな雰囲気を纏っている子。
漣に会うために芸術棟へ行くと、いつも近くに居るから顔を覚えてしまった。
悠月くんに声をかける。
「あのっ! 悠月くん、だよね……?」
一瞬、嫌そうな顔をされた。なぜだ……。
「……そうだけど。何?」
「れ……あっ、篠宮 漣、来てない? 二日間連絡とれてなくて……」
オレがそう言うと、悠月くんは答えた。
「見ていないよ。昨日も今日も」
彼は、冷たい声で続けた。
「キミが連絡取れないなら、誰も取れないと思うけどね。そんなに気になるなら家まで行ってみれば?」
それって、ここでは誰も漣の連絡先を知らないってこと、なのかな……。
「そう……だね。夕方まで連絡取れなかったら行ってみるよ! ありがとう」
――夕方になっても漣から返事はなかった。
電話をかけても応答なし……か。
***
漣の家の前まで来た。
アポなしで来たのは初めてだった。
インターホンを鳴らしても反応なし。
ノックして声をかけてみる。
「漣いる? 蒼真だよー。漣ー?」
返事はない。
静かだ。
もう一度、漣を呼んでみる。
オレの声だけが響く。
ここにも居ないのか……?
ドアの前で待ちながら、三日前のことを思い出す。
ぼんやりした目。
深い呼吸。
――あれ、全部おかしかったじゃん。
その時、部屋の中から物音が聞こえた気がした。
ドアに耳を当てるとゆっくりと足音?がする。
音がゆっくり、少しずつ近付いてくる。
足音が止まって……数秒後。
ドアが静かに開いた。
……漣だ!
その瞬間、全身の力が抜けた。
最悪の想像を、してしまっていたから。
呼吸が浅い。フラフラしながら玄関まで来たのか、壁に寄りかかって、立っているのも苦しそうな様子。
「漣?!」
漣は、絞り出すように弱い声で言う。
「……風邪、うつるから……」
漣は一人で苦しんでいたんだ。
こんなことならもっと早く来ていればよかった……。
何してんだオレ。なんで二日も待ってたんだよ。
なんで「大丈夫だろ」なんて思ったんだ。
胸が締め付けられて……息がうまく吸えない。
後悔と、漣が生きていた安堵が同時に押し寄せる。
「漣……! 生きてて良かったぁ……ほら、部屋行こ!」
漣を支えてベッドまで連れていく。
脱ぎっぱなしの服。空のペットボトル。
食事している形跡もない。
きっとこの二日間、動けなかったんだ……。
「病院は行った?」
「行けて……ない」
漣の着替えを用意して、食材や薬の買い出しに行くことにした。
***
買い出しから戻ると漣はベッドで横になっていた。
水と風邪薬を渡す。
「漣、キッチン使っていい?」
「うん」
買ってきた白飯と水を鍋に入れて、コンロの火をつける。
お粥って久しぶりに作るかも。
味、大丈夫かな……。濃くしすぎないように……。
味見をしてみる。うん、問題なさそう!
器に入れて漣の部屋に持って行く。
「お粥できたよ。少し冷ましたんだけど……熱かったらふーふーするから!」
「ありがと……」
ベッドに座ってお粥を食べる漣をじっと見る。
三日前会った時、気付けなくてごめんな。
「熱くない? しょっぱくない?」
「……うん。おいしい」
漣がすこし笑ってくれた。
食べ終わったあとは、冷却枕、額に貼る冷却シートを準備して寝かせる。
しばらくすると、静かになって寝息が聞こえた。
寝息を聞いた瞬間、気持ちがほどけた。
ちゃんと息をしてる。
漣の額に手を当てて、熱を確認する。
触れていないと、まだ不安で……髪を撫でた。
早く治るといいな……。
こんな状態の漣をひとりにしておけない。
泊まって様子を見ることにした。




