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隣の景色  作者: のゆ
11/12

10話 始まって、終わった

 ――夏休み明けの学食。

 昼休みの学食は、相変わらず人が多くて賑やか。


 私(矢土 彩花(やづち あやか))は、友達の真帆(まほ)琴音(ことね)と一緒に談笑しながらランチを楽しんでいた。


 ――ふと視界の端に、見覚えのあるふたりを見つけた。

 

 蒼真くんと漣くんだ……!


 夏休み前に、蒼真くんのサークル活動を手伝った日から、私はこのふたりの関係性が気になって仕方なくなっていた。

 蒼真くんは漣くんのことを『幼馴染で親友』って言っていたけれど……近すぎる距離感を目の当たりにして、付き合っているのではないかと疑っている。

 

 

 蒼真くんが喋って、漣くんは相槌少なめで聞いてる。

 学部が違っても一緒にごはん食べて仲いいなー。癒されるなぁ、尊いなぁ……。

 

 そう思った次の瞬間――。


 蒼真くんが、漣くんの顔に手を伸ばした!?


 は???

 いや、ちょっと待って???


 指先で、漣くんの頬を拭う蒼真くん。

 今の何!?


 漣くんも漣くんで、拒否せず、されるがまま。


 そこに、私と蒼真くんと同じ教育学部の、チャラ男――奏汰(かなた)の声が飛んだ。


「ハイハイ、また始まったー!」


 いやいやいやいや! ふたりの邪魔しないで…!?

 今じゃないでしょ??! 空気読んで!?

 ……てか今、『また』って言った? 奏汰は何度もこのイベントに立ち会ってるの!?


 奏汰のデリカシーのないイジリが続く。

「お前ら、ホント距離感バグりすぎ! カップルかと思ったわ」

 

 あぁ……。蒼真くん、漣くんの顔拭うのやめちゃったじゃん!

 もう少し見させてーーー!!!


 思わず、肩を落としてうなだれてしまう。

 

 しばらく呆然としていたところ。

 

「……か。……あやか!」

「はっ!!」


 真帆に名前を呼ばれていることに気づく。


「彩花、どーしたの」

「ごめん。今ね……世界が始まって、終わったんだ……」


 真帆と琴音に『尊いふたりの世界を奏汰がぶち壊した』なんて言えるわけない。

 

「え……彩花、疲れてる?」

「もしかして実習前で追い詰められてる……とか?」


 ふたりが心配そうにこちらを見てる……。

 でも、今はそれどころじゃないの!

 

 ――蒼真くんと漣くん。やっぱり私が知ってる「親友」の距離じゃない。


 頭の中ではずっと、あの光景が再生され続けていた。


 公式の供給が突然すぎた。情緒の準備できてないんですが!!

 無理……尊い……。


 今日も私は、ふたりの関係性という名の沼に静かに沈んでいくのでした。

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