6話
1. 金曜午後6時、ファミレスにて
「今週のテーマは、“彼女がいる男の空気感”だ」
佐久間が言った。
経済学部らしく、今日もホワイトボードアプリを開いている。
画面には、「彼女持ち=空気の密度が違う」と書かれていた。
「俺、観察してみたんだよ。ゼミの男子で、彼女いるやつ」
西野が言った。
文学部らしく、今日もミネストローネ。
「なんか、“余裕”があるんだよね。
LINEの返信も、遅いけど雑じゃない。
服も、ちょっとだけ気を使ってる。
でも、頑張ってる感じはない」
「それ、“恋愛の安定期”の空気だな」
佐久間が言った。
「俺たち、常に“恋愛の予備校生”みたいな空気出てるもんね」
翔太は黙ってポテトを食べていた。
でも、今日は、少しだけ言った。
「……陸って、そういう空気あるかも」
3人が、静かに陸を見た。
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2. 違和感の正体
「陸ってさ、なんか“焦ってない”感じするよね」
西野が言った。
「恋愛の話してても、ちょっとだけ“外側”にいる感じ」
佐久間が言った。
「……俺、そう見えてる?」
陸が初めて口を開いた。
「うん。なんか、“もう答え知ってる人”みたいな空気」
翔太が言った。
陸は、静かに水を飲んだ。
その沈黙が、答えだった。
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3. 彼女がいることの罪悪感
「……俺、彼女いる」
陸が言った。
3人が、黙った。
「でも、この会が好きで。
だから、言えなかった。
“彼女がいない理由”を語るのが、楽しかったから。
俺も、昔は語ってたから」
「それ、裏切りじゃないよ」
西野が言った。
「むしろ、“彼女がいる男の空気感”を、俺たちの中で再現してくれてた」
佐久間が言った。
翔太は、スマホのメモに書いた。
“彼女がいる=語れないことが増える/でも、語れることも変わる”
陸は、少しだけ笑った。
その笑顔は、今までで一番“素”だった。
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4. 俺たちは、まだ変われるかもしれない
「次回のテーマは、“恋愛と友情は両立するのか”でいこう」
佐久間が言った。
「それ、今日の続きだね」
西野が言った。
「俺、ちょっとだけ語れるかも」
翔太が言った。
陸は、静かに頷いた。
彼は、“語れること”が変わったことを、少しだけ嬉しく思っていた。
——俺たちは、まだ変われるかもしれない。
——恋愛未満のまま、でも、友情は続いていく。




