5話
1. 金曜午後6時、ファミレスにて
「今週のテーマは、“告白のタイミング”だ」
佐久間が言った。
経済学部らしく、今日もホワイトボードアプリを開いている。
画面には、「告白=感情のリスク投資」と書かれていた。
「俺、告白したことない」
西野が言った。
文学部らしく、今日もミネストローネ。
「好きって言うと、物語が終わる気がして。
言わないままの方が、ずっと続く気がして」
「それ、物語じゃなくて、停滞だよ」
佐久間が言った。
「でも、言ったら壊れるかもしれないじゃん」
「言わなくても、壊れるよ。
“言わない”って、相手にとっては“興味ない”に見える」
翔太は黙ってポテトを食べていた。
でも、今日は、少しだけ言った。
「……俺、言えなかったこと、あります」
3人が、静かに彼を見た。
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2. 告白の“しなかった”記憶
「高校のとき。
同じクラスで、席が隣で、文化祭も一緒で。
でも、言えなかった。
卒業式の日、LINEで“ありがとう”だけ送って終わった」
翔太が言った。
「それ、言ってたら、何か変わってたと思う?」
西野が聞いた。
「わかんない。でも、言ってたら、今も思い出さないかも」
佐久間は、スマホのメモに書いた。
“告白=記憶の分岐点”
陸は、静かに頷いた。
彼は、“告白したことがある”側だった。
でも、その記憶は、誰にも話していない。
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3. 告白のタイミングは、誰のものか
「結局、告白って、いつすればいいの?」
西野が言った。
「相手の好感度が“60%以上”になったとき。
それが、経済学的な最適解」
佐久間が言った。
「でも、それって、測れないじゃん。
恋愛って、数値じゃないよ」
「じゃあ、文学的には?」
「“言いたくなったとき”が、タイミング。
でも、それが一番、失敗する」
翔太は、スマホのメモに書いた。
“告白=感情の暴走/でも、暴走しないと届かない”
陸は、黙って頷いた。
彼は、告白したときの“相手の表情”を、今も覚えていた。
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4. 俺たちは、まだ言えていない
「次回のテーマは、“彼女がいる男の空気感”でいこう」
佐久間が言った。
「それ、俺、観察してみたい」
西野が言った。
「俺、ちょっとだけ、わかる気がします」
翔太が言った。
陸は、静かに笑った。
でも、その笑顔の奥に、“言えていないこと”があった。
——俺たちは、まだ言えていない。
——でも、言えなかったことが、今の俺たちを作っている。




