4話
1. 金曜午後6時、ファミレスにて
「今週のテーマは、“恋愛経験ゼロのリアル”だ」
佐久間が言った。
経済学部らしく、今日もホワイトボードアプリを開いている。
画面には、「恋愛経験ゼロ=語れないことを語る勇気」と書かれていた。
「俺、ゼロだよ」
西野が言った。
文学部らしく、今日もミネストローネ。
「告白したこともないし、されたこともない。
でも、妄想はある。めっちゃある」
「それ、経験じゃなくて創作」
「でも、創作の中に、俺の“本音”があるんだよ」
翔太は黙ってポテトを食べていた。
でも、今日は、少しだけ口を開いた。
「……俺も、ゼロです」
3人が、静かに彼を見た。
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2. 語れないことを語る
「中学も、高校も、大学も。
好きな人はいたけど、言えなかった。
言ったら、何かが壊れる気がして」
翔太が言った。
「壊れるって、何が?」
西野が聞いた。
「自分の中の“日常”みたいなもの。
好きって言ったら、もう戻れない気がして」
佐久間は、スマホのメモに書いた。
“恋愛経験ゼロ=感情の封印”
陸は、静かに頷いた。
彼は、恋愛経験が“ある側”だった。
でも、翔太の言葉に、少しだけ刺された。
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3. 恋愛経験ゼロの強さ
「でもさ、経験ゼロって、弱さじゃないと思う」
西野が言った。
「むしろ、“語れないことを語る”って、めっちゃ強い」
「俺、今日ちょっとだけ、言えてよかったです」
翔太が言った。
「それ、経験値に入れていいと思う」
佐久間が言った。
「じゃあ、俺たち、今日ちょっとだけレベル上がった?」
「うん。恋愛未満だけど、成長はしてる」
陸は、静かに笑った。
でも、その笑顔の奥に、“経験があることの罪悪感”があった。
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4. 俺たちは、まだ語り始めたばかり
「次回のテーマは、“告白って、いつすればいいのか”でいこう」
佐久間が言った。
「それ、俺、語れないかも」
翔太が言った。
「語れないことを語るのが、この会の意味だよ」
西野が言った。
陸は、黙って頷いた。
彼は、“告白したことがある”側だった。
でも、それを言うつもりはなかった。
——俺たちは、まだ語り始めたばかり。
——恋愛未満のまま、でも、少しずつ前に進んでいる。




