3話
1. 金曜午後6時、ファミレスにて
「今週のテーマは、“清潔感”だ」
佐久間が言った。
経済学部らしく、今日もホワイトボードアプリを開いている。
画面には、「清潔感=恋愛偏差値の初期値」と書かれていた。
「それ、どういう意味?」
西野が聞いた。
文学部らしく、今日もミネストローネ。
「清潔感がないと、恋愛の土俵にすら立てない。
つまり、偏差値で言うと“受験資格”みたいなもん」
「じゃあ、俺たち、偏差値足りてないってこと?」
「たぶん、そう」
翔太は黙ってポテトを食べている。
でも、スマホのメモには「清潔感=他人が感じる安心感」と書いてあった。
陸は、静かに水を飲んでいた。
彼は、今日も“彼女がいる”ことを黙っていた。
---
2. 清潔感の構成要素
「清潔感って、何で決まるんだろう」
西野が言った。
「髪型、服装、匂い、肌、爪、姿勢、声のトーン、あと部屋の写真」
佐久間が即答。
「それ、全部外見じゃん。内面は?」
「内面は、清潔感を“維持できるか”に関わる。
例えば、LINEの言葉遣い、返信のタイミング、絵文字の選び方」
「じゃあ、俺の“草”はアウト?」
「“草”は、使い方による。
“草”だけ送るのは、雑。
“草生える”なら、まだセーフ」
翔太は、スマホを見ていた。
昨日、“草”だけ送ってしまったLINEを思い出していた。
陸は、彼女とのLINEに“草”を使ったことがない。
でも、それを言うつもりはなかった。
---
3. 清潔感の正体
「結局、清潔感って、“恋愛対象として見られるか”の初期判断だよね」
佐久間が言った。
「でも、それって、“自分で決められない”じゃん。
相手が感じるものだから」
西野が言った。
「だからこそ、怖いんだよ。
努力しても、伝わらないことがある」
翔太は、スマホのメモに書いた。
“清潔感=努力の非対称性”
陸は、黙って頷いた。
彼は、清潔感を“自然に持っている”側だった。
でも、それを言うと、この会が壊れる気がした。
---
4. 俺たちは、まだ曖昧の中にいる
「次回のテーマは、“恋愛経験ゼロのリアル”でいこう」
佐久間が言った。
「それ、俺、語れるかも」
西野が言った。
「語れることがあるって、ちょっと安心する」
翔太が言った。
陸は、静かに笑った。
でも、その笑顔の奥に、“語れないこと”があった。
——清潔感って、曖昧だ。
——でも、曖昧なまま、俺たちは生きている。




