技名と決めポーズの間
もうよく分からないので、とりあえず小説書こうと意識せずに雰囲気でやります。
「よし、とりあえず買い物するか。」
「何買うの?」
「考えてみたら特にないかな。」
「…………。」
まあいいでしょう。このくらいならもう大丈夫。
「そういえば、剣とかの武器無くていいの?」
「うーん。武器ねえ……。」
武器も無しにどうやってきたのだろうかこの人は。アレか、ゴボウか。
「剣も使えるけどねえ……。」
「ん?使えるけど?」
「まあ見ればわかるさ。」
「はぁ……。」
またよく分からない事言ってるなと思いながら、とりあえず武器は必要だと思うので、武器屋に向かうことにした。
武器屋にたどり着き、中に入る。
「らっしゃい。」
まあ田舎ですし、あんまりやる気のなさそうなおっちゃん店員だ。
商品を見渡してみたところ、品揃えも微妙な感じだ。
「おっちゃん、一番安い剣ある?刃こぼれしててもいいんだけど。」
「変な客だな。そんなんでいいならあそこにあるよ。」
指を指した場所を見ると、ボロ臭い剣が傘立てみたいな所に沢山あった。
適当に剣を手に取ると、錆びた剣や先端の折れた剣、刃こぼれしている剣ばかりだ。
……。特に掘り出し物もなさそうだ。
「うーん。これかな。」そう言ってゲイルはそれなりに刃こぼれしている剣を選んだ。
「おっちゃん、いくら?」
「銀貨一枚。」
銀貨一枚=日本円にして一万円
この品質なら高いと思うけど、まあ一応金属ですししょうがないかな。
「はいよ。」
支払いを終え、店を出た。
「よし!行くか!」
ボロい剣でもゴボウで戦える人間ならとりあえず十分だろう。魔法も使えるみたいだし。
そしてアロゼ村を後にした。
きちんと道があるので、迷う事なくたどり着けるだろう。
村を出ると見晴らしも良く、遠くに大きめな町も見えた。
私は未だに少し漢臭いエストを頭の上に乗せ、町へと向かう。
ゲイルが言うにはきっとなんかあった時にエストが守ってくれるとのこと。何もなければいいが。
アロゼ村を出て、おおよそ一時間が経った頃だった。
草むらからゴブリンが3体ほど飛び出してきた。
「よし、グレイス!下がってろ!」
剣を手にしたゲイルは目にも留まらぬ速さでゴブリンを二体両断した。
うわぁ……グロいな……。ゲイルが強いのはわかるけど、剣は今の所何でもないじゃないの。
あっさりとやられた仲間を前に、残ったゴブリンは狼狽えている。
「見てろよ。ハァッ!」
そう言うとゲイルは剣を強く握りしめた。スキルを使うのだろう。
「G.W剣術奥義!」
そう言うと剣から、「無理ッス……。」と声が聞こえ。
そしてそのままへにょ〜とあの金属製品が、うなだれるように曲がっていった。
「え゛!?」
なにそれ。本当なにそれ。
「ほらな?」
「ほらな?じゃないよ!どういう事!?」
「説明はとりあえず残りを倒してからな。」
残りの一体がゲイルの後ろから飛びかかってくるのが見えた。
「ゲイル危ない!」
「大丈夫だ。G.W神拳奥義!」
ゲイルは右拳を握りしめ、そのまま後ろに力いっぱい振りかぶる。
「スーパーマグナムストレート!!!」
「ダサっ!子供のセンス!」
ゲイルが放つそのパンチは、ゴブリンにクリティカルヒットしなかった。
拳はゴブリンの左を通り、上腕二頭筋がゴブリンの顎の先とぶつかる。
その場に崩れ落ちたゴブリンは、血を吐きながら吹き飛んでいった。
そしてゲイルはゴブリンに背を向け、パンチを決めたポーズをしている。
もう頭を抱えるしかなかった。
「どうよ!」と誇らしげに言ってくるが、なんかもう……うーん。ツッコミ所が立て続けに襲ってくるので、なんて言ったらいいのか……。
「どした?」
「訳わからん!訳わからん!わけわからぁーーん!!!」
「え?大丈夫?話聞くよ?」
もういい!まとめてブチまけろっ!
「まず剣!なんか喋ったし!柔らかくなった!意味わかんない!」
「G.W剣術?神拳?そんなに種類あるもんか?奥義ってそんなに種類あんのか?意味わかんない!」
「ハァ……ハァ……。名前ダサいストレートとか言って絶対フックだったよね?外してる割にはその場にゴブリン崩れ落ちてさ……。そっから血吐いて吹っ飛ぶってどういう事?崩れ落ちてから何の力が働いたの?い!み!わ!か!ら!ん!」
駄目だ。一度に叫びすぎて、息切れしてやばい。
ハァ……ハァ……おぇ……。
ハァ……ハァ……。
ハァ……。
ちょっと落ち着いてきた。なぜゲイルは何も言わないんだろうか。
気になってゲイルを見上げると……。
引きつった笑顔をしていた。
私はこれから無事でいられるだろうか……。