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吸収力

――――昔の夢を見た。


あれは父が兄に剣の稽古をつけていた時だ。

兄は父に向かって連撃を撃ち込むも、父は全ていなす。

はたから見てまるで踊っているようだった。

焦った兄は全力の一撃を放つも、父はそれを受け流し、今思えば自分の子供にそんなにやるかってくらいの一撃をそのまま兄に喰らわせていた。

痛がる兄を特に心配せず、「お父さん踊ってるみたいできれい!すごい!ねーねー!どうやってるの?」と聞いた。


「あれはね、相手がわーってきたのを普通に受け止めたらガーンってなるだろ?それが、わーってきたのを剣を斜めにしたりしたらガーンってならないで、スーンってなるだろ?スーンってなったら相手はわーって勢いが残ってるから、こっちはシュンって動けるんだ。そうしたらあとはシュンの勢いのままドーン!って訳さ。」


「なんかわかんないけどわかった!」


「そうかそうか!グレイスは天才だな!」


―――――


「ごぼばっ!」

……危なく溺れ死ぬ所だった。


「なんでこのタイミングで昔の事思い出したんだろう……。」

きっとわかったんだ。ガーンとかスーンとかシュンとかそういう事。

真正面から受けずに、受け流す。ガーンってなるって事は受け止めて少なからずもダメージを受けているという事。

流す事でシュンってこっちのターンにできるって事。

語彙力の無さは遺伝だって事。


そういえば笑いの神も言っていた。ノリと勢いが大事だと。

生きていくのにいちいち全部受け止めていたら、ただ心が死ぬ。

人生は取捨選択の連続だ。受け止めなくてはいけない事、流した方がいい事。選ぶのは全部『自分』だ。

ゲイル(アレ)と行動を共にするならば、自分を変えなければ。


……ちょっと腑に落ちないけど、しょうがない。

…………自分が戦うわけじゃないのにな。


「よし!とりあえずノリと勢い!後は適当!」

パァンと両頬を叩き、気合を入れ風呂から上がる。

着替えながらも思考は止まらない。


ちゃんとゲイルと向き合おう。……なんで向き合わないといけない?

依頼が終われば終わりなんだからそこまでしなくてもいいのでは?

いや駄目だ。考えたら負け!考えたら負け!!


よし!寝る!多分村を救える希望は見えたはず!


新しい自分の部屋に向かう。ゲイルの部屋の前を通るとまた何か聞こえてくる。


「グーチョキパーで〜グーチョキパーで〜何作ろう♪何作ろう♪右手はグーで左手もグーで……まじかよ不可視の剣(インビジブルソード)出来ちゃったよ!」


……部屋に向かう。


「いよっしゃ!おやすみぃ!」

秒で寝た。


―――――


朝になり、体内時計でなんとなく目覚めた。

「あーめっちゃ寝た!超スッキリ!」


寝癖を直し、顔を洗い、歯を磨く。

準備が出来たので朝食を取りに食堂へ向かう。


「ジョアンナさん!おっはよーございます!」


「おはよう!グレイスちゃん!なんか調子良さそうだね!」


「はい!めっちゃ寝れました!悩みも力技で解決しました!」


「わはは!なんかしらんけど良かったね!」


「はい!」


椅子に座り朝食を待つ。するとゲイルがやって来た。


「ジョアンナさん。おはよーごぜいます。」


「おはようゲ……イル……。」


これはゲイルか?髪を下ろしてなんか凄いイケメン感増してる!

ちょっと寝癖はあれど、アンニュイな感じがなんかたまらん!


「おはよーグレイス。」

挨拶しながらポリポリ頭を掻くとポトッと何かが落ちる。


「ん?ゲイル何か落ちたよ?」


拾おうとしてよく見る。


「石?」


何か違和感に気づく。いや、これは石じゃない。昨日のスライムの核だ。うっすらゲル状の物が纏わりついている。


「ゲイルこれ……昨日のスライムじゃない?」


「うん。倒したと思ったら髪の毛についてたから、とりあえず飼ってみようかなって。」


ウソでしょ?


「早く倒すか外にぶん投げるかしなさい!」


「いや大丈夫。テイム済みだから。」


「ゲイルってテイマーだったの?」


「いやそんな事ない。話せば長くなるけどこんな感じさ。」


―――――


風呂に入った時、頭を洗ったらなんかコロンっと落ちてきた。あ、これスライムの核だなぁ。潰れてなかったんだなと。

そこでふと、核って持ってたらどうなるんだろうっていう気持ちが芽生えてきたんだ。


「とりあえず頭に戻しておくか……。」


で飯食って寝た。


朝起きたらちょっと成長してた。多分俺の寝汗や皮脂、角質を栄養にしたんだろうな。


こいつは殆ど俺で出来ているんだ!そう思ったらなんか可愛いなって。我が子のように、寧ろ俺の分身だと思ったんだ。


「大きくなれよ……。」


―――――


「んで今に至る。」


「長くないし、なんか色々キモい。」


「まあ……ちゃんとお世話出来るならあたしはいいと思うけど。」


え?ジョアンナさん?え?


「ですよね!やっぱりジョアンナさんならそう言ってくれると思った!」


「「イェーイ!」」 パンッ!


「なんでハイタッチしてるの……。」


本当に理解できない。いや駄目だ。理解するな!受け止めすぎるな!頑張れ私!捻り出せ!言葉を!思いを!振り絞れ!


(そうじゃない!自然に行くんだ私!流れに乗れ!)


ハッ!?そうだった。ここは多分スーンって流す所だ!ありがとう脳内会議時のグレイスB!


(いいってことよ……。)


「それでテイム出来たことになるの?」


「まあな。こいつにはもうギャ気が満ちているのが俺にはわかる。」


「ギャ気って……何?」


「魔法を使う時、そこら中にあるマナと自分の魔力を使うだろ?火のマナとか風のマナとか。」


「うん。」


「聖属性の魔法と魔人とかが使う闇魔法は特別で、聖魔法なら聖気。闇魔法は邪気。」


「ふむふむ。」


「んでギャ気。」


「答えになってないよ!」


「つまりギャグ属性の魔法?そんなの知らないけど、それを使うのにマナのような物。ギャ気ってのが必要ってことね?」


「その通り!」


なんでジョアンナさんそれでわかるの……?私の理解力が足りないだけか?


「まあそんなわけでその子はもう仲魔ってことでいいの?」


「ぴー!」と鳴きながらスライムはぴょんぴょんしている。


「な!」


なんかちょっと可愛く見えてきた気がしないでもない気がするような感じがしてきた。


「ちょっと持ってみてもいい?」


「おう。」


私がスライムに手を差し伸べると、スライムは手の上に乗ってきた。ちょっと可愛いな。

そのまま顔の前に手を持っていく。


「よろしくね……。ところでゲイル、この子は名前はあるの?……うっわ漢臭っ!」


この子を構築している物質が、ゲイルの臭いそうな部分で出来ているとのことなので、とても男脂臭がした。


「うーん。俺より強く大きくなれって思ってるから……。ゲイル、ゲイラー、ゲイレスト……。ゲイレストかな!」


「…………。」


スライムがなんか嫌そうなので、ゲイル案も取り入れつつ勝手に決めようかな。


「エストとかどう?なんかカッコいい響きな感じがするし。」


スライムは「ぴー!!!」と鳴きながらぴょんぴょんしている。


「よし!決定!よろしくねエスト!」


「よろぴく!」


え……?喋っただと……。


「さすが俺の子。戦いの中で成長しているな。」


「本当ね!可愛いわこの子!」


ジョアンナさんって化物かな……?

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