慣れと洗脳は親戚
やっとバーダック村に着いた……。今日一日で色々ありすぎた。
つかれたあしいたいはやくやすみたいからだあらいたい。
村の門番のおじさんが近づいてくる。
「あんたら見ない顔だな。旅人かい?それにしても汚えな。」
……あんたら見ない顔?ゲイルはバーダック村に寄って来たんじゃないの?
「そうなんだ。そして彼女は怪我をしているから、宿屋と治療術師を探している。案内して欲しい。」
……案内って出会う前はこの村に居たんじゃないの?
「いいだろう。アロゼ村へようこそ!」
違う村じゃねえか……。眉間にシワを寄せ口を開けたままゲイルを見上げる。
ゲイルは真顔だった。
「優しくしてくれた人ってさ、優しくしてあげたくなるよね。」
はぁ……。まあ恩人に対して遠慮しなさすぎたかな。
ちょっと反省するけど、ゲイル相手だときっと期間限定での反省だろうなと思う。
このままでは汚くて治癒術師に会うのもよろしくはないので、まずは宿を案内してもらって身体を洗わせてもらおう。
「すみません。身体を洗いたいので宿屋に連れて行ってもらえますか?」
「あいよ。」
そうして宿屋に着いた。
このまま中に入るわけにはいかないので、門番さんが中に入り話をしてくれた。
やり取りが聞こえてくる。
「おかみさん!今日泊まりたいって奴らがいるんだけど、空いてるかい?」
「大丈夫だよ。で、本人はなんで入ってこないんだい?」
「スライムまみれで汚えからよ、中に入れられないよ。」
「そうかい。先に風呂連れてってやるかい。」
やった!お風呂あるんだ!嬉しい!
そしておかみさんと門番が出てきた。
「本当だ。汚いねぇ。おや?怪我してるのかい?」
「こんなにベチョベチョだったら治癒したくないかなと思いまして……。」
「大丈夫だよ。アンタ、おばあ連れてきてやんな。」
「わかった。ちょっと待っててくれ。」
門番のおじさんは走っていった。
わぁ。すごいやさしい。
「ようこそ。ごろ寝亭へ。あたしはジョアンナ。あんたらは?」
「グレイスです。宜しくお願いします。」
「俺はゲイル。宜しく!」
「ゲイルって……。アンタまさか鬼人のゲイルかい?」
「なんかそう言われている。」
「ははぁー!うちにも有名人が来てくれるなんて!ちょっとどっかにサインしておくれ!」
「いいぜ!」
どんな人か知った時に後悔しないかなぁ……。
そうしてわちゃわちゃしているうちに門番おじさんがおばあらしき人を背負ってきた。
「待たせたな!よいしょ。」
おばあを降ろす。
「どれどれ……。このくらいならすぐ治るね。」
おばあは足に手をかざす。なんかあったかい光。
「どうだい?もう歩けるだろう?」
立ってみた。歩けた。全く痛くない。
「やったぁ!ありがとうございます!」
「このくらいならお代はいいよ。」
「そんな!ありがとうございます!」
アロゼ村の人達優しい人ばっかりだ!村を出る前に何かお礼したいなと思った。
―――――
お風呂から上がり、用意された部屋に向かう。
「まあ、流石に別の部屋よね。」
ゲイルの部屋の前を横切った時、何か聞こえてきた。
「…………ダメだ。まだ狂気が足りないっ!」
狂気を演じている?あれは演技?素?どちらにせよ怖いが聞かなかった事にしておこう……。
部屋に入る。質素だが実家のような落ち着きのある部屋だ。とりあえずベッドに転がり、今日一日を思い出す。
やっぱりやめた。頭がおかしくなりそうだもの。
「今日は人生で一番疲れたかも……。晩御飯なにかなー。」
「……お………ゲ……。」
また何かゲイルの部屋の方から聞こえてくる。
起き上がり聞き耳を立ててみる。
「うーん!この美味しさ!おったまゲイルぅ〜!…………これだな!」
ちょっと晩御飯まで軽く寝よう。あとで他に空いている部屋無いか聞こう。