ゴボウ
活字苦手ですけどちょっと思いついたストーリーを形にしてみたいなと思いました。
「最悪だ……。」
何でこうなった……。
エルフの村を救ってもらう依頼をギルドにお願いしようと思って村を出たのに、奴隷商人に捕まるなんて……。
「へへへ…お嬢ちゃん、悪いようにはしないぜぃ?」
周りを見渡すとボスっぽい奴、あと3人か…。
流石に逃げれそうにはない。
「よし。さっさとこいつを馬車に乗せろ。」
「アニキ!ちょっとこいつで遊んじゃダメ?」
「だめに決まってんだろ!商品価値下がるだろこのボケがぁ!!」
「ごめんアニキ…」
よかったぁ……助かったぁ……。でもどうしよう…このままじゃ村が……
ガサガサっと音が鳴る。
「誰かいるのか!」
ボスっぽい奴が叫ぶ。
すると木々をかき分けて青年が出てきた。
「何…?ケンカしてんの?やめなよ。話聞くからさ。」
「なんだコイツ…。」
助けて!と叫びたかった。しかし、彼も巻き込んでしまう。見た所武装してもいない。
それどころか手には、とても立派なゴボウしか持っていない。
ダメだ。巻き込めない。けどどうすれば………。
そんな思いも虚しく、ボスっぽい奴が呟く。
「お前ら。見られたからには殺っちまえ。」
「オッケー、アニキ。」
ボスを除く三人組は青年に向かって行く。
「おっ!話す気になってくれたか!それでどうし…」
三人組の一人がナイフで斬りかかる。
私は咄嗟に目を瞑ってしまった……。
うめき声が聞こえ、恐る恐る目を開けてみると――
立っていたのは青年ともう一人だけだった。
「……っ!コイツ強え!」
何故だ。彼はゴボウしか持っていない。
普通にぶん殴ったのだろうか。
「いくらパンチが強くても、剣のリーチには勝てまい!」
さっきから目立つ子分Aが斬りかかる。
私は再び目を瞑る。
――ギィィン!!!
剣と剣がぶつかり合う音がした。彼は剣など持っていないのに。
まさか剣を仕込んでいた?
「くっ…、オマエ!どういう事だ!」
再び目を開ける。
そこにはあのゴボウで剣を受け止めている青年がいた。
聞いたことがある。剣聖ともなればその氣を宿し、木の枝でも剣のように扱えると。
「オマエ!まさか…剣聖か…!」
青年は真顔で答えた。
「いや…違うけど…。」
「ハッ。なんだ違うのか。よく分からんがさっさと死ね!」
子分Aの渾身の一撃。だがそれも青年はゴボウで受け流す。
その後の連撃も全て受け流していた。
「くっ…なかなかやるな…だが!その自慢のゴボウももう削れて無くなるぜ!」
確かに…あんなに立派だったゴボウが半分以下になっていた。
「そうだな…綺麗なささがきゴボウだな。」
そう青年は呟いた。こんな時に何を言っているんだ?なんでささがきゴボウの話になるのか。というかなんなんだこの状況は。
思わず自分の置かれている状況を忘れ、戦いの行く末を見守っていた。
「ハァ…!?何言ってんだオマエ!?いい加減死ね!」
子分Aは力を貯め、叫びながら剣を振り下ろす。
「くらえ!ブレイクスラッシュ!」
子分Aが技を放つ。その刹那…青年から光があふれた。
そして――
「オレ流奥義!ゴボウレイン!」
青年が叫ぶと、地面に落ちていたささがきゴボウが宙に舞い上がり、雨のように子分Aに降り注ぐ!
「グハッ……」
あっという間に血塗れになった子分Aはその場に崩れ落ちた。
え……?何が起きたの?意味不明が勝ちすぎて言葉にならない。
青年は呟いた。
「うわぁ…汚っ。アク抜き忘れた…。」
さっきまで混乱していたはずなのに。私の何かが爆発した。
「血よりアクの方がマシだろ!!!」
ツッコむつもり無かったのに。心が、いや魂が叫んでいるような感覚だった。
その時だった。
私と青年の何かが――共鳴した。
「そうか…君も…笑いの神の加護なんだね。」
青年は微笑みながらそう言った。
「え……キモっ……。」
心の声が漏れずにはいられなかった。