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女王の手袋


あるところに冬の女王が治める雪の国がありました。

春が訪れることはない国でしたが、女王様は善人とまではいかなくてもまあまあ分別のある方でしたので、人々はつつがなく暮らしておりました。



さて、ある日のこと。

吹雪が止んで、久方ぶりに晴れたので、可愛い妹にせがまれて、近所で変わり者と評判の男の子が散歩に出かけました。


変わり者というのはほかでもありません。

男の子は、女の子の格好をするのが好きな男の子なのでした。

いつでもキラキラな格好をしています。


妹の手を引いて散歩をしていると、突然黒い影が二人に突っ込んできました。


男の子は、天使にそっくりな妹を悪魔がさらいに来たに違いないと思いきり黒い影をぶちました。


殴られたのは黒いカラスで、ぎゃあとわめいて空に逃げて行きました。

──ポトリ、と宝石のついたそれはそれは素敵な赤い手袋を雪の上に落として。


そこから少し離れた場所にルビー色の冬の女王のお城がありました。

真っ白な雪の国では、赤が一番美しい色とされており、女王の大好きな色なのです。


女王は紅色のドレスを着て、緋色のクッションを抱え、ワイン色のソファーの上でおいおいと嘆きに嘆いて、目まで赤くしていました。


パーティーにしていく素敵な赤い手袋が見つからないのです。

素敵な手袋なしにどうやってパーティーへ行けというのでしょう?


そんな時、手袋を拾った男の子が妹と一緒にルビーの道を辿って城へやってきたのでした。


無事に見つかった手袋のことを女王は一瞬で忘れてしまいました。

ぽかぽかと暖かい広間で男の子がキラキラのコートを脱いだとき、男の子の額にチカチカと星が光っているのを見たのです。


「そんなのは常春の女神も風の娘たちも持っていないわ! きっと四季のパーティーで注目の的ね。 わたしに譲ってくれないかしら」

女王が頼みました。


「喜んで。もともとそのつもりでしたから。手袋を拾ったので二つの願いをしに来たんです。ひとつは額の星を取ってもらうこと」


「星が嫌なの?」

「だって僕は目立つの嫌いだもの。だから派手な格好をして星を誤魔化してるんです。額に星をくっつけてるよりは、派手な格好をしてる方が他にも世界にいるし、まだ普通だもの。おかげでお父さんは僕が嫌いだけど。その上星をくっつけてると夜中に月が窓を叩いて、夢を邪魔するし」


女王はよく考えてみました。

睡眠不足になったら、美容にも良くないわね。

さらにじっくり考えて女王は赤い素敵な手袋で満足することにしました。


「手袋を届けてくれてありがとう。その星は空に返しといてあげましょう。それが第一の願いね。もうひとつは何かしら?」

「一週間後の妹の誕生日に彼女の欲しいものが贈られますように」

女王は承知して、素敵な手袋を着けていそいそとパーティーへ出かけて行きました。


男の子は、お父さんと仲直りをし、キラキラの格好を止めた男の子になりました。

誕生日を迎えた妹は、額にチカチカと光る星を持った、ますます天使のように愛らしいと評判の女の子になったそうです。


月を追い返すため男の子はやっぱり夜の番をして、睡眠不足気味。

人生に悩みはつきません。

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