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目移り

作者: Imay/Aimai

 或る昼、或るコンビニの前で傘に残った雨粒を払っていた。横には傘立てが有ったが、生憎折り畳み傘なので店内に入る人を横目に──否、俺の方がサラリーマンに冷たい目で見られていたかも知れないが──大人しくカバーに突っ込む。雨独特のべたつき、蒸している空気に嫌気が差して欠伸をしかけたが、周りの目に怯み、途中で飲み込んだ。

 自動ドアの開閉と一緒に店員の声がし、そちらを見てしまった。あちらがこちらを見ていることなぞ解っていたことなのに目が合って、直ぐに棚を見た。毎日やっている気がする狭い北海道フェアの棚だ。誰もそんな場所には目もくれない。

 雨が降っているのなんてお構いなしに外は暑い。キンキンに冷えた飲み物の棚の前に立った。考えたら部屋にペットボトルゴミが有ったな、等と思いつつ取手を引く。残り一本になっていたキャラクターコラボのお茶だ。噂には聞くが、内容を全く知らないアニメの主人公らしき人物の目は、輝きすぎて最早白目しかない。右二つ隣のお茶が安くなっているので、そちらにしようとも思ったが、ペットボトルカバーは割と助かる。別にこのアニメが好きなのだろうと推測されたって構いはしない。

 ペットボトルのキャップ部分を掴むと奥に紅い明かりが見えた。コンビニの裏というのは働きでもしない限りは見れないものだと思って少し覗き込んでしまった。

例の店員に商品を渡す。今は支払いすらも機械化が進んでいて、何も話さなくても良いのが嬉しい。ピッタリの小銭を入れて、店を出た。

 部屋に戻るために、傘を開く。ついさっき畳んだばかりなのに面倒臭い、と思いつつもだからと言って何ということもなく歩き出す。袋を買っても良かったか、と思ったが人差指と中指の間にキャップを挟んで持った。対して遠いと感じなかったが、歩いてみると存外時間が掛かる。雨なので早く歩くことも憚られるが、急ぐ必要もないのでマイペースに進む。普段なら気にしない道中の荒れた様子も今日は切なげに見えた。寒くもないのに嚔をした。

 目は虚ろげに、ボーッと前を向いていた。

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