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きみがすき (黒髪ストロングpさん)

作者: うきみ

何年か前に、ボカロが好きで良く、聴いていた、きみがすきという曲をヒントに描いてみました。黒髪ストロングpさんのきみがすきは、一度聴いてみてください。天月さんが歌われてます。とてもいい曲で、大好きです

「ごめんね、宏太・・・」

「ママ・・・」

「宏太が大きくなったらママの所で一緒に暮らそうね」

「ほんと?」

「うん。指きりね」


僕が小学校二年の時、父と母は離婚した。

母は東京の実家へ戻り僕は父と二人で暮らした。


僕は17歳、高校二年の秋だった――――――


朝、スマホの着信音が僕の部屋に響きわたる。


梨紗だ。隣に住む、おせっかいな僕の幼馴染。


「もしもし」

「もしもし宏太?やだ、まだ寝てたの?遅刻だよ!」

「え・・・?今何時?」

「もうすぐ8時」


ガバッ!!


慌てて飛び起きた。


「もう・・・カーテンが閉まってたから心配になって電話したら

 案の定じゃないっ!!」

「悪いッ!梨紗、支度するから切るわ」

「あ、うん。じゃあ後で学校でね!」

「ああ、サンキュー」



梨紗は僕の家の前でスマホをしまった。


放課後――――――――――



「宏太!!」


後ろから、かん高い声で僕を呼ぶ。

振り返ると梨紗が此方に手を振っている。


「おう!」

「間に合った?今日」

「ああ。おかげさまで」

「そう。良かった。今日はお父さんは?」

「出張」

「あ、なるほどね」

「そういう事」


学校からの帰り道、梨紗は歩きながら聞いてきた。

「ねえ、宏太・・・」

「何?」

「宏太って好きな人・・・いるの?」

「な・・・何だよ!突然」

「いるの?」

「べ・・・別にいないけど・・・」

「そっか!良かった!」

「良かったっ・・・て?」

「あ、うん。私達付き合わない?」

「僕が?お前と?」

「ダメ?」

「いや・・・ダメってわけじゃ無いけど・・・」

「じゃあ決まり!」

「決まり!って・・・勝手に決めんな!」


僕はそう言ったが梨紗は笑顔で答えた。

「じゃ!そういう事だから!」


そう言って走って何処かへ行ってしまった。


「え・・・ちょっと・・・おい・・・」



そうは言ったが内心僕は凄くうれしかった。


次の日―――――――


「宏太帰ろ!」

昨日と同じく梨紗に後ろから呼び止められた。


「あ、ああ」



「はあーっ」梨紗が溜息をついた。

「何だよ」

「ノート」

「ノート?」

「おととい貸したんだよね」

「おい!また誰かに見せたのかよ」

「うん」

「誰に?!」

「牧野君」

「はっ?あいつなんて単にサボってるだけだろ!」

「うん。でも・・・どうしてもって言われて・・・」

「で?その溜息の理由は何なんだよ」

「牧野君、無くしちゃったみたいなんだ。私のノート」

「おいおい・・・まじかよ・・・んなやつほっときゃいいのに」

「だって・・・ほらよく言うでしょ!情けは人の為ならずって」

「なんだよそれ」

「誰かに親切にしたことは回り回って自分の所に返って来るっていう意味の

 ことわざ。知らないの?」

「知るかよ!んなもん」


僕は梨紗の後ろに遠くから走って来る男子を見た。

「あれ・・・噂をすればだ・・・」

「え・・・?」梨紗が振り返った。



「はあっ・・・はあっ・・・」息を切らしてやって来たのは牧野だった。

「牧野君・・・」梨紗が言った。

「ごめんっ、この前はノートありがと。昨日見つけたからさ。早く返した方が

 いいと思って」

「あ、良かったっ。あったんだ」

「うん。で、これ・・・お詫びじゃないけど・・・」

牧野はそう言って、ノートとピンクのチェック柄の小さな包みを梨紗に渡した。

「あ・・・いいのに・・・」

「いや・・・もう少しで無くすとこだったから・・・ほんとごめん」

「なんか逆に悪いじゃん・・・」

「そんな大したもんじゃないから。ほんじゃ!」

「あ、ありがと」


そう言って牧野は帰って行った。

「なんだあいつ・・・お前に気があんじゃないの?」僕は嫌味を込めて言った。

「そんなことないよ」


梨紗は包みを開けた。


「わあっ可愛い!!ウサギ・・・?」

それはなんとも可愛らしい淡いピンクのウサギの絵が描いてある

シャープペンシルだった。


「ふっ。あいつこれ、自分で買ったのかな・・・」

「私がピンク好きだってこと知ってたのかな?」

「たまたまウサギと包みがピンクだっただけだろ」

「だよね。でもほらっ!!返ってきたでしょ!」

「まあな。回ってきてはないけどな。直接本人からだったな」

「あはは、そうだね」

「それ・・・使うのかよ」

「うん。可愛いじゃん!明日から学校で使うっ」


僕はこんな八方美人の梨紗に少しやきもちを妬いていた。


「梨紗!」廊下を歩く梨紗を彼女の親友である樹奈が呼んだ。

「あ、樹奈!」

「ねえ、梨紗って宏太とつきあってんの?」

「え・・・あ、うん・・・まあ」

「で・・・どっちが告ったの?」

「え・・・?そう言えばそういうのってなかった気がする」

「うそ、まじで?」

「うん」

「伝えなかったの?梨紗・・・自分の気持ち」

「え?あ・・・なんか照れくさいっていうか・・・」

「え?だめだよそんなの!ちゃんと言わないと」

「でも・・・」

「じゃあ今度の日曜あたしの彼と4人でデートしない?」

「4人で?」

「そう!そこでちゃんと伝えるの!分かった?」

「え・・・あ・・・う・・・うん」


土曜の夜、梨紗に彼女の親友の樹奈とその彼、龍樹と4人で映画に

行こうと誘われた。


梨紗からの電話の声だった。

「どうする?明日家から一緒に行く?」

「集合場所に直接行きゃあいいだろ?」

「わかった。じゃあ明日10時に駅でね」

「ああ。」

そう言って彼女からの電話を切った。




次の日―――――――



「あれ?一緒じゃないの?あんたたち」樹奈が梨紗に言った。

「うん。ここに直接来るって言うから・・・」

「はあーっ。変なカップルだこと!家が隣同士なのにわざわざ別々に来るなんて、

 ねえ龍樹!」

「だな」



遅刻してしまった僕は走って集合場所へと向かった。

「ごめん!」


「もう遅いっ!」3人が声を揃えて言った。

「早く行かないと映画始まっちゃうよ!」梨紗が言った。

「ホントだ!急げっ!」


映画が終わって僕たち4人はショッピングに行った。

もうすぐ樹奈の誕生日だという事もあってアクセサリーショップを

見ていた。



梨紗はその店でシルバーのハートのピアスを手にとって見ていた。

僕はすぐ近くで梨紗を見ていた。



樹奈は何か気に入ったものを見つけたらしい、向こうの方で龍樹と話す声が聞こえる。

「ねえ、龍樹あたし誕生日これがいいよ!そんなに高くないし、これ買って!」

「ああ。いいけど。」

「やったあ!!」






そして―――――



「じゃあ、あたし達こっちだから」龍樹と腕を組んでいる樹奈が言った。

「あ、うん。」梨紗が言った。


「ほいじゃあ!」

樹奈が言った。

そして樹奈は梨紗のそばに寄り耳打ちした。

「分かった!?ちゃんと伝えるのよ!」

「あ・・・うん。」


「何?」僕が聞いた。

「別に!何でもないっ!」樹奈が言った。



「じゃあね!樹奈」

「じゃ明日ね!梨紗」




樹奈と龍樹は僕たちの家とは反対方向に帰って行った。




「いいよね。あの二人・・・ラブラブだね・・・ほんと仲がいい・・・」

梨紗が言った。

「ああ。よく恥ずかしげもなくいちゃいちゃ出来るよな。」僕が答えた。

「でも・・・うらやましいな」

「え・・・あ・・・そうだな」


「宏太・・・私ね・・・」


「ん・・・?」


「私・・・好きなんだ・・・宏太のこと」梨紗は照れくさそうに笑って言った。



僕は初め、何も答えることが出来なかった。それでも勇気を出して気持ちを

伝えようとした時、梨紗が言った。


「宏太は何も言ってはくれないけど、いいんだ。自分の気持ちを今ここで伝えられた

 だけで満足。それにこうして一緒にいてくれる。それで充分」



そう言う梨紗を抱きしめたくなった。だけど恥ずかしくて僕にはそれが出来なかった。







そして僕は梨紗に気持ちを伝えられないまま、その日を迎えてしまった。


「梨紗、僕、東京の母さんと一緒に暮らすことになったから」


「ほんと?!良かったね!ずっと言ってたもんね!」



梨紗の目からは大粒の涙が溢れていた。それは僕が母さんと一緒に暮らせるように

なった事を喜んでいるからだと言っていたけど、そうじゃないって事は分かっていた。


自分の気持ちすら伝えるここが出来ない僕といるよりも彼女なら他の誰かといる方が

幸せになれるんじゃないかって思っていた僕は梨紗と別れることを選んだ。


そして梨紗はその手で涙を拭いながら、僕に精一杯の笑顔を見せて言った。




「今までありがとう・・・元気でね」




「ああ、君もね・・・梨紗」




それは高校三年の春の事だった。

梨紗の誕生日に渡そうと思って買ったシルバーのハートピアス。

それを何故か捨てられないままその地を旅立った。


あれから6年、僕は東京の大学を卒業した。

そして今日は地元のホテルで行われる高校の同窓会に出席するために父のいる

ここへ帰って来た。






同窓会では相変わらず君は輝いていた。


今、僕はあの時、気持ちをちゃんと伝えられなかったことを後悔している。

愛情表現の困難さに悶 もだえ、ただただ僕は君をみつめるだけ。

失って初めてその大切さに気付くと人はいうけれど、君が僕にとって

大切な人だったってこと、そんなもんはとっくの昔に気付いていた。

君がいたから幸せだったこと。君にとってこの僕がふさわしいかどうかが不安で

ただ怯えていたこと。

他の男と仲良くする君を見ていつもやきもちを妬いていたこと。

もしもあの時伝えられていたのなら。このシルバーのハートのピアスも君に

渡すことが出来たのなら。


そして僕はまた遠くから君を見つめていた。


あれから音信不通だった僕たちはとくに会話もすることなく同窓会は終わりを告げた。

たまに目は合ったが君も僕も話しかけに行こうとはしなかった。



二次会に行く気にはなれなかった僕はトイレに入ってみんなとは遅れてその場を

出ようとした。

ふと見るとピンクの財布が落ちていた。


僕はそれを拾い上げた。




君も好きだったよね。ピンクがさ・・・




そんな事を考えながら、それを受付に届けようとした時、誰かが慌ててホテルに走って

入って来るのが見えた。


「あ・・・」




僕を見ていたのは梨紗だった。


「久しぶり。」僕は言った。


「うん。あの・・・それ・・・」


「え?もしかして梨紗の?」


「うん。拾ってくれたんだ。ありがとう」


「今も好きなんだ。ピンク」


「あ・・・うん。大好きだよ」


僕は君に財布を渡した。


「じゃあ。」君はそう言って、またあの懐かしい笑顔を僕に見せた。


「うん。」






僕が気付いた時には、ホテルを出ようとした君の腕を掴んでいた。


「梨紗・・・」


「何?どう・・・したの?」


「君に伝えたいことがあるんだ」


「伝えたいこと?」





僕はバッグからピンクの花柄の包みを出して君に渡しながら言った。


「もう・・・遅いよね・・・」


それを受け取って君は言った。


「開けていい?」


「もちろん」


君の手のひらに小さなシルバーのハートのピアスが落ちた。


「これ・・・私・・・覚えてるよ」


「ほんとに?」


「買ってくれてたんだ」


「うん。」


「いつのまに・・・」


「次の日に買いに行った」僕は笑顔で答えた。


「あの時本当はちょっと期待してたんだ」


「期待?」


「そう。わざと宏太の前で欲しそうにしてたんだよ」


「そっか」


「うん」


「あの時の気持ち・・・今伝えたい。」僕はあの日にはなかった勇気を出して言った。


「うん」






「きみがすき」

「ほんとに?」


「うん」




「遅い」



「そうだね」



しばらく君は何も言わずにいた。






だけど君から話してくれた。





「ずっと待ってたんだ」君が言った。


「ずっと・・?」


「そうだよ。」


「あ、ごめん。伝えるの遅くなってごめん」


「そうじゃなくて」


「そうじゃなくて?」





「今は・・・?今はどう思ってる?」





「僕の気持ちは昔も今も変わらないよ」






「ほんとに?」








「ほんとだよ。・・・・きみがすき」







そして・・・






きみが僕の胸に飛び込んできた。


                      fin


このあと反対側からの描写投稿します

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