355同じ穴の狢。
マコを追いかけながら、研究所へ防御付与を二重掛けして行く。
美世ちゃんの防御結界で万全とは思うが、研究所は質の悪い物も置いてあるからな。
海に出ると、結界が行く手を阻む。
篁譲りの小野家相伝の、いい結界じゃ。
小町も研鑽を積んで、いい術者になった様じゃ。
最初は戸惑ったで、あろうな。
闇の世なのに、聖魔術師とは。
美世ちゃんに言って、通信講座は受けてもらったのだが。
それでも、ここまでの術者になるとは。
千年の積み重ねは、大きかったな。
マコも、手こずりそうだわい。
あの子は、あまり強者と相対した事がなさそうだ。
マレトも甘やかしておるし、何よりあの子より強い者などおるのだろうか?
闇魔術師だから、聖魔術師とは相性が悪そうだが。
小町よ、どこまで押さえ込める?
ほぅ、あれがカルタ術か。
練り込まれた構築に、無駄が無いのう。
元々のセンスを長きに渡って、磨き上げたのだろう。
さて、どうするマコ?
「小町ちゃん、どうして攻撃しないの?僕が動けないうちに、やっちゃえばいいじゃない。」
「あては、攻撃魔術を使えしまへんのや。回復や支援、それと癒しの魔術が得意なんどす。」
「マジで、聖女やん。何で、闇のプリンセスなんかやってんのよ。」
「さぁ、あても最近闇の世からこちらに来たばかり。ずっと、闇の世に居ったさかい。」
「そうなんだ、晴は優しい?」
「もう、それは!あのお方は、あての理想のオノコでありんす。おのれの事を犠牲にして、あらゆる世界にあまねく平等を与えてくれるのでありんす。」
「犠牲が、過ぎんねん!あいつは、無差別に人を巻き込んで不幸にして行く。それは、魔王の所業やねんで。」
「あてには、わからしまへん。魔王は、そなたの父親でありんしょ?そなたも、魔物ではないのでありんすか?」
「わからず屋め、もうこれ何。小町、解いてよ!」
「二千年くらいあれば、自然に解けるでありんす。まぁ、晴様が大業を成し遂げたら解いて差し上げてもよろしくてよ。」
「ブチッ、ブチッ!二千年も、待ってられない。晴の事も、止めなくちゃ!」
「割と、早かったでありんす。もう、遅いでありんすよ。晴様は、もう大陸を堕としている頃でありんす。」
「えっ、ウソ!だって、あれはあの国に墜とすんでしょ。」
「転移が使えるのは、あなただけでは無いでありんすよ。」
「えー、マレトは転移なんか使えないよ!」
「勝負は、決まったのでありんす。あてをなぶり物にするなり、好きにしたらよろしいでありんす。あてには、あなたを攻撃する術は無いでありんす。」
「しないよ、小町ちゃんすごいね。でも、僕は諦めない。転移、シュッ!何で、転移が出来ない?」
「誰の結界にいるとお思いで、ありんすか?」
「うーん、マレト何とかしてー!」
「クソッ、一足遅かったか。晴明め、とっくに向こうに行ったか?」
「しゃあないな、日本の皆さんごめんよ。一時、停電するで。」
施設の電力供給盤に手を触れて、そのまま消える。
「マレトおじさん、どうやって?」
「簡単な事、俺の魔力と電力を掛け合わせて位相変換したのさ。」
「相変わらず、訳分からないことをする。その知識があれば、大陸ももっと発展したのでは無いですか?」
「上からの押しつけじゃ、ダメなんだよ。それに、わかっているだろう。大陸の者は、持たざるを選ぶ。」
「怠惰な、民ですよね。為政者は、よく我慢している。」
「だから、墜とすってのはどうなんだ。そんな事したら、どれだけの被害が出るか。」
「いいんじゃないですか、勝手気ままに自分さえよければと思っている奴らです。そんなの、知った凝っちゃない。」
「お前に、何がそうさせる。やはり、前世の記憶か?」
「いいえ、オレもあいつらと同じ穴の狢です。自分さえよければ、いいと。ムカつくから、処分する。それだけですよ。」
「似た様な事、考えているんだな。お前の本音はわからんが、本質は俺も同じだ。だがな、見損なったぞ。お前なら、何とかしてくれると思ったのに。」
「幼児のオレに、何が出来るんです。あなた達大人のツケをこちらに押しつけるのは、やめてもらいたい。」
「ふぅ、幼児に敵わんとは。俺も、まだまだらしい。それじゃ、暴力でいかせてもらおうか。」
「聖人が、そんな事していいのかなぁ。魔神、やってしまえ!」
「はぁ、卑怯だろ。そんな強いの相手にするなんざ、ムリムリ!」
「ウォーッ、ガァ!」
魔神から、ブレスが吐き出される。
「ウソだろ、避けたのに服焦げてるよ。」
「待った、晴明。そいつは、あかん!」
「余裕じゃないですか、マレトおじさん。本気を見せてくださいよ。オレは、そろそろやりますよ。」
[避来矢!]
「グシャッ、ズバッ!晴明、ダメだって言っただろう。」
「一瞬かよ、桁違いの強さですね。遅かった…。」
[コネクト!]
何万何億本もの矢が、飛び立った。
[ホーリヤ・ファンネル!]
マレトがマジカルコンテナから取り出した何本もの円錐形の発射装着から、レーザーが無数に矢に向かって飛んで行く。
「やっぱりか、いつから気がついていたんです。」
「マイトを助けた時点でだ。」
「へぇ、オレが仕組んだってバレてたんだ。どうします、オレを消してしまった方が今後の憂いが無くなりますよ。」
「それは、今じゃない。それに、墜とす事については俺もやる価値はあると思っている。」
「えっ、何で?」
「俺も、お前と同じだって言っただろう。」
「へぇ、案外尻に敷かれてんだ。」
「お前の嫁さんよりは、怖くないぞ。」
「うちの小町は、あそこまで傍若無人じゃないですよ。」
「確かに、それより避来矢は大切にしまっておけ。」
「マレトおじさんに、預けます。時期が来たら、使ってください。」
「無理難題、押しつけやがって。帰るか?」
「オレの転移は、自分しか運べませんよ。」
「えっ、マジか!しゃあないな、飛行艇出すか。」
「なんだ、持ってるんだ。オレも、乗せてって。もう、疲れた。」
「帰ったら、ちゃんと説明しろよ。」
「マコ、怖い!」
「俺も、怖いわ!」




