332壁の向こう。
ラトリアに着くと、老師が出迎えてくれた。
「田爺、こっちに来て大丈夫なのか?」
「えぇ、美世様がゲートに障壁を組み込んでくれましたので。」
「へぇ、直したんだ。」
「法力の少ない者は、来られませんけれど。」
「親父、向こうに行くの時間かかるわ。用事とか無いんなら、こっちで終わらせていいか?」
「かまわんよ、こちらに来たばっかりだ。わしは、クラフトマシンとか言うのを見てくるわ。」
「ドンさんも、行く?」
「いや、少し休んでおくよ。こっち来てから、ずっと働いてたからな。」
見た目の割に、働き者で真面目なんだよなぁ。
そうでもなきゃ、世界一のデザイナーにはなれないか。
「それじゃ、ホーリヤのワイン置いとくね。」
俺は、親父の後を追って行った。
「あっ、セバスさん来てたんだ。」
「えぇ、米軍の在庫が先に届いたので選別に。」
「これが、クラフトマシンですか?野口殿は、とんでもない代物を作りますな。」
「使い方、わかる?けっこう、魔力がいるでしよ。セバスさんなら、ある程度大丈夫だと思うけど。」
「はい、大体は。魔力ではなく、魔石でも代用出来るみたいですよ。こちらには、豊富にありますから。」
スタンビートの際に、魔石がごろごろ獲れたらしいからな。
「ドンさんと相談しながら、どんどん作ってよ。運ぶのは、魔人がやってくれるから。早速、来たな。後、親父置いて行くから細かい事は、色々聞いて。医薬品とか加工食品は、専門家だから。」
「よろしく、セバスさん。」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします先生。」
「ドン様は、どちらに?」
「疲れたから、飲んでるよ。」
「けっこう、こき使いましたからな。なかなか、器用でいらしやっるので。」
「悪いけど、二人の事頼むわ。俺、ちょっと行きたい所があるから。」
「希人、どこ行くんだ?まこの所か?」
「いや、確かめたい事があるんだ。」
「そうか、無理するなよ。何でも、一人で抱え込むな。」
「ありがとう、父さん。」
もう、巻き込んじまってるよな。
俺はラトリアの向こう側、確か何も無いはずの空間に向かっている。
空間でも無いかも、ただそっちから何かが感じられる。
普通にボムコプターを飛ばしていると、やんわりと遮られた。
解析しても、何の反応も無い。
ただ、相変わらず向こうから何かを感じる。
何か、鍵みたい物がいるのだろうか?
この状況で、無理する必要は無いか。
何か、手がかりは無いかなぁ?
そう言えば、スタンビートの原因になった穴がナジロの北側の山脈にあるとか言ってたな。
今は塞がれているのか、何にしろ痕跡はあるだろう。
しばらく飛んでいると、山脈が見えて来た。
ちょっと、高いな。
ボムコプターでは、上がりきれそうにないな。
少しここで野営して、改造するか。
しかし、討伐した割には魔物が多いな。
たまには、動いてみるか。
魔法が使える訳では無いが、徒手空拳でもその辺の魔物くらい瞬殺する。
まぁ、覇気だけで弱い魔物は寄ってこないが。
この辺の魔物は、旨いのかなぁ?
あれは、ワイバーンか?
いや、ヒュドラだな。
日本じゃ、キングギドラだったけ。
不味そう、毒吐くのか。
何、メンチ切ってんだ!
ヒュドラの毒を浴びながら、それぞれの首に手刀を切る。
最後は、土手っ腹にワンパン!
ふぅ、毒でベトベトだよ。
とりあえず怯えて魔物がいなくなったから、ログハウス出してと。
風呂風呂、お風呂~!
あぁ、さっぱりする。
ヒュドラの肉、焼いてみよう。
以外と、サシが入って旨そうだなぁ。
皮との境目がジューシーで、旨いわぁ。
これって、けっこう食用に向いているんじゃね?
鑑定、猛毒が身体中駆け巡っている為食用不可。
あぁ、毒耐性あるからすっかり忘れてたわ。
ボムコプター、手を入れるか。
リミッター解除して、モーターの供給を魔石容量増やしてと。
揚力よりは浮力を得た方が、良いか。
後は、耐気圧をどうするか?
オリハルコンの隔膜作って、周りに貼り付けよう。
よし、完成だ。
もう真っ暗だし、今日は一杯やって寝るか。
多元接続も、切ってしまおう。
イヤー、すっきり!
さて、昨日の肉をスープにして朝食だ。
パンを添えれば、冒険者みたいだな。
誰も引きこもりのオタクなんて、思わないだろう。
しかし、こんだけ苦労しても魔術師はひとっ飛びで行けるんだよな。
ボムコプターに跨がり、上昇。
今のところは、快調だな。
あっという間に、目的地に着いた。
修復は終わっている様で、見た目は何も無かったかのようだ。
魔力を通してみると、そのまま吸い込まれる様に消えて行く。
確実に、空間はある。
確か、向こうの世界に一瞬つながったはずだ。
しかし、そちらでは無い様だ。
逆に、魔力を吸い込んでみる。
「何だよ、これ?」




