279シンドール大統領。
「アキト、ルアン、こちらに。」
「ビリド閣下、私は嫌ですよ。それから、姉上はどちらにいらっしゃるのですか?」
「ビリド殿、これはいったい?」
「コルザ様、スカル帝国はマレトの代で終わりにします。エッダ教国も、教団のみ残します。」
「何を勝手な事を!」
「コルザよ、済まなかった。わしの身勝手な、願いじゃ。マレト達が、向こうの世界へ行ってしまった。わし等は、見捨てられたのじゃ。」
「上皇陛下、そちらにマレトがいるではないですか?」
「あの方は、向こうの世界の覇王だ。マレトと同じだが、そもそもこちらに何の思い入れも無い。」
「だからと言って、この大陸を平民の国に出来るとお思いですか?」
「アキト、お前なら出来る。幼きころから、宮殿を離れて兵舎で暮らしていたんだ。それに、マコが帰って来る場所が無くなってしまうぞ。」
「卑怯ですよ、ルアンだって普通の女の子ですよ。」
「私は、いいわよ。」
「へっ、教団の指導者だぞ。女神様、だぞ!」
「マコが帰って来たら、聖母やらせるからいいわよ。アキト、ぐじぐじ言ってないで大統領やりなさいよ。」
「決まりだな、アキト・シンドール大統領。そして、エッダ教女神ルアン様。エッダ大陸全土、エッダ共和国とする。よろしくな、アキト。わし等は、孫のお守りに忙しいでの。」
「教皇様、ルアンにも子供が授かったみたいなんですが。」
「益々、頑張らねばなアキト。おばあちゃんも、お守りするからね。」
「母上…。」
「細かい事は、コルザとビリドに任せる。後、そこの希人殿に後見してもらう。指導を仰ぐ様に。」
「えっ、聞いてないんですけど。」
「よろしくお願いします、兄さん。」
「いい子だね、アキト君。希人、手伝ってやんなさいよ。」
「あっ、うん。微力を尽くすよ。」
当面の間、希人が政治顧問としてアキト大統領の補佐をする。
コルザは、貴族議院を取り仕切る。
ビリドは、ドミヤのいない商会を引き継ぎ経済産業の発展に尽力する。
ルアンは、アニスの元法王をこき使って大陸全土に医療厚生施設を普及させる。
そして、元上皇夫妻に元教皇夫妻はラリーネや
リオンに手伝って貰いながら孤児院のお世話をしている。
「ママって、ホーリヤのお嬢様なの?」
「ルアン、お嬢様は言い過ぎよ。お姫様なのよ。」
「変わらんけど、あまりマコパパと似てないわね。」
「モラド兄さんは、おめかけさんの子供だからね。」
「ほう、だからママは公爵夫人なのね。」
「ねぇ、ルアン。アカテに病院作るの、手間取っているんでしょ?」
「うん、じっちゃんが頑張ってくれてる。やっぱり、衛生管理に住民が戸惑っているみたい。」
「先に、教会作った方がいいんじゃない?」
「うーん、神社を建てようかなぁって。今、向こうの聖母様に手伝ってもらっているの。」
「神社って、何?」
「何かね、自然崇拝の為の教会なんだって。教団みたいな派閥争いとか無いし、教義も簡単なんだって。」
「向こうの方達は、思ったより進化的じゃないのね。」
「あの人達は、そうみたい。アキトに聞いたら、相当科学的らしいから。」
「アキトは、どう?」
「毎晩遅くまで、お父さんに扱かれているわ。」
「お父さんが、アキトを立派な皇帝にするんだって。どっか、ズレてるわね。そうそう、ケリー君がアキトの補佐官になったってビリド兄さんが言ってたわ。これで、少しはアキトにも余裕出来るわね。」
「リオン様、レイナックが帰って来ないんですの。」
「大丈夫よ、義父上を連れて明日には着くみたいよ。ひ孫見たさに、レイナックおじちゃんを急かしたそうだから。」
「ドミヤ坊ちゃまは、もう向こうに行ったきりなんですかね。」
「自分の子供が産まれたんだから、でも向こうにマコがいるからねぇ。」
「オイクちゃん、かわいそうです。あの子、家族の縁が薄いから。」
「スカル帝家に生まれたのなら、しょうがないんじゃない。本来なら、あの娘が今ごろ女帝なんでしょうから。まだ、恵まれているわよ。」
「そうだね、上皇后様が片時も自分の傍から離さなかったから。」
「ラリーネさん、寂しかったでしょ?貴方が引き取って、大切に育てたのに。」
「丁度、手間のかかる子が家に来ましたから。」
「マコは、手がかかるわねー。」
「えぇ、大変でした!」
【フフフ、いい子だけど。】
オイク先生、マコやアキトの従姉妹だったんだ。