278Dr堀谷、再び。
「相変わらず、小っこいの美世ちゃん。」
「あなた、もっと屈んで!」
グリフォンに変幻した鷹人に、美世が叱咤する。
ようやく背に乗り込み、大空へ羽ばたいていく。
「ラトリア行く前に、明石に寄ってちょうだい。」
「ふむ、タワマンでよいのか?」
「えぇ、結界張り直して行くわ。」
「夏世や進藤殿の所は、ええのか?」
「宝物は、タワマンにしか無いもの。晴明のおかげで、狙う奴らがいるのよ。あらら、マラッカ海峡暗いわね。」
「金融資産が無くて、困っておるのじゃろう?もうすぐ、明石じゃぞ。」
「そのまま、近寄ってくれたらいいわ。」
美世が杖を取り出して、呪文を唱える。
魔法少女が、魔獣の上で跳ねる。
「終わったかの?では、ラトリアへ行くか。」
オレが出した高級料理を遠慮なくパクつく精霊巫女の後ろで、けたましくベルが鳴り出した。
「えっ、赤ちゃんがですか?わかりました、何とかなると思います。」
「どうした、赤ちゃんに何かあったのか?」
「ん、ちょっとね。みんな、病院へ戻るわよ。あっ、希人君って医者だよね。名医なんでしょ、ついて来て!」
「嫁も一緒で、いいか?こいつ、助手なんでな。」
礼拝堂いや高級料理を後にして、病院へ向かう。
「あっ、お父さん。」
「おぅ、まこちゃん。久しぶりで、ないか。こっちに、おったのか?」
「上皇陛下、赤ん坊の具合が悪い様ですが?」
「希人殿、お主名医じゃろ?お主の力を貸してくれぬか?」
「私に出来る事であれば、何でもしましょう。」
「希人、いつから名医になったん?医師免許、まだ持ってるん?」
「さあな、行こうか真。ルーラ、舞香の事頼む。」
「任せて、私達礼拝堂で待っているわ。」
おい、他人任せかよ。
料理が、大事かよ。
「あなた、この方達は?」
「向こうの息子達で、希人殿とまこちゃんだ。大変な名医で、わしの魔王を取り除いてくれたのも彼らだ。」
「あなた、ちょっとお話が!」
「誤解じゃ…!」
「上皇后様、本当に誤解ですよ。」
「ビリド君、ドミヤの阿呆には連絡つかないの?」
「今、連絡取っているはずですよ。」
「えっ、向こうにいるの?本当、バカね。」
「じゃ、治療始めますね。」
希人と真が、術着になって中に入る。
「オイクです、子供は助かりますか?」
「大丈夫です。オイクさん、あなた上皇陛下と血縁は?」
「私は、先々代の皇帝の娘です。上皇の、姪に当たります。」
「やはり!真、ミスティルティンで因子を取り除く。やり方は、わかってるな。」
「うん、魔王因子を吸い出せばいいんだね。」
「赤ん坊だから、細心の注意を払ってな。では、行くぞ!」
時間が、掛かった。
本人が無意識に抵抗するので、なかなかうまくいかない。
真が倒れても、オレは治療を続行した。
途中で、ルアンと言う娘が真の代わりに魔力を提供してくれた。
「終わりました、うまく行きましたよ。あなたも、大変だったでしょう。ゆっくり、休んでください。」
「この子も、休ませないと。しょうがないから、連れて行ってあげるわ。」
うれしそうにルアンが、真を捕獲して行った。
「オイクちゃん、見て!赤ちゃん、こんなに、笑っているわよ。」
「ラリーネさん、希人先生を休ませてあげて。本当に、ありがとうございます。」
さて、役者が揃っているな。
「ビリド閣下、皆さんを集めてもらえませんか?」
「スカルの者も、呼んでもよろしいか?」
「ええ、主だった方々は。早く、内戦を終わらせましょう。」
「マルク司令官、ここを任せてもよろしいか?上皇様からの、呼び出しだ。」
「アキト、これを持っていけ。」
みたらし団子、何で?
「ありがとう、迷惑かける。」
「パパ、オイク先生子供産まれたよ。早く、見に来て。モンブランの、お菓子いっぱい買って来てね。」
私は、モンブランに寄ってコプタートレインでホーリヤに向かった。
政務など、ほったらかしだよ。
ルアンちゃんが来てと言ったら、パパはすぐ行くのだ。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。こちらは、向こうの世界の覇王希人殿です。」
希人が、頭を下げる。
「して、ビリド閣下何用かな?」
「コルザ様、当主をアキトにお譲りいただきたい。」
「それは構わんが、お主に言われる筋合いはないが。」
「上皇陛下、スカルの帝座を廃嫡に。」
「うむ、わかった。」
「父上、教皇の座を降りてください。」
「おお、ええで。」
「ビリド殿、何をするつもりだ。」
「アキト、ルアン、こちらに。」
エッダ大陸には、医師免許はありません。薬師免許は、あります。