293ビースキー。
「では、食事にしましょうか?」
メイド達が、湯気が立つ大きな鍋を運んで来た。
「これは、ボア鍋です。わがギルドに持ち込まれる魔物で、ソイペーストで煮込んだ物です。冒険者がその場で血抜きをして、ギルドの職員が丁寧に解体しているので臭みも無く美味しいですよ。子供達には、ボアのソーセージでポトフにしてありますわ。」
ほぅ、まんま猪鍋だな。
ソイペーストも、まんま味噌だな。
「こりゃ、うまそうだ。真も、こっちで食べるか?」
「ううん、ボクはソーセージの方がいい。」
真は、子供舌だからな。
メイドさんに取り分けてもらったボア肉に、かじりつく。
「フハッ、ホゥ。旨い!このご飯も、うまい!」
タイ米っぽいけど、汁が絡んで極上だ。
「こちらの、ステーキもどうぞ。焼きたてですから、気をつけてくださいね。質素でお口に合うかわかりませんが、たくさん召し上がってください。ダスティ、それは私のだぞ!」
「いいじゃん、兄貴のは又焼いて貰えよ。」
「めちゃくちゃ、旨いですよ。オレの田舎も山奥なんで、こんな肉をしめて良く鍋にしてました。やぁ、懐かしいな。子供達にも、気を遣って貰ってありがとうございます。」
真と舞香は、ハンバーグをモリモリ食べている。
ポトフも、美味しそうだ。
「希人君、いける口だろう?」
アメリアさんが、蜜色の酒精の濃そうな瓶を開けている。
「酒ですか、高そうな逸品ですね。」
「わかるか、キラービーの蜜を発酵させて作ったビースキーだ。」
「希人君、家内はウワバミだからな。そこそこにしないと、大変だぞ。」
「ちょっと、ライリー!難癖つけるんなら、表に出る?」
「はは、アメリアさん喜んでいただきますね。」
「おっ、いいねいいね。とりあえず、ぐいっと!」
うわぁい、度数高い!
五臓六腑に、染みわたる。
「口に入れた瞬間、かっとしますね。これは、強い。飲み終わった後の鼻に抜ける芳醇な香り、たまらない!」
「だろ、さぁもう一杯!」
「アメリアさんも、どうぞ!」
「お前、いい奴だな。皇帝にそっくりだから、クソ坊主かと思ってたよ。いやー、気に入った。家に、ずっといろ。どうせ、旦那と組んで仕事するんだろう。」
「そうっすねぇ、居心地も最高だし。王宮は、窮屈ですからね。」
「そうだろう、なっライリーもいいよな!」
「わしも、その方がありがたい。頼めないかなぁ、希人君。」
「真は、どうだ?」
「うん、ボクは楽しいよ。舞香がね、カミロお姉ちゃんが泣き叫ぶと思うよ。」
「あっ、カミロさんかぁ。舞香の乳母に、なってもらったからな。ビリドさん、怒られて死ぬかもしれないし。」
「それは、困る。ビリドがいないと、この大陸は廻らん!」
「そうね、カミロちゃんもマコレがいないからね。」
「ちょくちょく、遊びに来ますよ。迷惑で、無ければですけど。」
「迷惑な、もんか!毎日でも、かまわんよ。」
「なぁ、義姉さん。」
「ダスティ、お前もたまには顔を出しなさい。子供達が、さびしがってるわよ。」
「あぁ、今度は向こうの玩具持ってくるよ。ところで、ギルドの事なんだけど。難しいから、希人説明してやって。」
「何の話だ、希人?」
「アメリアさん、冒険者ギルド最高責任者ですよね。」
「そうだが、ギルドは独立組織だから政治には手出ししないぞ。」
「政治では無く、民間の事なんだ。今度、ビリドさんがギルドを立ち上げる事になってね。」
「それは、私に対立しようって事かい。いくらビリドでも、容赦しないよ。いや、増してビリドならコテンパンにしてやんよ!」
はぁ、これだから脳筋は。
「いやいや、ギルドって言っても商業ギルドの事だ。この大陸の流通や経済を円滑に進める為の、組織だよ。冒険者ギルドの魔物やアイテムも効率良く、さばけるしな。」
「そんなの、ドミヤ商会でやればいいじゃないか?」
「ドミヤ商会は、貴族相手の商売だったろう。庶民は、未だに暴利を貪られていたり物々交換していたりする。後、裏で動く奴らも多い。」
「確かに、うちの警ら庁もなかなか手出し出来ない様だ。」
「そこで、門外不出だろうとは思うが冒険者ギルドの組織運営を学ばせてほしい。」
「それは、かまわないよ。ただし、あんただけだよ。旦那であろうと、政府関係者はお断りだよ。でっ、裏の奴らはどうするのさ?」
「あっ、それは俺の得意分野なんでね。俺自身が、向こうでは裏組織のボスだったから。軍隊も持ってたし、この大陸位ならすぐ征服出来るよ。面倒くさいから、しないけど。あっ、ダスティ手伝えよ。」
「ダスティ、希人君は何言ってるのかなぁ?」
「義姉さん、全部本当の事だ。まぁ、過小評価のきらいはあるけど。化け物だよ、そこの希人は。」
「ダスティ、褒めすぎだよ。後で、話し合いしような。」
「はぁ、俺帰るわ。」
「待ちなさい、ダスティ!希人君、その力で大陸を救う事は出来ないの?」
「そういう事じゃないでしょ、アメリアさん。ライリーさんなら、わかりますよね。」
「あぁ、俺達はいいだろう。後に続く子供達は、どうするんだ?」
「そういう事か、短慮で済まなかったね。冒険者ギルドは、いつでも歓迎するよ。ダスティも、久々に鍛えてやらなきゃ!」
「兄貴、助けてくれよう。」
「わしのステーキ食べた奴の事など、知らん!」
ダスティ、お坊ちゃまだったのね。




