288ドミヤの躾。
向こうでは、誰しも魔力に頼っていた。
そりゃ、楽ちんだし魔力があればあるほど恩恵もある。
ホーリヤの人達は、あまり魔力に頼らないけど身体能力が元々高いから支障ない。
ナジロとアニスの人達は、魔力保有量が高い。
特に、ナジロの王族と両国の聖職者は桁違いだ。
そんな中、魔力をあまり持たない者達が寄せ集まってできたのがスカル帝国だ。
武力も魔力も持てない者が、試行錯誤してより良い生活基盤を整える。
アカテの様に、住む者を選ぶ土地ではない。
すぐ、隣国から狙われる。
先ずは、ホーリヤを取り込む事にする。
婚姻政策と共に、思い切った条件を出した。
軍の掌握をホーリヤに、一任したのだ。
国の生命線である軍隊を任せるなど、自殺行為である。
そして、ホーリヤは一貴族としてスカルに降る。
何故、先帝の娘がホーリヤにいる。
そして、今度は皇帝の一姫がホーリヤに養子に出される。
そこまでへりくだられては、ホーリヤに為す術は無かった。
ナジロは、皇后の実家である。
緊張感は、あるが友好関係は保てた。
アニスは、最終的には聖母に従ったが元々狂信的な国だ。
いつでも、交戦させられていた。
それでも、スカルは周辺国家を纏めて帝国になった。
闇の世は、広い。
演算は出来ないが、考える事は出来る。
俺には、考える事しか力が無い。
マコレの夫として、この闇の世を統べてやる。
何年、何万年かかろうとも。
「お師匠様、あの方達が来なければ私たち親子は駄目でした。」
「私も治癒では無く、医学を研鑽したけれど…。精霊の呪いは、誰にも解けないわ。もし、マコがいればとは思うけど。」
「精霊の呪い、魔王と呼ばれる私達一族に掛けられた忌まわしき想い。何故、あの方達は解呪出来るのでしょうか?」
「異世界の者達だから、私にもね。ただ、オイクちゃんが学んだ医術はこれからの世に役立つはずよ。ドレイクも、医術あればこそ元気でいられるのだから。」
「私には、魔力はあまりありません。叔父さまやマコの様に、特別な力も。何の役に立つのでしょうか?」
「市井の者達は、生活魔法を使う位しか魔力を持っていないでしょ。治療も法外な寄進をして聖職者に頼むか、薬師に調合してもらった薬を飲むとかしかできないわ。その点、このホーリヤや帝都は、あなたのおかげで庶民でもちゃんとした医療が受けられる。市民は、マコではなく貴女を聖女と呼んでいるのよ。」
「比べる対象が、違いすぎます。化け物なんですよ、あの子。私なんか、とっくに超えていますよ。」
「あの子も、苦労したのよ。憖か魔力が多すぎて、そこに頼ろうとするから。でも、あの子が貴女の医術を一番継承しているでしょ?聖母の師匠なんだから、聖女でいいんじゃない。」
「私のお師匠は、カリン様ですから。お孫さんを育てるのは、弟子の役目ですよ。カリン様、あの方達に会われました?」
「いや、礼はせねばと思うておったが。年寄りが、しゃしゃり出てもな。落ち着いたら、領地に帰るわい。」
「ドレイクの面倒を頼めませんか、お師匠様。」
「周りに、いっぱい甘やかしがおるじゃろ。」
「だからですよ、カミロに頼んだら向こうの舞香ちゃんで手一杯って断られまして。あの甘やかしさん達では、不安で。ドミヤみたいな、偏屈に育ったらかわいそうでしょ。」
「誰が、偏屈だって?」
「あら、あなた。何で、戻ってきたの?」
「カリン様、妻が非道いです!」
「くそ坊主、自業自得じゃろが!」
「お師匠様、この人も一緒に鍛えてください。」
「いやいや、いっぱいお土産買って来たから。」
年代物のワインやら、日本のウイスキーに高そうな日本酒がずらりと。
オイクがにじり寄ると、さっとカリンがマジカルボックスにしまい込む。
「あぁ…。」
「あぁ、じゃありません。ドミヤ君も、産後の妻になんて物を。あなたもドレイク君も、厳しく躾ますね!」
「はい…。」
カリン様と、ドレイクの所に行く。
マイトに、そっくりだ。
両方共、ホーリヤとスカルの血を引いているのだ。
抱き上げて頬ずりすると、ミルクの甘い匂いがする。
懐かしい、ラリーネおばさんの作ったやつだ。
十分、甘やかされている様だ。
そばで看護をしてくれている精霊巫女達に、お土産を渡す。
この子達も、そろそろ自分の幸せを見つけてほしい。
その為に、この大陸をぶっ壊したのだ。
アキト、お前ならやれる。
そしてマイトが帰って来る日まで、しっかり支えねばな。
「精霊巫女、商会に帰ろうか?カリン様、こちらをお願いします。」
「ドミヤ様、商会クビになりましたよ。」
「えっ、何で?」
マイト、懲りないですね。




