287Dr.マコ。
ラトリアから、カタールに行く事になった。
モエとマイカは、明石で面倒を見てくれるとの事。
マコが愚図ったが、マイカが大丈夫と宥めていた。
俺も心配ではあるが、マイカがいるなら大丈夫だろう。
こちらに来てから、どうも調子が悪い。
体調はいいのだが、あまり感情に昂ぶりが無い様に思う。
やはり、息子の事が気がかりなのだ。
俺が堕ちた時は、まだ混沌としてあらゆる悪意に溢れていた。
今は、王が君臨してその眷族となった者達が統べている。
それでも、あの頃の方がマシだった。
命を刈られても、意識は失わずにいれた。
マコが、マイトの意識を感じれないと泣き止まなかった。
あの子も忙しい方が、気が紛れるだろう。
晴明殿が、ヨーロッパに連れて行ってくれた。
ドミヤ兄さんが、お菓子や玩具の買い付けに走り回っている。
今の内に、向こうの世界に飛ばしてほしいとの事だ。
マコと会うと、帰らない可能性もある。
だが、太刀打ち出来る者が他にいない。
何やってんだ兄さん、子供産まれたぞ!
「マコちゃん、ちょっと寄り道していい?」
「どこに?」
「叶姉ちゃんの病室に、危ないみたいなんだ。」
「叶姉ちゃんって、誰?何の、病気なの?」
「野口のおじちゃんの奥さんだよ、叶姉ちゃんは。男の娘だったから、出産が大変らしいんだ。しかも、双子だからかなりね。」
「えっ、男の娘!ボクと、一緒じゃん!こっちの世界でも、大丈夫かなぁ?」
「本当なら、希人おじちゃんがいればなと。マコちゃん、魔力持ちなのに向こうでは普通に産科の名医なんでしょ?」
「やだぁ、名医だなんて。でも私、失敗致しませんから!」
どっかで聞いた、セリフだなぁ。
「じゃあ、行くよ!」
無事、叶姉ちゃんの出産は終わった。
防人先生も、マコちゃんの手際を凄く褒めていた。
最初、マコちゃんを見た時は舞香と間違えてお菓子袋をあげていたけど。
マコちゃんも、ご満悦で受け取っていたが。
美世ちゃんが来たので、後は任せてヨーロッパに行く事にした。
野口のおじちゃんが、ユーロ紙幣をたんまりくれた。
ありがとう、おじちゃん。
「晴ちゃん、この辺にいるの?」
「あぁ、チョコレートの買い付けであちこち回っているよ。」
「ここ、どこ?」
「ベルギーって言うところだよ。マコちゃん、カフェでおやつ食べようか?」
「うん、食べる!マコね、シュークリームが好き!」
「シュークリームは、あるかなぁ?」
お店に入ると、大きな青年がチョコ菓子を並べてご満悦だった。
「何やってるの、お兄ちゃん?」
「んっ、マコ!何で、ここにいる?」
「ここにいるじゃないでしょ、オイク先生出産したよ!晴ちゃん、座ろう。」
「誰だ、新しい旦那か?」
「バカなの、馬鹿なんでしょ!お兄ちゃん、死ね。この人は、ここの聖母の甥っ子の、晴明君よ。」
「初めまして、大司教様。安部晴明で、あります。」
「いやー、こちらこそ。マコの兄の、ドミヤだ。」
「お兄ちゃん、マイトがとんでもない事してくれたのよ。晴ちゃん、その尻ぬぐいしてくれたんだから。」
「そうか、世話になった。マイトは、どうした?」
「闇の世に、堕とされたわ。」
「しょうがないのかなぁ、あいつも今のままでは。つらい想いをさせたな。」
「お兄ちゃん、向こうに帰る気あるの?」
「いやー、タイミング逃してな。帰ろうと思ったら、門が閉じてやがる。」
「私が、送ってあげるわよ。」
「そうか、それは助かる。もう少し、買い付けしてからでいいか?」
「今すぐ、帰れ!」
転移陣で、すぐドミヤが消えた。
「よかったのかい、マコちゃん。」
「うん、未練が残るから。シュークリーム、無いね。チョコパフェで、我慢するわ。」
パフェを食べて、外に出る。
何だか、スカルの帝都に似ている。
みんな、元気かなぁ。
「グシュ、ウゥ~!」
「マコちゃん、帰りたくなった?」
「何で、わかるの?」
借りたハンカチで、思い切っり鼻をかんでしまった。
「俺の母ちゃんの所に、行こう。たぶん、懐かしさがこみ上げるぜ。」
「晴ちゃんのお母さん、どんな人?」
「凄く綺麗で、面白い人だ。食べられない様に、気をつけな。」
うーん、わからん。
「ただいま、父ちゃん。母ちゃん、どこに行ったんだ?」
「おい、馬鹿息子。良くやったな、舞香を連れ戻すなんてお手柄。あの馬鹿親は、どっかに捨てて来たんだろ?」
「あっ、母ちゃん!この子、舞香じゃねえよ。マイトの母親の、マコちゃんだぜ。」
「初めまして、この度は息子が色々とやらかしましてごめんなさい。」
「ふぇっ、マコ。夏世よ、夏世お姉ちゃんよ。ベロベロ~!」
「母ちゃん、だから食べるなって!向こうの、マコトちゃんだっつうの。」
「マコちゃん、大丈夫?」
「すいません、ビリーさん。」
「どっちでも、いいわ。おいで、マコ。」
確かに、面白い。
でも、カミロお姉ちゃんにそっくり。
ビリーさんも、ビリドお兄ちゃんにそっくりだし何なのこの世界。
あのブきっちよな、マコが。




