第四十六話(カイル歴505年:12歳)テイグーン開発計画① 造成工事
2024/1/15追記
・テイグーンの町概要図を文字表記から図形に差し替えました
「町の開発、鉱山の管理など、しっかり頼むぞ」
「体に気を付けてね。此方にも顔を出すのですよ」
「毎月演習で行くから、兵の駐屯施設は頼むな」
「お兄さま、私も次は連れて行ってくださいな」
「アン、タクヒールさまのお世話しっかり頼みます」
春の兆しが見えた頃、もう我慢ができなくなった俺は、父、母、兄、妹、家宰に見送られ、アンと共にテイグーンの町へと旅立った。
そして、テイグーンに到着し、至る所で行われている工事を目にした時は、思いもひとしおだった。
やっと、ここまで来た!
いや、やっとスタート位置に立てた!
もうすぐ移住希望者や季節労働者の第三陣もやって来る。これから、始まるんだ!
【テイグーンの町:カイル歴505年第三陣到着時点】
滞在人口:1000人(うち定住者500人)
駐屯兵力: 50人(常備兵20人、兼業兵30人)
: 50騎(毎週演習で鉄騎兵団が訪問)
傭兵部隊: 80人(双頭の鷹傭兵団)
: (魔境の監視、巡回、商隊護衛)
城塞都市:縦1400メル(≒m)、横1000メル(≒m)
入植範囲:底辺10キル(≒km)、高さ5キル(≒km)
:に広がる三角形状のなだらかな斜面の平地
湧水
崖 町 崖
崖崖 崖崖
崖崖 崖崖
崖崖 崖崖
崖 崖
崖 開拓地 崖
崖 (平地 部分) 崖
隘路 隘路
谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷谷
テイグーン山の峻険な山頂から唯一なだらかに広がる西側の斜面、断崖絶壁の崖と、切り立った谷に挟まれ、扇状に広がる平地がテイグーン開拓地となる。
三角形状の緩やかな斜面の頂点には、豊富な湧水があり、そこにテイグーンの町は建設されている。
<町並み断面図>
町はなだらかな斜面を削り、4段になっており、第三区画以外は、各区画が水平になるよう斜面を削り、第三区画はなだらかな斜面になっている。
<第一区画>
縦: 200メル(≒m)
横:1000メル(≒m)
町の最上部にあるのが第一区画で領主専用区域だ。
中央に空堀と隔壁に囲まれた(建設中)200メル四方の領域の中に領主館分館がある。
建前上は領主だが独立領主ではないので、領主館もエストの街の実家の分館、そう呼ぶ事にした。
領主館分館の左右は約200メル(≒m)四方に農業試験場が2か所ずつ配置されている。
<第二区画>
水平を保つため、第一区画と第二区画の間には段差があり、段差の下に広がるのが第二区画となる。
縦: 200メル(≒m)
横:1000メル(≒m)
中央に駐屯兵詰所、兵舎、練兵所などが建設予定で、大きな長方形状のこのエリアは、将来的に多くの兵が駐留できるよう、余裕がある。
<第三区画>
緩やかとはいえ、斜面上に建設しているので、第二区画から第三区画の境界にも段差がある。
縦: 800メル(≒m)
横:1000メル(≒m)
広い第三区画は、緩やかな下り坂の斜面だが、敢えて水平には整地していない。遠くから俯瞰すると緩やかな階段状になっている。
この第三区画がテイグーンの町の中心となり、領民の居住区、商店や飲食店、宿泊施設が並ぶ商業区画、工房や鍛冶屋、倉庫などの工業区画がある。
配置の予定は、第三区画中央に行政府と、商品取引所(公営)が円形の中央広場を挟んで位置する。
中央広場を抜け、正門まで繋がる大通りに沿って両側を商業区画、それより道路ひとつ外側は、工房や鍛冶などの職人街、宿や飲食店の並ぶエリア、大通りから更に外側にいくと領民の住居区画だ。
なお中央広場を抜ける中央通りから、北側を北街区、南側を南街区と呼び、公営の賃貸住居は全て南街区に建設予定だ。
今のところ、第三区画はまだ全てがスカスカだけど、行政府のミザリーさんを中心に用地の割り振りが進められている。
今一番賑やかなのは、中央広場に沿って円形に広がる露店街で、飲食や嗜好品、装飾品など多数の露店が所狭しと並んでいる。
商品取引所は物価安定も考え、今のところ公営で運営し、食品、生活必需品などはフランの町を経由して仕入れ、販売している。
いずれ街道が整備され、食料自給も整い、流通が安定してくれば、一部食品以外は商人に任せ、義倉をはじめとした備蓄倉庫に姿を変える予定でいる。
<第四区画>
第三区画の一段下は、平坦に整備された第四区画だ。
第三区画との段差は今後、隔壁にする予定でいる。
縦: 200メル(≒m)
横:1000メル(≒m)
この区画は定住を希望する移住者以外が居住する区画で、南側には工事人足などの期間労働者や、移住直後の仮住まいとして仮設住宅がある。
北側は傭兵団の詰所や駐屯地、練兵場を建設予定だ。
第四区画は正門と直結し、テイグーンの町を訪れた者が最初に足を踏み入れる場所となる。
そのため、警備兵詰所や大きな受付所も設置している。受付所の仕事は多方面に渡り多忙を極める。
移住者や期間労働者の登録や対応、仕事の斡旋、住居の割り振り、魔境に出入りする者の登録と許可証の発行、射的場の利用登録などの窓口業務の他、買い取り素材の掲示や魔物から取れる触媒の買取も行なっている。
もうこれって冒険者ギルドだよね?と、設置した俺自身が後で苦笑してしまった。
魔境の出入りを登録、許可制にしたのは理由がある。急激に人の出入りが増え、物見遊山気分で魔境に入る者も出る可能性が十分にある。
そんな素人は、魔物の餌食になるか、負傷して逃げ帰る際、魔物をテイグーンまで引き込んでしまう恐れも十分にあるからだ。
これまではテイグーンも小さな、町とも呼べない場所だった。でも今は多くの人や家畜で溢れて魔物対策は十分に行う必要があった。
既に十分な経験を積んだ魔物専門の狩人などの狩猟者以外は、事前に登録の上、傭兵団に依頼し、案内兼護衛を付けない限り許可証は発行されない。
そして許可証のない者は、関門を通過し魔境に入ることはできない。
町の中について、概要はこんな感じだ。
そして、もう一つ。テイグーンの町の特徴について。
この町には、町の規模に似合わない施設を幾つか建設する予定だ。
エストの街並みの大きな孤児院
孤児院に併設された学校(託児所)
エストの街より規模を大きくした施療院
エストの街と同等規模の教会
これらは第三区の最も上、第二区画との境界にある。
孤児院はエストの街の孤児院から、働き手として十分活躍できる年長者、ある程度読み書きができる者を、働き手として引き抜いてきている。
併設される学校には託児所も設け、子育て中の女性でも子供を預け、安心して仕事ができるようにした。
施療院は、エストの街にある施療院や今ある臨時の救護所の規模を大きくしたもの。
隣接する鉱山や、開発中の町では日々怪我人が出るため、それに余裕を持って対応できる広さにした。
父には少し嫌な顔をされたが、エストの街の施療院からも母に頼み、相当数の人員を引き抜いた。
もし【前回の歴史】通りに進めば、テイグーンの町を疫病が襲ってくる筈だ。その時に第一線で対応できるよう、十分すぎる規模にした。
町の外側についても、守りを強固にする事に心を配った。立地上、魔境近くの最辺境であり、安心して暮らせること、これは絶対に必要な要素だ。
通常、人を襲う魔物は魔境の境に広がる竹林を超えて出てこない。ただ、稀に竹林を超え、獲物を求め人が生活するエリア近くまで出てくる魔物や、何十年に一度の大発生時には大量の魔物が流れ込んでくることもある。
更には【魔境の禁忌】を知らない不心得者が、魔物を引き連れて来ることもあるかも知れない。
また、辺境の地は一般的に領主の目がゆき届かない事が多く、盗賊の出没や盗賊団と呼ばれる一団の拠点になることもある。
そういったものから領民を守る壁が必要だった。
<防衛施設>
◯外周防壁
・町の外周を囲む高さ20メルの防壁
・第三区画と第四区画を区切る隔壁
・領主館分館を取り巻く高さ10メルの防壁
◯空堀の設置
・最上部を除き、町を取り巻くコの字型の空堀の掘削
・領主館分館を取り巻く空堀の掘削
・空堀は溜池としても活用する事も想定
今はまだ、城壁は堤と同様の盛り土状態、空堀は掘削しただけの状態で完成していないが、急ぎ対応は進める予定でいる。
空堀の掘削は地下の水脈を切らないよう、調査を行い対応、地盤は固めて水が漏れ出さないよう留意した。
この空堀は、雨水やテイグーン山上部に降り積もった雪解け水を溜め込み、渇水期の農業用水としての利用も視野に入れている。
平地部分の斜面を利用すれば、高低差の低い場所に水路を通して水を放出できる。緊急時用の灌漑水路として、水路工事は余裕ができ次第取り掛かるつもりだ。
更に、エランとクリストフの提案を入れて、灌漑水路以外の水路を2本、工事を優先して用意した。
この水路は、両端の関門近くまで延び、関門外の隘路に一気に水を押し流すことができる仕組みだ。
◯関門
・魔境側の関門建設
・フラン側の関門建設
正直、関門はすごく重要だが、まだ手が回っていないのが現状だ。とは言っても魔境側は放置できないので最初にクリストフが提案した、隘路の狭い場所に、仮関門を作っている。
ここなら、取り敢えず工事個所も少なく済み、急ぎでそれなりの関門が作れるからだ。
本格的な関門は、町の防壁工事が完了してから、もう少し手前の、平地寄りに堅固なものを作る予定だ。
フラン側は、取り敢えず木の柵で作った関所レベルのものを用意しているが、こちらもあくまでも暫定的なもので、優先度は一番最後にしている。
<防衛要員>
本来であればテイグーンの町にも相当数の常備兵が駐屯しなくてはならないが、この役割を双頭の鷹傭兵団が担ってくれているお陰で、大いに助かっている。
彼らの一部は商人から依頼を受け輸送時の護衛、貴重な触媒を求め、一攫千金を狙って魔境に入る人々の護衛なども引き受けている。
そのため、正門を入ってすぐ先の所には、傭兵団詰所、駐屯地もある。
今更ながら……、双頭の鷹傭兵団、また団員増えてた。
確か以前は50名だった気がしたが、テイグーン一帯の開発景気に乗って80名に増えていた。
傭兵団駐屯地、100名規模の広さ想定だったが、すぐさま、200名規模で確保するよう変更した。
どこもかしこも工事中、工事の音や人の声が絶えず、町の中はまだ殆どが空き地、こんな状態ではあるが、【前回の歴史】とは、全く異なったテイグーンの町が、ゆっくり、でも確実にその全容を整えつつある。
正直、今のペースで工事を進めれば、二万枚の金貨ではまだ全然足りないのだけれど……
できない部分は時間をかけて進める事にした。
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