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2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~  作者: take4
第十二章 列強同盟編(歩み出した戦後世界)

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第四百四十九話(カイル歴516年:23歳)華燭の典②  フェアリー再訪

新たに国境に建設を進めている街で一泊したのち、俺たちは再び王都フェアリーに向けて移動を始めた。

整備が整いつつある国境の回廊を抜けると、そこには出迎えに来ていたフレイム侯爵率いる軍勢が待ち受けていた。



「公王陛下、そして遠路お運びいただいた皆さま、ようこそお越しくださいました。

これよりフェアリーまで、私が案内と饗応役を申し付かっております」



「侯爵の出迎えはありがたい。俺たちもこのルートは初めてで道先不案内だったから助かるよ。

ここからフェアリーまで二日を予定していたけど、その認識は間違いないかい?」



フェアラート公国の南部一帯は内乱時も現国王派の貴族が治める領域であり、俺自身もあまり心配はしていなかったけどね。ただ他国の軍勢を先導している手前、道先案内人がいれば大いに助かるし。



「はい、強行軍で騎馬を走らせれば一日の距離ですが、今回は戦ではありませんので陛下の認識が正しいと存じます」



となると……、替え馬を用意した一日百キル程度を走破する強行軍なら、クサナギから国境、国境からフェアリー、この区間をたった二日から三日で移動できるってこと?

過去のルートから考えれば非常識なまでに早くないか?


どおりでクリューゲル陛下が新たな国境の整備に積極的になる訳だよな。

新たな国境が整備されれば、魔境公国や帝国との通商の道が大きく開かれ、国王親派である南部一帯の貴族領も大いに潤い力を付けることになるだろう。



「我が王も公王陛下による新国境の整備には並々ならぬ関心を抱かれ、心より感謝されております。

その件では『フェアリーにてじっくり盃を交わしつつお話ししたい』とも……」



ははは、盃を交わさ無くても構わないけどね。

それなりに巻き込まれる者たちも出てくるしさ。特にラファールとか。



「それでは先ずは今夜のご逗留先までご案内させていただきます。

まだまだ整備の至っていない田舎道ではありますが、どうかごゆるりと旅をお楽しみくださいませ」



そこからはフレイム侯爵の言葉通り、本当にゆるりと移動を楽しむ立場に甘んじることができた。

ずっと以前に聞いた棚田や開発に沸く村や町を幾つも通過しながら……。

ただ、ちょっと意外だったこともあったけどね。


歩みを進めている途中で、俺は思わず馬を止めしばらく見とれる景色もあった。



「懐かしいな……」



「懐かしい……、ですか? 確かに綺麗な景色ですね?」



やべっ! 思わず俺の発した言葉にユーカは不思議そうに反応したが、ニシダにとっては確かに懐かしい景色だった。

ずっと過去に見た、心を動かされた美しい紫に彩られた並木が街道に沿って広がっていたからだ。


南洋桜とも呼ばれ、世界三大花木のひとつにも挙げられたジャカランダに似た樹々が満開の花を咲かせ、街道を美しい紫に彩っていたからだ。



「こっちにも似たような木が有ったんだ?」



「お気に召しました?」



「うん……、まぁ」



「ではこれも……、ですわね」



俺の反応に満足したかのようにユーカが答えるとミザリーは大きく頷き、ヨルティアはすっと馬列を離れ、先導するフレイム伯爵の方へと駆け出していった。



「あれ? 何かあった?」



「いえ、何でもないです」



そう言って二人は笑ったけどさ、別に花を摘んできてとか望んでいる訳じゃないからね。

ちょっと、絵になる光景だなぁっと……。



そんなやり取りもあったが、俺たちはそのまま街道を進み、その二日後の午後にフェアリーへと入った。



「ユーカとミザリーは初めてだよね。どうだい、俺が水都フェアリーと呼んだ王都は?」



俺は今回、結婚式の随員としてユーカ、ミザリー、ヨルティアを連れてきていた。

既に案内役や御守りの立場からは解放されているので、今は彼女たち三人と馬を連ねている。



「私にとってはタクヒールさまと共に国外へ旅に出られること事態が楽しいですわ。それにしても……、名にしおう美しい街ですね」



「水運がここまで発達し経済を支えているとは思いませんでした。これが海まで通じているのですね?

私、船には乗ったことがなくて……」



美しい街、経済が発展して……。

うん、だけど落とし穴があるんだよね?


あの独特の慣習があるからさ、この美しい街で買い物を楽しむのは、本当に大変なんだよ。

まぁ、今回の随員は出発前にヨルティアからレクチャーを受けているけどね。

他国の面々は事前に注意喚起しないとだめかな?



「確か……、フェアリーにもティア商会とヒール商会の支店があったな。到着後はそこを訪ねてみるのもアリだな」



「はい、私の方にもハリムさんやザハークさんから『ご来訪をお待ちしております』との連絡を受けております」



この辺りはヨルティアが事前にやり取りしているらしく、連絡も抜かりないようだ。

だが……、予想外のこともあった。

王都のメイン通りを俺たちが進むなか、それは突然始まった。



「公国の解放者、タクヒール陛下万歳!」

「我らの英雄に感謝を!」

「両国との末長い友好に感謝を!」


そんな声に交じって……。


「姐さん、ようこそフェアリーへ!」

「我らの女神様を歓迎します!」

「姐さん、相変わらず痺れますぜっ!」

「姐さん万歳!」



街路の左右に隙間なく並んでいた群衆の中から、見た目はちょっといかつい男たちが叫び始めた。

その数……、軽く百名は超えているんじゃないか?

見物に来ていた王都の民も最初は呆気に取られていたげど、段々と釣られて同様に叫んでいるしさ。


ってかさ、恥ずかしいから止めてくれ!

俺はそんな『仕込み』をしてないし、当のヨルティアも最初は引きつった顔で愛想笑いを浮かべていたけど、途中からは真っ赤になって俯いていた。



「なるほど……、公王は公国でも民衆から絶大に支持されているのか。同様に救われた立場としては、さもありなんといった話だな」



いや……、帝国の『護衛隊長こうてい』が勝手に列を離れ、他国の軍列に交じっているってどうなんよ?

きっとジークハルトも困って……。



「ははは、他国の民からもここまで歓迎されるなんて、やはり公王陛下は僕が睨んだ通り面白い人ですね。ところで『姐さん』って何でしょうか?」



ジークハルト、お前もかよ!

何でこの二人は自由人なんだよ! これじゃあ護衛の帝国兵もたまったものじゃないぞ?

それに『姐さん』の話は俺だって詳しくは知らない。本人ハリムたちに聞いてくれ!



だがこの一件、驚いていたのは俺たちだけではなかった。

この影響を俺は、後になって知らされることになる……。



結局、最後の最後で予想外の出来事もあったが、俺たちは予定通りフェアリーに到着した。

そして……。



「これより各国の皆さまには、王宮に隣接した離宮をご宿泊所としてご用意しております。

既にカイル王国のご使者一行は北の離宮に入られております。皆様はそれぞれ西、東、南の離宮にご逗留いただくことになります」



「あれ? 離宮って数が増えてる?」



確か以前の離宮は前国王の体制下、第一王子であった現国王、第二王子、第一王女が住まう場所として、王宮を囲うように配置されていると聞いていたけど……。



「はい、今回のご来賓に合わせて最上のおもてなしができるようにと一つは新築し、三つも改築を進めて装いを一新しております」



この話を聞いて俺は改めて考えさせられた。

そういう意味では魔境公国は格段に貧弱だからだ。


今や国の面積だけで見れば魔境公国は、三国を統一しイストリア皇王国の南三郡を加えたリュート・ヴィレ=カイン王国よりも大きく、一部領土を分国化したカイル王国に匹敵し、未だ広大な未開の地を抱えるフェアラート公国よりは少し小さい程度までに急成長している。


だが……、国としての歴史がないため、そもそも王宮というものが存在しない。

テイグーンもクサナギにも、あるのは精々地方の有力貴族の屋敷、その程度のものでしかない。

なんとか体裁を保つために双方には迎賓館や広大な広間は設けているが、複数の国賓を迎えるに相応しい施設はまだない。



「俺たちはまだまだだな……」



思わずそう呟いて俺は大きなため息を吐いていた。

これからは、そういう面倒くさいことも考えなくてはならなくなるだろう。



「ふふふ、大丈夫ですよ。今はまだ手一杯ですが、クサナギ自体はそれに相応しい広大な敷地があります。

レイモンドさんもそれを考え、街の機能は全てイズモ一帯に移転させようと動かれていますので……」



「え?」



俺は自身の呟きに反応したユーカを思わず見つめた。

そんな計画ってあったっけ?



「以前に、『今のタクヒールさまは不要と仰るでしょうが、これはいずれ必要になるものです』と仰っていましたよ。そもそもクサナギ自体は今後王宮と行政機能のみを残し、それ以外は全てイズモ自体が公国の首都として大きな街になるのですから」



確かにそんな話は聞いた気がする。

皆の大風呂敷に合わせてレイモンド自身も壮大な大風呂敷を広げて……、まさかそれも王宮を建設する一環で?



「あ、そうでした。これは『下地が整う(移転が完了する)まではタクヒールには内緒』のお話でした」



そう言ってユーカは笑って舌を出したが……。

なるほどね、俺は考えていなくても周りはちゃんと国としての体裁や在り方を考えていてくれているのか?

レイモンドの下で補佐官として働いていたユーカもその方針を知っていて当然か?



「そうだね……、俺もこの短い期間に帝都グリフィン、新王都リヴィカ(旧ヴィレ王都)、そしてフェアリーと歴史ある王都を訪れて改めて思ったよ。

来賓を迎えるにもそれなりの器が必要だとね」



「はい、そういう意味で実は私たち三人は、師匠レイモンドからそれぞれ宿題を課せられています」



「へ? 宿題?」



驚く俺にミザリーが説明してくれたのは、魔境公国の未来を考えてレイモンドが彼女たちに与えたものだった。



ひとつ、建設を進めている新国境(帝国とフェアラート公国)を通じた交易路をどう活用するか考えること

ひとつ、新たな交易路ができたのち、サラームからの交易路と街の発展をどう支えるか考えること

ひとつ、新たな公都となるクサナギやイズモを美しく魅せるため、他国の風物を見分して意見をまとめること



確かにな……、最初の二つは俺も考えていたことだけどさ、三つめは全く考えが及んでいなかったな。

もしかしてだけど……、それを受けて『ジャカランダ』の時もあの反応だったのか?

少し前の彼女たちの行動に、なんとなく納得がいった。



「ここからが私たちの調査の本番です! タクヒールさまの好み、フェアリーでも漏らさずチェックしますわ!」


「「はいっ!」」



いや……、ユーカさん?

俺の好みじゃなくって、人々に美しく魅せるため……、ですよね?

何となく最初から路線がズレている気がするのだけど……、気のせいでしょね?


そう思って苦笑した俺自身、翌日にはすっかり忘れて新たな『好み』の風景に夢中になってしまうことになるのだが……。

もちろんそれも合わせ、帰国後にはしっかり報告書に反映されることになる。

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

次回は03/23『華燭の典③』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

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