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【7巻2/15発売】2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~【コミック3巻1/15発売!】  作者: take4
第十二章 列強同盟編(歩み出した戦後世界)

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第四百四十話(カイル歴515年:22歳)新生魔境公国

帝都グリフィンへの旅は急ぐ必要も無かったため、往路十日、滞在四日、帰路十日で俺たちはクサナギへと戻って来た。

もちろん帰路も、カイル王国を代表したクラリス殿下一行、フェアラート公国を代表したクリューゲル陛下一行も俺たちに同行し、クサナギに立ち寄っている。


彼らには改めてクサナギにて行われる論功行賞と、戦勝祝賀会に参加してもらう予定があったからだ。


それを踏まえ、事前に身内への褒賞や領地配分などの頭の痛い問題を解決しておく必要があった。

そのために俺は、取り急ぎ帝都から早馬を先行させてレイモンドに送っており、帝都にて決定した内容と新たに得た領土の情報、そして論功行賞の方針案を伝えていた。



そして……。

帰着後早々に主要者を集め、最終的な決断をするための会議を行った。

この場に招集されたのは身内からレイモンド、ミザリー、アレクシス(ソリス子爵)、ヴァイス魔境騎士団長(子爵)、ユーカ、与力からゴーマン侯爵、ソリス侯爵、ファルムス伯爵、ボールド子爵、クリシアたちだ。



先ずは論功行賞の原資だが……。


前提条件① 褒賞金(賠償金)

・帝国より(帝国大金貨を王国金貨で換算)

  500万枚(魔境公国)

  20万枚(フェアラート公国)

  50万枚(カイル王国)


・リュート・ヴィレ=カイン王国より

  30万枚(魔境公国)


前提条件② 領土割譲

・帝国より

 旧ローランド公国領(第三皇子委任統治領)

 ジャーク伯爵領

 その他帝国領の一部


・リュート・ヴィレ=カイン王国より

 各国の国境側領地

 旧イストリア正統教国の南一郡


挿絵(By みてみん)


正直言って莫大な量の金貨に、これまでに倍する新領土、ただそれでも手放しに喜んではいられない。


ゲイルを始めとする、国土を守るために戦いで命を失った者たち、傷付いた兵たちの数も多い。


それに加え、これまでの魔境公国領に倍する新領土は戦禍に荒れており、復興や開拓には相当な投資と人手を投入する必要があるからだ。


頭の痛い問題も多かったが、会議では冒頭からレイモンドが話し始めた。



「クサナギに残留いただいた諸侯の皆さまと我らで、早馬でお送りいただいた内容と公王陛下のご意向を受けて相談し、内々に草案は固めております。

先ずはそれを報告させていただいてもよろしいでしょうか?」



さすがにレイモンドは仕事が早いな。

見たところ既に根回しも終えているようだった。



「基本方針として、タクヒールさまのご懸念も問題なく解決できております。

各家の意見としても、既に過分な地位を頂いているため、『戦功による陞爵は不要』とのことで意見は一致しております」



ほう……、既にそこを固めていたか。

実のところ一番頭の痛い問題がこの点だったが、皆が納得してくれているのなら一安心だ。



「我らは魔境公国に所属しておりますが、カイル王国の臣下でもある以上、王国の爵位ともバランスも考える必要がありますので……」



そうなんだ。もしゴーマン侯爵や父が陞爵すれば公爵、カイル王国内の貴族では最上位になってしまう。

ただでさえ今でも爵位では十二氏族出身の有力貴族たちと肩を並べてしまっているしさ……。


勝手に先走ると狸爺などから『事前に相談してくれ』と苦言を呈されることにもなる。



「今回陞爵するのは、特に戦功のあった一部の者だけとします。例外として騎士爵に叙される者、騎士爵に相当する行政統括官へ昇進する者、騎士爵から準男爵への陞爵する者は、功績に応じて実施する方針です」



「うん、それは問題ないと思う。俺たちは急速に勃興した国だけど、支えてくれる裾野はまだまだ未成熟だからね。現場を支えてくれた者たちには、功績に見合った地位に就いてもらいたいと考えている」



まあ、これも事前の方針通りなので俺からは補足することは特に何もない。



「ではタクヒールさまの合意も得られましたので、身内の論功行賞について議論を進めたいと思います。

先ずはゴーマン侯爵ですが本領は変わらず褒賞のみ、ご子息が成人された暁には新領土にて子爵領相当の領地を継承いただく、今回の加増はこれで合意が得られております」



「デアルな、我が領地はゆくゆくはユーカに、すなわちそれは公王が継承されるもの。

であれば新たに加増は不要デアル。なにより分家の身が立つように配慮いただいたこと、我らとしては感謝に堪えぬ」



そういって義父(ゴーマン侯爵)は深く頭を下げた。

彼の場合、正妻とその間に生まれた子供たちは、先の内乱によってゴーヨク元伯爵の係累として罰を受ている。


カイル王国内で相続権を失ったユーカの弟が、魔境公国内で子爵として認められ、新たに領地を継承できるのであれば全てが丸く収まる。

  


「それらを鑑み、ゴーマン侯爵への褒賞は王国金貨十五万枚相当、子爵として分家を興すことを公式に認め、タクヒールさまのご意向に従い旧ヴィレ王国より割譲された地域を領地として与えたく思います」



魔境公国では基本的にカイル王国の金貨を基軸通貨として使用しているが、帝国側との交易では帝国大金貨を使用している。

そのため国内で流通する通貨はダブルスタンダードになっているが、経済的な目安は全て王国金貨換算で行っている。


ただ今回の褒賞に関しては、その殆どが帝国大金貨で支払われるため、表現上は全て王国金貨()()で表しているけどね。



「うん、それで問題ないよ。任せる領地は新生リュート・ヴィレ=カイン王国と魔境公国との交易の要、かつては帝国との最前線だった要衝だ。

統治し甲斐のある場所だと思うよ。当面はゴーマン侯爵が後見人となって領地を受け継ぎ、統治を進めてもらえるとありがたい」



そう、この地はそれなりに『うまみ』もある場所だ。

更に広さでいえば今のゴーマン侯爵領とほぼ同等の面積がある! 

なので面目も立つし、この配分に関してはユーカも深く頭を下げていた。



「次にファルムス伯爵領ですが、こちらもタクヒールさまのご意向通り、現在の領地と差し替えで旧ジャーク伯爵領と旧カイン王国より割譲を受けた領地をお任せすることで同意をいただいております」



そう、この地は二つの役目を担っている重要な場所だ。

ファルムス伯爵に与える領地は、グリフォニア帝国・リュート・ヴィレ=カイン王国・そしてもう一国と実に三か国との国境を接する新たな要衝となる。


なので誰かが飛び地で治めてもらうこと、代官を派遣して直轄領とするにも不安があった。

その地に住まい兵備を整え、国境を守る即応戦力となる領主に預けるべきと考えていた。



「なお主家が過分な褒章を得たことで、ボールド子爵は領地の加増を辞退されております。今後は主家の統治に協力することを優先したいとのことです。

そのため褒賞の分配はファルムス伯爵に王国金貨十万枚相当、ボールド子爵に王国金貨五万枚相当とすることに同意いただいております」



確かにな……、主家とはいえかつてはボールド子爵と同列の男爵領を治めていた立場だったため、ファルムス伯爵は統治に当たる人材にも事欠いている状態だ。

そのためボールド子爵は支援に専念するということか?



「ファルムス伯爵は今後、侯爵待遇の辺境伯となり国境の安寧を図ってほしい。当面の統治に対し兵員や人材面での支援は惜しまないつもりだ。

ボールド子爵もどうか支えてやってほしい」



「「はっ承知しました」」



二人は満足げに大きく頭を下げた。

これで課題となる国境のうち、片方は安泰だ。



「続いてソリス侯爵及びソリス子爵(アレクシス)ですが、ご意向に従って協議を進め合意に至ることができております」



そう、ここも大きな悩み所だったんだよね。


クリシアと婚姻しソリス家の養子に入ったアレクシスだが、彼を安全な後方(旧カイル王国側)に配し統治を任せるなんて勿体ない話だ。


今でこそ俺の帷幕として力を発揮してくれているが、このままだと将来は父の領地を受け継ぎ、安全なカイル王国側の領地に引きこもってしまうことになる。


優秀だからこそ最前線を統治し、即応戦力として力を発揮してほしい。これが俺の願いだった。



「アレクシス、無理を言って申し訳ないがこれは俺の気持ちだけでなく、魔境公国全体の安寧を考えた願いでもあるんだ。クリシアも承知してもらえるとありがたい」



「もちろんです! 私は元々爵位も継承できない男爵家の次男坊、公王陛下により子爵という過分な地位まで与えていただき、これ以上何を望みましょうか?

魔境公国の新たな要となるべく精進いたします」



「お兄さま……、いえ、大変失礼しました。公王陛下のお気持ちはありがたく受け取っております。

それに新たに拝領する領地は父ソリス侯爵領の数倍、喜んで拝領しご期待に沿えるようにいたします」



うん、クリシアもすっかりアレクシスの妻となっているな。レイモンドからも『統治の才がある』と聞いているし、ここは期待できるだろう。



「それでは改めて、ソリス子爵はソリス侯爵領の継承を放棄する代わりに、トライアを含む旧イストリア正統教国の南一郡、及び旧リュート王国よりの割譲された領地を治めていただくこととします。

公王陛下のご意向に従い、ソリス侯爵には褒賞金として王国金貨十五万枚相当、ソリス子爵にも同額の金貨十五万枚相当を分配することで最終決定といたします」



「うん、それで構わない。そしてアレクシスもまた今後は辺境伯として国境を守り、リュート・ヴィレ=カイン王国を後方から支えてやってほいしい」



そう、二人の辺境伯をここに配したのには意味がある。


言葉通りリュート・ヴィレ=カイン王国をそれぞれ支える意味もあるが、次世代以降も国境を守り睨みを利かせる存在となってもらうことがひとつ。


もうひとつは、未だ未知数であるゴーマン子爵(ユーカの弟)を両翼から支えるだけでなく、長じて彼に不都合が起こらないよう、牽制する役目も担ってもらうことだ。



「残る配分は二つ、先ずは双頭の鷹傭兵団の直轄領について、タクヒールさまより元ドゥルール子爵委任統治領の北部を除く一帯を充てよとの指示をいただいております」



「なんと! そのような過分なご対応は……」



「団長、今の俺があるのは団長あってのことだからね。

ここら辺で傭兵団が恒久的に根を張れる場所を用意したいと思っていたんだ。それに……、この地を本拠地に据えるのは他にも目的があるからね」



そう言って俺は団長を真っすぐ見た。

この件は言葉にしないまでも団長も知っている話だ。


表の目的は魔境公国の西国境を固めてもらうこと。

とは言え国境を越えた先はドゥルール伯爵(元子爵)が新たに治める地なので、当面は心配ないけどね。

因みに以前は割譲で便宜上存在した帝国の飛び地、魔境公国の中にあったドゥルール子爵(当時)領は今回の配分で魔境公国領として割譲されている。

その代わり、旧ケンプファー男爵領が帝国の飛地として新たに存在する。


それよりも裏の目的だ。

ずっと以前から帝国より依頼を受けていた内容、魔境復活の実験場を旧ドゥルール子爵領の北部から帝国側に伸びる大山脈の裾野一帯で行う。


当然ながら上手くいけば再生された魔境に接し、そうでなくても試験段階で魔物を放つ場所だ。

もちろん前提として実験場一帯は広大な防壁で囲う予定だが、万が一の際に即応戦力として傭兵団の本拠地があるとありがたい。



「はっ、ご配慮に感謝し一層の精進と後進の育成をお約束いたします」



「では褒賞としてはこちらも王国金貨十万枚相当と新たな所領、これを以て双頭の鷹傭兵団は魔境公国軍に所属しつつ、今後は独立採算を採ることとなります」



「もちろんです! 傭兵団としての領地を拝領した以上、今後は諸侯の皆さまと同様に兵を供出して国防の一端を担わせていただきます」



うん、団長も意味を理解してくれたようでありがたい。

レイモンドの言葉で、あらかたの配分と身内の褒章は片付いたといえる。


さて、最後の一つだけどさ……、これが賛否両論あるんだよね。



「では公王陛下のもう一つのご意向ですが、カイル王国の教会があったローレライの街を中心とする一角、男爵領相当の地を中央教会に寄進し、新たに教会領といたします」



「なんとっ!」

「デ、アルカ……」

「あの守銭奴に、ですか?」

「それは……」



だよね、皆の反応も若干否定的だよね。

これまでずっと教会には好意的であった父でさえ……。



「皆が驚くものも無理はない。俺とて教会の拝金主義や方針には思うことがあるからね。

皆には詳細は伝えられないが、王国の教会が抱える秘密は俺たちにとって死活問題となることも含まれている」



魔法士を誕生させるのに欠かせない宝珠、そして歴史の闇に隠された宝珠にまつわる話。

これはカイル王国でも王族しか知らぬ秘事だ。



「それを知ってしまった俺は、以前に王都の中央教会で『話の分かる』人物たちと密約を結んだ。

もちろん我々に『利』がある形でね。ただそれは互いに『利』がある話でもある」



もちろん話が分かる人物とは、クレバラス枢機卿とグレース辺境枢機卿だ。

そしてジークハルトたちへの密約もある。



「幸いなことに彼らの教会があったローレライは『廃都』と呼ばれて荒廃し、今回の侵攻で住まう者すら居なくなった場所だ。そこに彼らの拠点を与えた上で俺は教会という組織を内に抱え込む。

その準備金として金貨一万枚を寄進する予定だ」



そう、領地を与えても先立つ物がないとね。

もっとも、この金貨は中央教会に寄進するものではなく、新たに与える教会領に寄進する形を取らせてもらう。



「なるほど……、これまでもそうだが公王は我らが知りえぬことを知り、その目は我らが見えぬものを見ておられる。知らぬ我らがとやかく言う話ではないということデアルな! どうかな御一同?」



そう言うとゴーマン侯爵は立ち上がり全員を見据えたのちに大きく頷いた。

それに合わせて父が、そして参加していた各位も同じように頷いてくれた。



「みんな、俺の言葉を信じてくれて礼を言いたい。

それにローレライの教会は、ローザからの報告にもあるが人員を一新する必要もあるからね」



そう、彼らは頑なに避難を拒み結果として孤児たちの避難が遅れた。

そのためにヴィレ国王指揮下の兵たちに襲われ、こともあろうか教会の者たちは孤児たちを捨てて我先に逃げ出した。


結果として彼らを護衛した兵たちも損害を受け、救援に向かった当時のドゥルール子爵は負傷しカーミーン子爵の軍も損害を受けた。


本来なら相応の罰を与えるべきだが、彼らを動かすためにやむを得ずローザが結んだ口約束もある。

なので公式には罰しないが、後から乗り込んでくる中央教会に処分させればよい話だ。


クレバラス枢機卿は宿願だった『聖の氏族』固有の領地を得ることができるのだから、喜んで協力してくれるだろう。



「それではこれにて大まかな枠組みは決しました。

あとは魔境公国から支払う援軍への謝礼について、従軍した各指揮官と兵士への褒賞ですが……」



ここから先は特に問題もなく議論は進んだ。

まぁこれも、殆ど全ての段取りと事前に根回しをしてくれていたレイモンドのお陰なんだけどね。


これらの事前協議を終え、俺は肩の荷が下りた気持ちで翌日の論功行賞と戦勝記念式典に臨むことができた。

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

次回は01/16『戦勝記念式典』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

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ご褒美もらってた側から、与える方へ 感慨深い 魔王領の拡大がエグくて管理きつそう 義弟は実質二段陞爵で対イストリアの重要戦略拠点を任されたし、近いうちにあいつらにケジメとらせにプレッシャーかけていく…
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