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【6巻11/15発売】2度目の人生、と思ったら、実は3度目だった。~歴史知識と内政努力で不幸な歴史の改変に挑みます~【コミック2巻発売中】  作者: take4
第十一章 魔王編(動乱の始まり)

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第四百十八話(カイル歴515年:22歳)第二次遠征

お知らせ 昨日(8/25)コミック版9-②話がコロナexにて公開されています。

良かったらどうぞそちらもご覧ください。

タクヒールが宣言した通り、彼の決断から三日後には大規模な遠征軍がクサナギを出発した。

故国の危急を救うため、一時的に捕虜から解放された三国連合軍は一万騎、彼らより支援を願われて出征した魔境公国軍は一万四千騎(プラス帝国軍二千騎)もの規模になっていた。



魔境公国遠征部隊(14,000騎)

・魔境騎士団   8,000騎

・特火兵団    3,000騎

・本営護衛軍   1,000騎

・北部戦線部隊  1,000騎(ゲイル麾下)

・親衛軍鉄騎兵  1,000騎(元第一皇子軍)


リュート・ヴィレ・カイン連合軍(10,000騎)

・リュート王国軍 4,000騎

・ヴィレ王国軍  5,000騎

・カイン王国軍  1,000騎


帝国軍派遣部隊

・北部戦線防衛軍 1,000騎(ドゥルール子爵軍)

・派遣義勇軍   1,000騎?(カーミーン子爵軍)



「全て騎兵に限定したけど、それなりの数になってしまったな」



俺は長く伸びる軍列の中ほどで、大きなため息を吐いていた。

本来なら此方は一万騎の予定だったし増えても一万二千、だが現実的には一万四千にまで膨れ上がってしまったのだから。


やっぱ……、どうしても征くと言って聞かなかった俺のせいかな?



「まぁ……、色々と検討した結果です。今回は食料も帝国側からの輸送に頼ることになりますからね。

これは必要数ですよ。カーミーン子爵が率いられる軍は現地で合流するため兵種や規模は不明ですが、まぁ……、問題ないでしょう」



団長は俺の呟きが聞こえて思いを察知したのか、すかさずフォローしてくれた。

確かに今の俺達は食料に余裕がない。

膨大な数の難民を支えるため、魔境公国は既に貯えを吐き出していたし、カイル王国側から懸命に輸送して補っている。


ならどうしたか? 答えは簡単だ。

レイモンドは遠征が決まった日にクサナギに集まっていた帝国商人たちに大号令を掛けた。



『四か国連合軍が再び侵攻してこないよう、公王陛下は部隊を派遣し帝国との国境に防衛拠点を構築し兵を派遣される。現地で必要な糧食は多少割高でも購入するので、至急用意してほしい』



これにより四か国との国境には、帝国全土から糧食が集積されることになった。

幸い今は収穫期、商人たちはこの商機を見逃さなかった。



「今回率いた兵のうち、一千名は帝国軍と共に補給拠点の防衛に当たり、三千名は前線と補給拠点を繋ぐ輸送部隊の護衛と後詰を兼任します。我らが現地調達する訳にもいきませんからね」



団長の危惧は正しいと思う。

遠征に出て補給路を断たれた軍に待っているのは悲惨な末路でしかない。

まして助けに行って現地で食料を徴収し、助けたはずの民から恨まれたら元も子もないからね。



「あとは特火兵団が全軍参加してくるとは思わなかったよ。マルスやダンケなど、駐留部隊が参加することは想定していたけどね」



これはある意味でゲイルの弔い合戦でもある。

なので長年ゲイルと共に戦った彼らが参戦を望むのは無理ない話だと思うし、俺も敢えて彼らを止めなかった。



「グレン司令官は『同胞のけじめは我らの義務です』と言って譲りませんでしたし、南部へ遠征に出ていた者たちも経緯を聞いて全員が望んできましたからね」



「ちなみにだけど、団長の目から見て、リュート王国の第一王子とヴィレ王国のゴルパ将軍はどうだい?

実戦でも頼りにできると思うかい?」



俺も彼らとは短い付き合いだが、人としては称賛に値する人物だと思う。

そして今回もバリスタという彼らの得意武器を基軸に据えた戦術は、ダレク兄さんも舌を巻いていたという。


だが……、今の彼らにはその得意武器がない。

その大半が焼き払われてしまったし、迅速な用兵にはそぐわないので残った物も置いてきている。



「私も準備で幾度となく彼らと打ち合わせを行う過程で手並みを拝見しましたが、優秀と言って問題ないでしょう。彼らは自身の弱みを把握し、それを隠し包まず伝える度量があります」



もともと彼らには、健在な騎兵は三軍合わせても一万には満たなかった。

だが初日から見込みのある兵たちを募り、短期養成で少なくとも行軍についていけるまでに仕上げていた。



「事前に彼らは、今回騎兵として運用に耐えるのは五千騎のみ、そちらはゴルパ将軍が率い残り五千は戦場で歩兵としてクラージュ殿下が率いられる旨、申し出て参りましたので」



ほう……、本来なら体面を繕い、少しでも良く見せようとするところを、自らの弱みを晒すか。

友軍である我らに戦場で迷惑を掛けないように。

騎兵に仕立て上げても『にわか』では戦場で何の役にも立たないからね。



「なるほどね。ちゃんと戦場を心得ているわけか。

ちなみにどうしてクラージュ殿下は第一王子にも関わらず、故国を追い出される形で今回の出兵に参加させられたんだ?」



「優秀だから……、でしょうな。第一王子という立場も後ろ盾あって初めて王位継承者足りえるのでしょう。

もっとも、有力な外戚の力を背景に王位を継承させるため、邪魔者となった優秀な指揮官を兵と共に戦地に追いやったことが、リュート王国に災いしましたけどね」



確かに、聞いた通り優秀な彼が国に残っていれば、リュート王国は簡単に滅ぼされなかっただろうな。

これも因果応報か……。

だけどこれは、全てが上手く済めば最も望ましい形になるお膳立てが整っているとも言えるな。



「では先ずは友軍として、彼らの戦いぶりを拝見しよう。俺たちの未来のためにも、ね」



俺の言った言葉の意味を知ってか、団長も深く頷いていた。



早朝にクサナギを出て日が沈むころ、俺たちは帝国と四か国の国境地帯に辿り着いた。

ここは以前、追撃軍を率いたアレクシスがイストリア正統教国軍と対峙した場所であり、戦いが終わった後もそれなりに構築された陣地が残っていた。


そこを再度、従軍した地魔法士たちを総動員して拠点となる陣地構築を夜を徹して推し進めた。

その傍ら、俺たちは主要者を率いて軍議を開いていたのだけど……。


そこに招かれざる客が来訪した。

俺は名前すら知らなかったが、どうやらこの一帯を治める伯爵らしい。



「ここは帝国領、しかも我がジャーク伯爵家の所領である!

公王はいかなる理由があって我が領地を占拠し、徒に兵を興して無用の戦火を巻き起こすのか!」



冒頭からこれかよ!

いや、むしろ下衆の類でせいせいするな。

さて……、どうしてやろうか?



「たかが伯爵風情が公王陛下に対し無礼であろう! 身の程を弁えられよ!

そもそも今回の出兵は、グラート殿下の要請に応じられたものであり、異論があれば帝都に向かい殿下に直接申し上げるのは筋であろう!」



俺が発言するより早く、伯爵に怒りの声を上げたのはカーミーン子爵だった。

彼は出兵の意図を聞くと、直ちに食料を満載したボッタクリナ商会と麾下の兵一千を率いて現地合流を果たしていた。



「なんだとっ! 貴様こそたかが子爵風情が誰にものを言っているのだ!」



ジャーク伯爵は激怒してカーミーン子爵に向き直った。

だが子爵は彼を侮蔑した目で睨み付けながら応じた。



「領地が敵国の軍に侵攻されたにも関わらず、迎撃に出た友軍を助けることもなくみすみす敵軍の通過を許し、帝国領の蹂躙を許した貴方に、だ! 

今更出てきて恥を恥とも思わんのか!」



「う、裏切り者め! グロリアス殿下がこのような暴挙を許されるとでも思っているのか!」



このジャーク伯爵も第一皇子派の人間だが、未だに南部戦線の結果は知らないようだった。

なので一層、彼が哀れな道化師に見えてくる。



「ジャーク伯爵よ、辺境にあっては仕方のないことだが、時の流れは伯爵の思っているよりも早いぞ。

元第一皇子(・・・・・・)だったグロリアス及び帝国に反乱を企てた首謀者たちは既に掃討され、グリフィンにて獄に繋がれ処断の日を待っているからな」



「はぁ? 何だとっ! ま、まさかそんな……」



威勢の良かった伯爵も俺の言葉に崩れ落ちた。

この哀れな男も第一皇子の勝利を疑わず、彼に与していたのだろうからね。



「それにしてもこの地を治める伯爵は不在だったと聞いていたが? そのためみすみす指を咥えて侵略者を通過させたと聞いていたが……、これも不思議な話よな」



ここで俺は彼を一気に追い込むようにした。

下手に後方で蠢動されるより、いっそのこと『不在』のままでいてくれた方がありがたいからだ。



「老婆心ながら言わせてもらうと、今其方が採る道は我らをあげつらうことより、直ちに帝都に向かいグラート殿下の慈悲に縋ることだと思うぞ」



まぁ……、縋っても無駄だと思うけどね。

南部戦線での裁きを見ていた俺からすれば、第三皇子は彼を決して許さないだろうし。


ただそれでも、彼が生き残るためにはそれが唯一道だろう。


この助言を受けて、ジャーク伯爵は顔を真っ青にさせて退席した。



余計な訪問者を早々に退室させた俺たちは、改めて中断された軍議に戻った。



「先ずはこちらの拠点ですが、あくまでも帝国の領土です。故に守備をカーミーン子爵が率いた一千名とドゥルール子爵軍一千名、そしてクリストフ率いる特火兵団のうち一千名にお任せしたい」



「はっ!」

「ご期待に添えるよう努力いたします」

「陛下の命、確かに承りました」



帝国軍を据えるのは当然のこととして、ここにクリストフを据えるのは団長が考えた用兵の妙だ。


俺たちが三か国の深くに入っている間隙を衝き、トライアからイストリア正統教国が侵攻してくる可能性も捨てきれない。そして第一皇子派の帝国軍の動きも気にする必要がある。


そのため独自の判断ができ、一撃で痛打を与え撃退できるだけの打撃戦力をここに残す。



「我らの基本方針は、本隊一万騎と三か国連合軍にてまずリュート王国を奪還し、次にヴィレ王国の奪還、戦線を南へと押し上げて進軍する。

ゴルドに任せた別動隊三千騎は、補給路の確保と本隊の後背を守ってもらいたい」



「はっ、承知しました!」



「クラージュ殿下(リュート王国の第一王子)から得た情報では、イストリア正統教国とリュート王国の国境線は長い。

なので下手をするとこちら側から背後を衝かれる可能性もあるからね。頼んだよ」



そのために逆境に強いゴルドだ。彼が率いる魔境騎士団三千騎が居れば、臨機応変に対応できるだろう。

彼は一度ならず俺の期待に応えて、クレイラットの地を守ってくれた実績もあるしね。



「みんな聞いてくれ。俺たちは乱を起こしながら卑怯な行動を取った奴らを逃さない。追いつめて必ず殲滅する! 先ほどの伯爵ではないが、今は奴らも第三皇子の勝利と俺たちの凱旋を知らない。

だからこそ電撃戦だ。明日は長躯してリュート王国の王都を衝く!」



「「「「「応っ!」」」」」



軍議はまとまり方針は定まった。

これより俺たちは初めて外征へと動き出す。


もちろん侵略の意図はなく、援助を請われた解放軍としての形で、だが……。

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

次回は9/02『新王の誕生』を投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。


※※※お礼※※※

ブックマークや評価いただいた方、本当にありがとうございます。

誤字修正や感想、ご指摘などもいつもありがとうございます。

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