第百十五話(カイル歴508年:15歳)入学許可証
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回より、第六章王都編となります。
まだ王都に向かう前ですが、この投稿より王都編とさせていただきます。
※※※お詫び※※※
これまで毎日投稿を続けて参りましたが、執筆済の次話が10話分を切ってしまいました。
当面の間、隔日投稿となる旨、ご容赦ください。
20話分までストックできたら、毎日投稿に戻す予定です。
それまでどうぞよろしくお願いいたします。
新年早々、俺の所に不幸の手紙が舞い込んだ。
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ソリス・フォン・タクヒール男爵
上記の者の、騎士育成課程への入学を許可する。
学園長 クライン・フォン・クラウス公爵
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送られて来たのは、王都の学園からの入学許可証であった。
しかも、学園長直々のである。
しかも、頼んでもいないのに、推薦人の欄には、ハストブルグ辺境伯とゴウラス騎士団長の名前が並んでいた。
そして更に!
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なお、今年より国王陛下直々の通達により、学園では魔法士の育成と戦闘訓練を強化する事となった。
新設する魔法士戦闘育成課程(1年コース)には、初年度、男爵家からは最低3名の魔法士を選抜のうえ、人材を参加させること。
参加する魔法士の性別、年齢、身分は問わず。
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そんな迷惑な要求まで付いていた。
俺は新年早々、大いに頭を抱えた。
いつの間にか、身の回りに起こるであろう災厄、それの対処に専念できる立場では無くなっている。
家族を、自領を守るための改変は、新しい流れを作り、その濁流に流され、身動きが出来なくなっているのではないか?
そんな、自責の念にかられた。
彼方に行ってしまえば、何かあった際、全ての対応が後手後手になってしまう。
特に来年は、どうしてもテイグーンに張り付いていたかった。
「テイチョウニ、オコトワリイタシマス」
言っても無駄な言葉を、俺はひとり呟いた。
そうは言っても絶対断れないし、俺一人でなく魔法士も最低3人って!
本当に迷惑な話だが、この9か月の間にそれを決めろと言うことか。
早速、俺は内密に相談できる4人の妻を集め、対策を協議した。
「断れない事とは言え、色々考えないといけませんね……、以前クリスさまが心配されていた事が現実になるような気がします」
アンも大きな溜息をついた。
「こうなっては、視点を変える必要があるかも知れません。
アンさまを始め、王都でタクヒールさまの身をお守りする部隊と、既にある程度情報が公開され、魔法士と分かっても差し支えない部隊、そしてテイグーンを守る部隊、この3隊に魔法士を分け、編成する必要があると思われます」
「クレアさんの言う通りですね。
私も本当はご一緒したいですが、魔法士でない私はテイグーンに残らざるを得ないと思います。
ヨルティアさんも、最も秘匿しなければ成らない存在ですから、私と同じですね」
「やっぱり……、身の回りのお世話でも、私がご一緒するのはダメですよね?
あ、でも、個人の気持ちは置いておいて、ミザリーさんの仰ることは、理解できます」
そう、俺が一番悩んでいたのは、4人のうち誰を連れていくか、誰に留守を任せるかだった。
でも、彼女たちが自主的に状況を判断し、思いとは別に、最善策を議論してくれることがありがたかった。
「魔法士だけじゃなく、騎士育成課程、ここにも護衛となる、腕の確かな者を送る必要があるのでは?」
「そうね、ヨルティアさんの言う通り。
それには……、うん! あの2人はどうかしら?」
「あっ! クレアさん、それは良い考えですね。
タクヒールさまの見立てで、腕は確かですから。
後は、入学に必要な推薦状が有れば確実ですよね?」
「ミザリーさん、それって、ハストブルグ辺境伯やゴーマン子爵にお願いするのはどうかしら?
身内ではない立場で学園に入れば、何かと動きやすいだろうし、敵に警戒もされないでしょうし。
推薦人としても、十分じゃないかしら?」
アンの提案で騎士育成課程に内密に送り込む者は決まり、議論は、魔法士の振り分けに入った。
「ココニオレガイナクテモ、ダイジョウブジャネ?」
ちょっと俺がいじけてしまうぐらい、俺が頭を悩ませていた人事を、彼女たちはてきぱきと片付けていく。
だが、それが一番平和的な解決だと分かっているので、議論が進んでいるなか、俺は敢えて沈黙していた。
なんか、以前にもこんな展開、あったような気がするが……
様々な点から考えて、クレアとヨルティアに加え、要となる魔法士たちは全員、残留した方が良いだろう、そういうことになった。
<残留する魔法士>
防衛関係:クリストフ(風)
開発関係:エラン (土)
商業関係:バルト (時空)
駐留軍系:ゲイル (風)
特命対応:マリアンヌ(聖)
諜報関係:ラファール(闇)
輸送関係:カール (時空)
その他、教会の公式記録には残っていない、最後に儀式を行った中から6名と、特命の対応で、聖魔法士全ても残留要員として確定した。
従者、または魔法士戦闘育成課程参加者候補として、過去の戦いに従軍し、その存在が露見している可能性の高い者から選抜した。
ゴルド (風:常備軍在籍)
マルス (火:常備軍在籍)
ダンケ (火:常備軍在籍)
ウォルス (水:常備軍在籍)
アラル (風:常備軍在籍)
リリア (風:戦役従軍済)
アストール(地:常備軍在籍)
保留としては、存在が露見している可能性の高い者を、交代要員候補として絞りこんだ。
メアリー(地)
サシャ (水)
ブラント(風)
そして最終的に、初年度派遣の対応が決定した。
<騎士育成課程>
・タクヒール
・他2名
<戦闘魔法士育成課程>
・ダンケ
・リリア
・アストール
<従者>
・ゴルド
・マルス (メアリー)
・ウォルス(サシャ)
・アラル (ブラント)
クレアも基本はテイグーンに残るが、ラファールと共に王都との連絡要員として動く。
ここまであっという間に決まった。
実は、昨年からこの場にいる4人と相談し、密かにある取り組みを始めていた。
【歴史書】の特性欄に記載されているのは、魔法士の適性だけではない。
剣技であったり、弓術であったり、槍術であったり。
武芸だけでなく、秀でた特技や潜在的才能、そんな物が記載されている。
その中から、飛びぬけた才能を持っている者に対し、密かに囲い込み(スカウト)を始めていた。
今回、騎士育成課程に送る予定の2名も、テイグーン自警団の中から選抜した、剣技に比類なき才を持つものだった。
今はまだ、ヴァイス団長に預けたばかりで2人とも【修行中】ではあるが。
「なあに、すぐに【達人】レベルには育てて見せますよ」
団長は簡単に豪語するぐらい、高い素養を見せていた。
彼らの素質は【剣豪】と【剣鬼】なので、数年後にはその実力をいかんなく発揮すると思われた。
後日、俺からの依頼で、2人はそれぞれソリス男爵(子爵)とは関係のない、辺境伯領、子爵領の平民で騎士を目指す候補生として、学園への入学申請が行われることになるだろう。
そして、兄の卒業と同時に、兄から信の置ける文官希望者も、紹介を受けてテイグーンにやって来る。
彼らを行政府で、ミザリーやヨルティアの下に組み込み、体制を整える。
不在の3年間の方針は、秋までに議論を重ね、道筋を立てておく、そういう事が決定した。
※
余談ではあるが、この会議の暫く後、ヴァイス団長から、王都に向かう者全てに対し、魔境での特別メニューの実戦訓練が課された。
勿論俺も……
「あちらでは、守ってもらえる配下は格段に減ります。
ご自身の身を、ご自身で守れるよう、お鍛えする事が私の使命です。
また、お側に仕える者は、残るものの期待に沿えるよう、主君をお護りするだけの力を身につけること。
これは、最低限の義務です!」
こう言われ、俺と王都に向かえることを喜んだのも束の間、対象となる12名には、地獄の特訓が始まった。
<カイル歴508年 年初時点開発予算残高>
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〇個人所有金貨
・前年繰越 12,000
・期間収入 2,000
・期間支出 1,000
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残額 金貨約 13,000枚
〇領地所有金貨
・前年繰越 58,000
・開発支出 35,000
・経費支出 18,000
・売却収益 10,000
・臨時収益 2,000
・領地収益 23,000
※税収、賃貸料、商品取引所販売益、公営牧場販売益、農産物など
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残額 金貨約 40,000枚
借入金の残額 5,500枚
ご覧いただきありがとうございます。
次回は【特命 疫病対策】を投稿予定です。どうぞよろしくお願いいたします。
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