第九十七話(カイル歴507年:14歳)躍進 テイグーン二次改造計画①
年初の議論も終わり、テイグーン一帯の開発工事は急ピッチで進められて行った。
テイグーンの街については、既に昨年の秋から改修工事が進められており、ほぼほぼ第二次工事は完成、又は着工済みとなっている。
大きな概要は、以下の開発計画書通り。
<テイグーン町並み第二次改修工事計画書>
◯第一区画
・領主館分館前に迎賓館の建立(完成済)
・第二区との境界を城壁化、奥門(通称:貴門)設置
迎賓館は、合同最上位大会の為の突貫工事で、完成しており、あとは若干の追加と内装の充実程度だ。
第一区画と第二区画の間には、土壁の段差しか無かったが、この段差を城壁化した。
これで、以前のような盗賊の侵入は防げる。
迎賓館に来客がある際に、第一区画に侵入でも許したらとんでもない事になる。
今後の事も考えて、防備を強化した。
※第一区画概要図
農ーー農農ーー農堀壁----壁堀農ーー農農ーー農
|試験||試験||| 領主館 |||試験||試験|
|第①||第②||| 迎賓館 |||第③||第④|
農ーー農農ーー農|壁ー 門 ー壁|農ーー農農ーー農
堀---堀橋堀---堀
≪----城壁---- 門 ーーーー城壁----≫
◯第二区画
南街区
・騎士団宿舎、厩舎、武器庫新設(着工済)
・騎士団詰所新設(着工済)
・駐留兵宿舎移転(200名収容規模に縮小済)
北街区
・駐留兵詰所移転(完成済)
・駐留兵武器庫、厩舎移転(完成済)
境界部分
・第三区との境界を城壁化、中門(通称:兵門)設置
こちらも昨年の秋から既に建設を始めており、南街区の空き地には、辺境騎士団支部の500騎を収容できる、宿舎及び武器庫、厩舎を建設している。
合同最上位大会の際には、各来賓に随行する兵卒を収容するため、優先して建てた辺境騎士団の兵舎は一部が完成済で、数ヶ月後には全容が整う。
また騎士団詰所を新設し、移転した駐留兵詰所と道を挟んで設置した。
これにより、騎士団や駐留兵が常駐している前を通過しないと、奥の第一区画には進めない様になっている。
駐留兵宿舎は、最大200名の定員を予定しているが、現状はまだ余裕がある。
そして,第二区画と第三区画の間の段差も、同じく城壁化した。これにより、第一区画は何重もの城門に守られる事になる。
※第二区画概要図
練ーーーーーー練 武器庫↑ 駐留兵 騎------騎
| 練兵場 | 厩舎 ↑ 兵舎 | 辺境騎士団|
| 練兵場 | 駐留兵↑ 騎士団 |兵舎/武器庫|
練------練 詰所 ↑ 詰所 騎------騎
≪----城壁---- 門 ーーーー城壁----≫
◯第三区画
・南街区の放牧用空き地を賃貸住宅化(着工予定)
・北街区の放牧用空き地を分譲宅地化(着工予定)
・地下冷蔵倉庫を、商品取引所裏の倉庫に新設(済)
空き地を活用した放牧地の宅地化は、元々想定していたが、昨年秋より急激な人口流入で、住居用地の確保が必要になってきたためだ。
ただ、代替の放牧地は、現在街の外側(南出丸)に建設中で、そちらの目処が付き次第、移設予定だ。
人口が増えれば、それだけ家畜の需要も増えるため、まだまだ安定供給に程遠いのが悩みの種だ。
食肉の問題もあり、氷魔法士のキニアには活躍してもらう機会があった。
第三区画と第一区画にある倉庫の一部を改装、地下室に氷塊を積んだ冷蔵庫と冷凍庫を新たに設けた。
これにより食料、特に肉類の運用が非常に楽になり、一定期間保存が可能になったことが、大きな進歩といえる。
第三区画の定住用地は、現在1500〜2,000人規模の想定をしているが、放牧地の宅地化で少なくとも400人から500人程度が、新たに居住可能になる予定だ。
◯第四区画
北街区
・捕虜収容所設置 (最大500名収容:完成済)
・傭兵団屯所の配置変更(最大200名駐屯:完成済)
南街区
・人足用住居の増築 (寮:最大600名:増築中)
・人足用長屋の改築 (最大200戸規模:完成済)
・仮設型住居の改築 (最大200戸規模:増築中)
中央通り
・正門前にバザール(市)の設置
・第三区との境界の隔壁を強化、城壁化(完成済)
・前門(通称:街門)設置、第四区画から第三区画への道を一本に限定(完成済)
第四区画はこの一年で大きく変わった。
急激な人足の増加と、急遽、捕虜を受け入れたこと。
この対応で、暫定措置をとっていた。
現在、砦としての整備を進めている、北出丸(宿場町)の、改修が済めば、大部分の人足と捕虜はそちらに移動する予定だ。
収容所、人足用仮設住居、仮設住居は彼らの移動後、移住者などの臨時滞在施設、大量の宿泊者が出た際に、臨時の宿泊施設として使用する予定だ。
傭兵団はその大部分が辺境騎士団として、籍を移すが屯所の規模は変えない予定だ。
彼らの存在が、捕虜や人足で溢れる、第四区画の治安維持や綱紀の取り締まりに、一役買っているからだ。
昨年の侵攻でも、どこかの間者が紛れ込んでいたことなども考慮し、治安維持の観点からも、第四区画から第三区画への出入りには、若干の制限を設けた。
・隔壁を改築し城壁に強化
・移動には前門を介した中央通りに限定
・それに伴い、北通りと南通りは城壁で移動不可に
・前門にて、街に入る人間の審査を強化
・新参人足の第三区画への移動制限
第三区画への移動を制限した手前、日用品の調達や食事買い物など、不自由がない様に、正面入り口から中央通りに進む道の左右には、露天のバザール会場を設け、多くの市が立つように誘致を行った。
ここでは酒類も販売されており、屋台のようなものさえある。
第三区画に自由に入れるのは以下に限った。
・テイグーン一帯に住む定住者やその関係者
・既に取引のある商人
・エストール領の領民(射撃場の受付札を提示)
・ソリス家の兵士
・傭兵団の構成員
・自警団の構成員(期間労働者など)
・魔境の出入り許可を持った者(狩人など)
・ソリス家の来客
そして、簡単な審査の上入れるのは以下にした。
・任期を満了した人足(期間労働者)
・親方から許可証を発行された人足(符牒が必要)
・領民以外の鉱山関係者で許可証を持つ者
・住民の来客や店舗の商談相手
・街の宿の滞在者
親方の発行する許可証は、一定期間真面目に働き、所属する組の親方から、認められた者にだけ与えられる。通過の際は、許可証と、それに紐付けられた符牒を門番に伝える事になる。
なお、問題を起こせばもちろん許可証は取り上げられ、許可証を出した親方にも、累は及ぶ。
なお、今整備を進めている、北出丸(宿場町)は、この辺りの規制もなく、比較的自由にしていく予定だ。
※第四区画概要
第三区画方面
↑
≪----城壁---- 門 ーーーー城壁----≫
傭ー傭ーーー傭兵団 受付↑ 警備|仮設|人足長屋|
|練| 兵舎 | 詰所 所 ↑ 詰所|住居|人足長屋|
|兵|〇----〇 市 ↑ 市 商人|独身人足用|
傭ー傭〇-収容所--〇 市 ↑ 市 詰所|仮設住居群|
===========正門===========
テイグーンの街の整備は、この先半年後を目処に、一部を除き完了する予定となっている。
街の改装を進める中、幾つかの面白い変化があった。
他領からの期間労働者や人足は、親方から許可証を得るため、これを目標に懸命に働く者が多くなった。
そうすれば、街の飲食店や娼館も利用できるからだ。
人口や期間労働者の数も増え、これに対応するため、受付処や斡旋所、行政府、商品取引所、警備部隊などは大きく増員を行った。
警備部隊を除けば、既に各所で活躍している女性も多く、これらの職場は街の若い女性達の憧れの職場になりつつある。
【不落のテイグーン】
【女性が活躍できる街テイグーン】
この2つの噂話はエストール領全体に広がり、他の町ではまず見られない光景、移住を希望し、若い女性が一人でやって来る事や、期間労働者のキャラバンに同行して来ることなどもあった。
女性が移住しやすいよう、行政府には、単身女性移住者への配慮や優遇も依頼している。
開発途上で、どうしても男女構成比が歪になってしまうこと、辺境騎士団の創設でこの傾向は更に顕著になってしまう。
少しでも正常に近づける努力は、惜しまず継続していきたいと考えている。
ご覧いただきありがとうございます。
ブックマークやいいね、評価をいただいた皆さま、本当にありがとうございます。
凄く嬉しいです。毎回励みになります。
また誤字のご指摘もありがとうございます。
本来は個別にお礼したいところ、こちらでの御礼となり、失礼いたします。
これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
<追記>
10月1日より投稿を始め、遂に100投稿を超えるまでに至りました。
日頃の応援や評価いただいたお陰と感謝しています。
今後も感謝の気持ちを忘れずに、投稿頑張りますのでどうぞよろしくお願いします。
また感想やご指摘もありがとうございます。
お返事やお礼が追いついていませんが、全て目を通し、改善点など参考にさせていただいております。