最終話:そして彼らは幸せに暮らしましたとさ。
ξ˚⊿˚)ξ本日4話投稿でここは4話目です。
その年の秋、王太子の位がエリアス殿下からパーヴァリー殿下へと移る式典が執り行われました。
民には明かされませんでしたが、そこでエリアス殿下の王籍が剥奪されて男爵位が与えられ、イーナ嬢との結婚も密やかに行われました。
翌年の春、二人は辺境へと旅立ちます。
その夏、ヴァイナモⅢ世陛下は譲位し、パーヴァリー新陛下が即位されました。
その年の晩秋にはわたくしのもとに一袋の麦と粗末な小さい人参の束、綿に刺繍されたハンカチを王国の兵が届けてくれました。
王城にも同じものが届き、離宮の前王夫妻は涙したと言います。
さらに翌年には大聖堂の改修が終わり、その際に教皇猊下の口から救貧院でA&V社のミーナ23号を使用しての魔石作製事業について公表されます。
その頃には各国でも魔石の作製が始まっていましたが、わたくしたちの会社は既に世界でも最高の利益を上げ、押しも押されもせぬ企業へと成長していました。
ナマドリウスⅣ世は秋に教皇領に戻られ、その冬のことでした。元ペリクネン公によるA&V社のペリクネン侯爵領支店襲撃事件が起こったのは。
支店の視察に向かっていたレクシーとユルレミ侯爵が襲われます。元父はわたくしたちが魔石をほぼ専売していることに不満を持つ他家の貴族や商家を集めて、凶行に及んだとのこと。
まあ、残念なことにこれはあの断罪の日より予想通りなのです。
襲撃への備えはなされており、被害はごく僅かで撃退し捕縛。ユルレミ・ペリクネン侯により即座にその場で父であった人の処刑がなされました。
なぜわたくしがその場にいなかったかですか?
臨月だったのです。
レクシーが王都に戻ってすぐにわたくしは産気付き、子供を産みました。
レクシーの茶色い髪にわたくしの翠の瞳をした女の子でした。
わたくしとレクシーはその長女を筆頭に、二人の男の子と末の女の子、四人の子たちに囲まれて賑やかに、そして幸せな生涯を過ごしたのです。
………………
そして長い長い年月が経った。
教皇庁が正式に聖人と認定する中に、共に殉教した場合を除いて夫婦の聖人はほとんどいない。
だが夫婦の聖人は誰が思い浮かぶかと問われれば、誰もが聖ペルトラ夫妻の名を挙げるだろう。
フラスコを象徴に持つ技術者と発明の守護聖人、聖アレクシ・ペルトラ。
魔石の首飾りを象徴に持つ商業と救貧院の守護聖人、聖ヴィルヘルミーナ・ペルトラ。
そして愛と家庭を守護するという聖ペルトラ夫妻。
彼らの魔素結晶化技術は、彼らの死後に世界中で王制を打倒する嚆矢となったとも、戦争で多くの者の命を奪うことに繋がったとも言われる。
だがパトリカイネン王国もその次の王朝も滅び、王のいない国が興るほどの時が流れても。
彼らの発明品は使われ続けてそれを遥かに上回る人々の命を救い、暮らしを向上させた。
また、彼らの物語は人々に愛され続けたのだった。
Disowned Lady Vilhelmiina Will Be Happy Someday
The End.
ξ˚⊿˚)ξこれにて完結です。ご高覧ありがとうございました!
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それではまたいつかどこかの作品でお会いしましょう!






