7話
シェリと過ごすようになり、5ヶ月が経った。シェリは驚くほどの吸収力で、学ぶことをどんどん自分のものとしていった。今は同年代ぐらいの教育に追いつくよう、講師たちは急いでいるが、あと数ヶ月で完了するとのこと。そうすれば、少しはゆっくりできるだろうか。
学園にいる間もこうしてシェリのことばかり考えてしまうな。自分の口元が少し緩んでいることが何となくわかる。
「あの、殿下……」
「ん?ああ、何かな?」
気がつけば目の前に令嬢が3名ほど立っていた。公的な場ではこうして気軽に話しかけられることはないが、学校は身分に関係なくみんなが平等に生徒という場所だ。殿下と呼ばれていても、彼女たちも僕も同じ生徒である。
「今度学園で開催される交流会なのですが、殿下は参加されますか?」
そういえばもうそんな時期か。1年に2回開催される交流会。様々な年齢、身分の生徒がいる学園では定期的に学園全体で行事が行われる。交流会もその一つだ。学年が変わってすぐと、その間にもう一度。今回はそのもう一度にあたる。交流会はお茶会と舞踏会を合わせたようなもの。出ること自体強制ではないが、貴族の子は婚約者探しなんかも兼ねている。
「実は、公務があってね。僕は今回は参加しないんだ。みんなで楽しんできてね」
「そ、そうだったんですね」
公務……というのは嘘だ。その日はシェリのダンスレッスンをすることになっている。シェリは体を動かすことが好きなようで、簡単なステップも楽しそうに学んでいる。そのおかげか上達も早く、そのうちパートナー役をして欲しいと頼まれていたのだ。学生としてはやはり行事を優先すべきなんだろうが、今はシェリのために時間を使いたい。
シェリがある程度のやり取りができるようになってからのことだが、あの子は時々なにかにひどく怯える。眠っている時も悪夢を見ているのかうなされることがよくあった。ひどい時は飛び起きて、汗で体を濡らし、過呼吸になってしまう。そして混乱した瞳で僕やメアを見つめるのだ。
シェリが自分の気持ちや考えを理解できるようになったからこその変化なのだろうが、不安そうな彼女を見ていると時おりこちらも不安になってしまう。だからこそ、今はシェリと同じ時間を過ごすべきなのだろう。
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