第八話 盗賊
シキは今馬車と商人を背に盗賊の前に立っていた。
「おいおい、誰かと思えばただのガキじゃねぇか」
「お頭、どうします?」
そう訪ねてはいるものの一応と言った感じでその男はどうやって目の前の無力な存在を痛ぶろうかと考えていた。
「お前たちの好きにすればいい。ただ、何人かは馬車の方に来い、護衛の冒険者は殺したとはいえまだ中にいるかもしれない」
「へい」
お頭と呼ばれている男の方へ向かったもの達は子供を痛ぶる趣味はないのか直ぐに馬車に向かおうとする。
そんな時馬車から1人の小太りの男が顔を出しシキに向かって叫ぶ。
「君! ここは危ない直ぐに逃げるんだ! 私達の事はいいから!」
「そんな事を言われて逃がすとでも思ってるのか? あぁ、今から楽しみだ。お前たちをどう殺すか、殺してくれと頼んできても俺は殺してなんかんやらねぇ」
そんな盗賊の1人の言葉を聞いたシキに逃げるように言った男は目の中に絶望の色がうつろう。馬車の中に隠れている人達も小刻みに震えているのがシキには分かった。
「さて、丁度試したかったところなんだよ」
「あぁ? 何言ってやがんだてめぇ? 気でも狂ったか? 俺達が楽しむ前にやめてくれよな」
「安心しろ、お前たちにはこの杖の餌食になってもらうだけだ」
盗賊たちはどこからともなく現れた杖に動揺してしまう。
そしてシキはそんな盗賊達の様子を隙をだと判断して一番近くにいた盗賊を薙ぎ払う。
「がはっ」
シキが手加減していたこともあってか原型は留めていた。
骨は何本か折れているようだが。
そして盗賊たちの中で一番最初に我に返ったのはお頭と呼ばれていた男だ。
「お前ら落ち着け! 相手は一人だ! ただのガキじゃねぇ、殺す気でいくぞ!」
そんなお頭の言葉を聞き勝てると思ったのか10人程の盗賊がシキに向かって雄叫びを上げながらシキに向かってくる。
【おぉぉぉぉぉぉぉ】
シキは相手の攻撃を避け鋭い突きを放つ。
当然ながら相手はただの盗賊だ。
言ってみればただの寄せ集め、そんな連中がまともな連携をとれるはずも無く呆気なく気絶させられる。
最初は破滅の杖で盗賊を殺し、オークの時みたいになにかスキルの様なものを獲得出来るかを試したかったのだが近くに商人達がいることからやめておいた。
別に商人達に気を使った訳ではなく、この道を通っていたということは辺境、或いは辺境の前の街に行くのだろうと予想できる。
もし辺境に行くのなら、門番にシキは信頼出来る人物だと話して欲しかったからだ。
冒険者カードがあれば大丈夫だとは思うが念には念を入れておいて損は無い。
「さて、後はお前だけだがどうするんだ?」
「ひ、ひぃぃ」
そんなシキの言葉を聞いた盗賊の頭は蒼白な顔で四つん這いになりながらシキから逃げようとする。
「まてよ、仲間を置いて逃げる気か? いや、そもそも逃げられるとでも?」
そう男に声をかけ頭を軽くーーあくまでシキにとっての軽くだがーー殴り気絶させる。
すると馬車の中から最初シキに逃げるように言った小太りの男がシキの元まで走ってくる。
その顔にあるのは感謝、驚き、そして警戒といったところか。
シキは顔を見ることは出来ないが雰囲気で感じ取ることができた。
「あの、助けて下さりありがとうございます」
「気にしなくていい、それよりお前たちはどこに向かってるんだ?」
「私達は辺境の街アルダに向かっていました」
「そうか、ならお前たちを助けた礼として俺も連れて行ってくれ、その代わり護衛はする」
「......よろしいのですか?」
その男も商人だ。
護衛も殺され、商人だけで辺境の街に行けるとは思っていない。
だからあわよくばシキを護衛として雇いたいと思っていた。
ただ、まさか相手から申し込んでくれるとは思っていなかったのだ。
「あぁ、おれもアルダに行きたいんだ。それで? いいのか?」
「もちろんです」
「そうか、じゃあ、この盗賊たちはどうする? 一応生きてるぞ」
「倒したのは.......」
「自己紹介がまだだったな俺はシキ」
「いえいえ、私の方こそ遅れて申し訳ございません。私はロールと申します」
「よろしくな、ロール」
「はい、それでなんですが盗賊たちはどうしますか?」
「一般的にはどうするんだ?」
「犯罪奴隷として売り払いますね」
犯罪奴隷、そうロールが口にした瞬間傷は負ってるものの気絶していないもの達が反応したがシキはそれを無視する。
「縄かなにかはあるか? こいつらを縛っておいて欲しいんだが」
「それは構いませんがシキさんはどうするんですか?」
「俺はそのお頭とか呼ばれていた男にアジトでも聞いてくる」
「分かりました、では他の盗賊たちはお任せ下さい」
そう言いロールは馬車の中の仲間に事情を話に向かった。
そしてシキもお頭と呼ばれていた男の元まで行く。
お頭はまだ気絶しているようなので軽く蹴りを入れて無理やり起こす。
「げほっごほっ」
「起きたか?」
「お、お前は」
「お前たちのアジトを教えろ」
「そんな事言う訳ーー」
お頭と呼ばれていた男が言い切る前にシキは近くにあった木を破滅の杖で粉々にする。
「この木のようになるかアジトを言うかだ」
「......言ったら助けてくれるのか?」
「命は助けてやる」
「......ここを真っ直ぐ行ったところに洞窟がある、それが俺たちのアジトだ」
「ちなみに留守番は何人いる?」
「いない、俺たちで全員だ」
「嘘だった場合は分かるよな?」
そう言い笑みを浮かべるシキ、その笑みをお頭はどう感じたのかは分からないがコクコクと何度も頷くのだった。
そんな様子を確認したシキはお頭を気絶させロールに一声かけてアジトへ向かう。
「ん? あれか......確かに人の気配はないな」
そう呟き洞窟の中に入っていくシキ。
そしてそこには銀貨や金貨が十数枚入っている箱を確認する。
その近くにも武器が適当に入っている樽だったりと色々あるが取り敢えずアイテムボックスに全てしまうシキ。
「よし、こんなもんか......というかロールは俺が目を閉じていることについて何も触れてこなかったな......まぁ、護衛も死んでるんだし俺の気分を害したくないってとこか?」
シキの移動スピードを考えると往復五分でロールの所まで帰ってくる。
ただ、ロールはシキが手ぶらなこともあり、なにか自分たちに伝え忘れたことがあるのかと思い尋ねる。
「シキさん、どうしましたか?」
「いや、もうアジトには行ってきた、そっちの準備が出来次第出発しよう」
「え? もうですか?」
「あぁ、案外近いとこにあったんだよ」
「しかしシキさんは何も持っていないように見えますが......なんなら私たちの馬車で盗賊の持っていたお宝を運ぶのを手伝いましょうか?」
「いや、気持ちはありがたいが大丈夫だ」
そんなシキの様子にロールは不思議そうにしていたが、これ以上聞いても無駄だろうと判断し馬車を出すのだった。