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第六話 試験

「いらっしゃい」

「取り敢えず1本くれ」

「毎度、銀河一枚だ」

「高くないか?」

「食べて見ればわかる」


 そう言われれば気になってしまい串焼きを口に運ぶ。


「確かに美味いな」

「だろ?」

「もう後5本くれ、それと宿の場所を教えて欲しい」

「宿はあっちへ......あ〜そうだな、この道を真っ直ぐ進んで行って人が多勢いる所だ」

「人が多勢って宿を取れるのか?」

「その辺は安心しろ、多勢って行っても全員が宿の客って訳じゃなくて宿の前にある飯屋が安くて美味いんだよ、それと焼けたぞ」

「あぁ、ありがとう」

「気をつけろよ〜」


 串焼きを持ちながら人目のないところまで移動し1本を残してアイテムボックスに仕舞う。

 いつかはバレることだが少なくともこの街ではバレたくなかった。

 どうせ面倒事になるのだから出来れば1度で済ませたいのだ。




「何事もなく着いたな」


 シキの見た目からしてまた絡まれるだろうと思っていたのだがいい意味で予想が外れてしまった。


「まぁ、何も無いに越したことはないよな」


 そして後ろから漂ってくるいい匂いに釣られないようにしながら宿に入る。


「いらっしゃい、ひとりかい?」

「あぁ、1日頼む、いくらだ?」

「銅貨5枚だよ」


 ポケットに手を入れアイテムボックスから銅貨を5枚取り出す。

 そのついでに街に着く前に出しておいた金貨4枚をアイテムボックスに仕舞う。

 そして銅貨を受付人の前に置く。


「1番奥の部屋だよ」

「分かった」


 シキは階段を上がり1番奥の部屋に入るとまずは周りの気配を確認する。

 そして部屋に人がいないのを確認するとベッドに入り枕に顔を埋もれさせ布団を頭まで被り眠りにつくのだった。




「ん......んー......人は居ないな」


 いくら邪眼使いとはいえ眠りから目覚める時に目を開かないなんて真似は出来ない。

 だからこそあんな寝方をしているのだから。

 そしてシキはアイテムボックスから昨日の串焼きを取り出し口に運ぶ。


「やっぱり美味いな」


 そして食べ終わると部屋を出ていき階段を降りる。


「昨日はよく眠れたかい?」

「あぁ、おかげさまでな」

「そうかい」


 


 シキはギルドの前にいた。


「よし、さっさと終わらせてくるか」


 ギルドの中に入ると昨日の事が広がっているのか疑惑の視線を向けてくる人が多い。


(ローブを買うのもありだな)


 目を閉じながら歩くというのはそれだけで目立つ。

 ただ、ローブを買いフードを被っていれば目は見えない。

 フードを下ろしているということから逆に目立つ可能性もあるが今よりはマシだろうと判断してのことだ。

 そんな事を考えながら受付嬢の前に行く。


「昨日言ってた試験を受けに来たんだが」

「かしこまりました。 こちらへどうぞ」

 

 その受付嬢が他の受付嬢に今の仕事を任せ歩いていく。

 そして後ろで色々と言われているがそれを無視しながらついて行くシキ。

 そして訓練場に着く。


「では、後はよろしくお願いします」


 そう頭を下げてその場を去る受付嬢。


「また会ったな」

「お前が試験管か? ガルル」


 そこに居たのは昨日会ったガルル。

 そして昨日シキに絡んできたやつは居ない。


「あぁ、俺が試験管だ。 Cランク冒険者としてお前を見極めさせてもらう」

「Cランク冒険者だったのか」


 もしシキが実践慣れしていればガルルに実力があることに気づいていたんだろうが生憎とシキはガルルが昨日のシキに絡んできたやつよりは強いということしか分かっていなかった。


「まぁな、早速だが俺と戦って貰う」

「それが試験か?」

「そうだ、だが安心しろ俺からは攻撃しない」

「俺の勝利条件は?」

「俺にDランク冒険者だと認めさせることだ。 制限時間は15分、武器はそっちに刃を落としたやつがあるから使ってくれ」

「いや、武器は大丈夫だ」

「だったらいつでもいい、そこにある魔道具にそっちの魔石を置けばスタートだ」


 シキは魔道具に魔石を置いた瞬間に風の刃を作り出す。

 その際ガルルが目を見開いていたがそれを気にした様子もなくシキは風の刃をガルルに向かって飛ばしそれに遅れてシキも走り出す。

 ガルルは直ぐに我に返り風の刃に対処する。

 当然ガルルはシキが自分に向かって走ってきているのに気づいてはいたがそれよりも風の刃を優先した。

 この辺はシキが本気で走っていないということも関係しているのだろうが1番大きいのはシキが子供にしか見えないことだろう。

 そしてシキはガルルに近づいていき一気に速度を上げガルルに衝突する。

 そしてガルルは盛大に吹き飛ばされる。


「ごふっ.......ごほっ......ごほっ」


 まさか自分があんな子供に吹き飛ばされるとは夢にも思わなかったのだろう。

 何が起きたのかと周りを確認し、シキが追撃をかけようとしているのに気がつくと直ぐに叫ぶ。


「ま、まて! お前の勝ちだ、だからまて!」

 

 今シキとガルルが試験をしている場所は訓練場なのだ。

 当然ながら人もいる。

 ただ、まさかガルルが吹き飛ばされ、ガルルは攻撃をしないと言っていたとはいえ、こんなにあっさり負けるとは野次馬達も思わなかったのだろう。

 ただ、シキは周りの空気に気づいているのか居ないのかガルルに近づいていき尋ねる。


「これで俺はDランク冒険者ってことでいいのか?」

「あぁ、それでいい、ただ、最初のはなんだ?! あの風の刃はなんだ?!」

「ただの初級魔法だろ?」

「そうじゃない! 俺が聞いてるのはそういうことじゃない」

「じゃあ何を聞いてるんだよ」

「なんで詠唱もなしにあんなのが打てるんだ」

「なんでって、初級魔法だからだろ」

「......普通はそもそも魔法発動には杖か何かが必要なんだよ、なんでそれもなしに魔法がつかえるんだ」

「だから初級魔法だからだろ?」

「......はぁ、もういい、お前が普通じゃないのが分かった」


 シキとしては自分が普通じゃないのは理解している。

 ただ、自分の体の事じゃなく魔法について言われるのは理解が出来なかった。


「普通は初級魔法であっても魔法発動体がなければ使えないし、ましてや詠唱もなしに使うといったことは無理なんだ分かったな?」

「......まじ?」

「あぁ、いや、昔はそんなことも出来たらしいが今は無理なはずだったんだがな」


 シキにとっては初級魔法に詠唱が要らないなんてのは当たり前だし、魔法発動体がいらないというのも常識だ。

 

(なんでだ?)


 300年前に邪眼使いを殺した。

 殺したまでは良かった。

 ただ、邪眼使いたちはシキを、仲間を未来へ送り出す為に命を使った。

 少しでも仲間が未来で楽に過ごせるようにと。

 そして自分たちを殺したことを後悔するようにと祈りながら。

 全ての人種の初級魔法を詠唱なしには使えないようにと。

 初級魔法というのは実践には向かない。 それは相手も初級魔法を使えるから簡単に相殺出来てしまうのだ。

 ただ、もし相手が初級魔法を使えなければ確実に初級魔法を使える側の方が有利なのは間違いなかった。

 そして邪眼使いたちは国に大打撃を与えながら散っていったのだった。

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