人前でいきなり婚約破棄を告げられた優しい第一王女様は後に聖女と呼ばれ婚約者の王子と腹違いの妹に見切りをつける〜修道院送りは嫌だそんな事言われても縛首よりはマシでしょう?私は二人の後始末で手一杯です〜
新作短編小説になります。
カクヨム様にて先行掲載させて頂いております。
先ずは小説をタップしていただいて、ありがとうございます。拙い作品では御座いますがよろしくお願いします。
よろしければ新作の現代日本を舞台にした超能力モノのボーイ・ミーツ・ガール作品の【俺の超能力がアイテムボックスだった件。夢のラノベの主人公にはどうやら俺は成れないようです……だけど機転を効かせてアイテムボックスで運び屋をする。】も何卒、何卒よろしくお願いしますm(_ _)m
冴えない大学生3回生の主人公と、旧家の令嬢で父は外交官のギャル系ヒロインの超能力バディモノです。ホント自分的には、妥協したけど会心の出来なんでよろしくお願いします。
「エリザベス・スコット・オースティン! 貴殿との婚約を関係を今この時をもって破棄するッ!! 今まで婚約関係を結んでいた事が恥ずかしいぐらいだ……」
香水の酷く甘ったるい、ホワイトムスクの様な強い強いむせ返る甘い香りを振りまいて、目の前で居丈高にそう宣った“元”婚約者のサザーランド王国第二王子ベン・アーサー・クラークは、きっぱりと言い切った。
ベン王子は、王立学園の中庭の、茶会などを楽しむ女子達の憩いの空間には不釣り合いな同年代の男性を、10人ほどを引き連れて強引に押し寄せてきていた。
私は自分自身に何もやましい事はないのだからと自分に言い聞かせ、動揺した態度を見せないように心掛けて、勉強会のために入れていた熱い紅茶を口に含み口内を湿らせた。
周りの取り巻きを見ても誰一人として、動揺している者はいない事からも、相手をする王子たちにとっては、当たり前の要求を突き付けてくる腹積りなのだ。
そしてベン王子の傍らには、不釣り合いな義妹のヘファイスティアが、その背に隠れるように佇んでいて、私のことをジッと睨み付けて来た。
「そうですか……一応理由をお聞かせいただいても? 国家間の問題ですから私の立場では、今この場でお返事をお返しする事は出来ません。今日の所は、お引き取り頂いてもよろしいでしょうか?」
理由を聞いたのは腹を痛めて産んだ実の子でもないのに、私を憐れんでどこに嫁に出しても恥ずかしくないようにと、王族として育ててくれた夫に先立たれ領地も役職も持たない法衣公爵である伯母に謝罪と、今回の件について弁明をするための事であった。
伯母はお節介だが人の話は聞かず、女人に政治的な知識は不要と言う古い考え方を持つ女性だからだ。
そして今ならまだ悪い冗談と言う事に出来るので、本国から連れて来たお友達と相談して、「冷静になってください」との二つの意味を込めて返事をした。
ベン王子には私の意図は、全く通じなかったようだ。それも当然と言っていいだろう……先程王子の背中に何故か隠れている義母の実の娘である第二王女ヘファイスティアの方を見ても、全く動じて居ないので、あの娘は既に知っていたのであろう。
まあ、理由は隣にいる妹だという事ぐらい想像がつきますが……。
ホントに馬鹿な娘……
「理由? そんなものは決まっているだろう……エリザベスが自分より立場の弱い学園の女子を虐めているのは、知っているんだからな!」
「虐めているとは? どういう事でしょうか?」
どうせ。噓つきのヘファイスティアにチクられた内容を、鵜呑みにしただけでしょうに……
まぁ、あのぶりっ子は男子に好かれて、女子に嫌われる典型的なタイプ……だから私の婚約者に泣きついたのであろう。
「エリザベス君の妹であるヘファイスティアから全て聴いた……俺は非常に悲しいぞ!」
「はぁ……」
思わずそんな言葉が口を突いて出た。
「『はぁ』とは何ですか!? 『はぁ』とは!!」
とヒステリックに妹のヘファイスティアは騒ぎ立てた。
何を言っているのだろうこの人達は……所詮入り婿としてこの国に来た弱小国家の第二王子程度が、この国を継承する私の夫となり本国の意向を反映するために……私に取り入るぐらいはしてもいいと思いますが……
「エリザベスは夜な夜な貴族令嬢を集め、夕食会を月に数度開くらしいな……その度こちらの令嬢達に嫌味を言っていたと風のうわさで聞いたのでな……俺は疑問に思って彼女たちに確認したがエリザベス……君に怯え誰も何も言わなかった! ここにいる俺の友人たちは、お前のその蛮行を知っているぞ!」
いつの間にか集まっていた聴衆からどよめきの声が上がった。
私から言えば、何を言っているのだろう? という一言に尽きる。
しかも最悪なのは、公衆の面前で婚約破棄を迫った事だ。そのため野次馬と化した貴族の子弟達で溢れかえっている。これでは、サザーランド王国だけではなく我が王国もいい笑い者である。王国の跡継ぎである王子がその役目を忘れ、一時の感情に身を任せて、と周りは呆れ返るだろう。
婚姻関係というのは最も信頼のおける古代から続く外交手段であるからだ。それを理解していないわけではないだろう……。
お願い誰かこの馬鹿を止めて恥の上塗りよぉぉぉおおおおおおッ!!
しかし、私の魂の叫びは誰にも届く事はなかった……
ベン王子の乳兄弟は、何してるんですか!
乳兄弟とは、高貴な身分の女性は自分の乳を殆ど与えずに、同時期に妊娠した貴族の妻等を雇い乳児の世話と教育を任せる代わりに、その子供を将来重用する家臣として、友として扱う事を約束された存在であり、本来は言いずらい事を進言するのが主な役割となる。その乳兄弟のベンジャミンは、この場にいなかった。
「蛮行とは?」
「惚けるな……お前が夕食会の度に散々ネチネチと嫌味を言ってるという事は知っている。下の者を嘲笑する……それを蛮行と言わずに何という? そんな女とは一緒になれない!」
「そうですか……」
私がそう言い終えた瞬間。王子がニヤリと笑った。
「代わりに……ヘファイスティア第二王女と婚約する!」
その言葉に、私を含めた王子の取り巻き達以外が絶句する。
本来なら正式に婚約を解消した瞬間ベン王子は国外退去となり、この国の貴族との婚姻関係すら難しくなる。しかしソレを有ろうことか、元婚約者の妹との婚約を宣言して見せた。
その無謀さに絶句したのだ。
「……故に俺はこの国の王となりエリザベス。君の罪を断罪する!」
反逆罪に国家転覆罪、王族批判と次々と大罪を重ねていく弱小隣国の第二王子。
「はぁ……ベン王子幾ら私の妹と肉体関係にあるからと言って、言って良い事と悪い事があります」
「なッ!」
王子はまさかこの場で言い返されると思っていなかったのか……口をあんぐりと開けただらしのない表情を浮かべた。
それくらいの事まさか私が知らないとでも?
「お、お姉様い、言いがかりは見苦しいですわよ? 確かにこの通り私は、ベン王子と愛し合っていますわ……お姉様との婚約を解消したいというぐらいには……しかし苛めはよくありませんよ? 王族たるもの常に気品を持った態度で……」
思わずため息がこぼれた。
「お、お姉様。溜息だなんてはしたないですわよ」
ここぞとばかりに嫌味を言ってきた妹に対して、姑かと言いたくなったがそこは流すことにした。
「ため息も付きたくなります。ヘファイスティア貴方の婚約者である公爵にはもう話をしたの?」
「そ、それは……」
王家の次女の嫁ぎ先となれば、有力な領主貴族や法衣貴族であることは間違いがない。その家にも王家にも泥を塗り付けたのだ。最悪の場合内戦になりかねない。教会で余生を過ごす程度の処置で済むとは思えないが……
「では貴方は、国法で定められる刑罰は縛り首ね……確かに家庭を持った貴族の男女が不倫や他に、愛人を作るのは珍しくないわ……望んだものではないもの……でもね最低限の貴族としての仕事はしてるのよ? 子供を作って次の世代につなげるそれすらしてない貴方が、他人のそれも肉親の婚約者を寝取った挙句の果てに王家に、国家に恥を塗り付けた……温厚なお父様も黙っていないと思うわよ?」
「……」
「蛮族風情が……」
ベン王子はポロっとそんな言葉を口走った。
その言葉は私にとって、到底許容できるものでなかった。
「今なんとおっしゃいましたか?」
「……」
「今なんと言ったか言え! と言っているんです!」
私はありったけの怒気を込め、ドスをきかせた声音でベンに尋ねた。
「貴方の国は長年海賊問題に気を揉んでいるそうですね……」
「それがどうかしましたの?」と、頓珍漢な事を言う愚妹を無視して話を進める。
「……この婚姻は、王子が生まれないこの国と貴方の国サザーランド王国が婚姻を結ぶ事によって、貴国は北海の覇王からの海賊行為を外戚となる事で軽減でき、我が国は大きな譲歩をすることなく国を存続できる……そういう取り決めでしたが……」
「それがどうした? それはこちらのヘファイスティアとて同じことであろう?」
「違うわよね? ヘファイスティア?」
「……」
「何とか言ってくれ……」
「私と姉様は母が違うの……」
「そ、そんな……君は俺をだましていたのか?」
「ち、違うの……」
狼狽する彼女らを尻目に、私は名乗りあげる。
「私、エリザベス・スコット・オースティンのお母様こそ!! 北海の覇王ウェルキンの妹アデライト! ヴィランド覇王国王位継承権弟6位にして、ブルクト国の継承権第1位の存在こそがこの私エリザベス・スコット・ギュンター・オースティンです。あなた方サザーランド王国が求めているのは、蛮族の血……半純血の私ですが、半島の蛮族に蛮族と言われるのは高貴な人として腹が立つ……今回の蛮行は正式にお父様に抗議させていただきますし、国使を通じサザーランド、ヴィランド覇王国に通達させていただきます」
「そ、そんな……」
「貴方は私と結婚すれば、自分の国を持てると思い増長したのでしょうが……この国の王は私です。精々王配として権威がある程度。まぁ並みの貴族や大臣よりは力があるがソコで満足できない時点で貴方は失格だ。それに何より私が虐めているなどという妄言を何の裏付けも取らず、公衆の面前でそれを吹聴するそんな腹芸の出来ない貴族などいりません!」
「虐めていたことを追求した腹いせか!?」
王子は、激昂し獣の様に吠えた。
「エリザベス様このような方はほおっておきましょう」
そばに居てくれた乳姉妹で、友人のキャサリン・フォン・ローレンツが提案してくれた。
「そうね」
「エリザベス様、わたくしもご一緒させていただきますわ」
「私も」
「お待ち下さい私も共に参りますわ」
「エリザベス様のいらっしゃらない、勉強会など意味がありませんもの……」
「全く持って同感ですわ」
「貴方達少しは、自分で本を読んだりする努力をしなさいと……」
「いいでは有りませんか」
わらわらと優雅に駆けつけてきたのは、全てエリザベスの友人達で、エリザベスの前には、十人程の貴族令嬢がズラリと列を成していた。
「皆様……」
私は、感激のあまり二の句が続かなかった。
それを見て友人達は私を気遣うような、言葉を投げかけてくれた。
「そうですわ、この様な野蛮な殿方達にエリザベス様が襲われるかもしれません……だからエリザベス様をお一人で帰すわけがないじゃありませんか!! 皆様護衛の方々を招集なさい。絶対にエリザベス様をお守りするわよ!」
「「「「「「「「「はいッ!!」」」」」」」」」」
「なっ、何故虐められていた者たちが君の味方をするッ!!」
すると王子が自分の旗色が悪くなった為か怒鳴り散らして、空気を変えようと抵抗した。
「わたくし達は全員エリザベス様に虐められてなどいません。淑女としてのマナーや礼儀作法を習っていたのです」
「な、何だと!?」
「元々平民である新興貴族や平民と大きく変わらない生活を送っている私達のような無役の法衣貴族、それに地方の騎士爵の子弟にとっては礼儀作法を教えてくださる教師を雇う事すら困難……勿論学園でも教えて頂けますが、時間はわずかばかり……そんな中で、無償で王家の礼儀作法を教えてくださるエリザベス様は、とてもありがたい存在ですのよ」
「そうですわ」
「ほんとに神様みたいな存在ですわ」
「えぇホントに」
「聖人ですわ」
「それを言うなら聖女ですわよ」
「そうですわね」
と口々に褒めてくれる。
全く照れくさいモノですわね……人から褒められるというものは……
「という事ですのでベン第二王子……私たちは失礼させていただきますわ。ではごきげんよう」
………
……
…
学友を王家の馬車に乗せた私たちは、王宮へ向かっていた。王宮とは簡単に言えば、官庁で役人や貴族が出入りしており、城とは言ってもその面積の多くが公の場であり、国政を行う役所という面が強く、王族の私室などはその中でもごく一部にしか過ぎず、後宮や離宮のみが王家の私室と言っていい空間だ。
王城の最奥部、王の私室へ私は友人を引き連れて後宮の手前まで来ていた。
「陛下お話がございます」
「エリザベスに……学園の生徒か……友人を引き連れ城へ登城するのは構わぬが……離宮へは入ってはならぬぞ……」
「……いえ案内をしていたわけではありません。実は……」
事情を詳しく話すと、父王は膝から崩れ落ち豪華な真っ赤なカーペット上に膝をついた。
「嗚呼、神々よ!!」
「お父様……起きてしまったことはどうしようもありません……対策を早く考えねば……」
「そ、そうだな……ベン王子との婚約は解消し即時帰国して頂く、ヘファイスティアは……」
これ以上は国政に関わる問題だ。一貴族それも子爵以下の貴族に聞かせていい話ではない。
「申し訳ないのだけれど……」
私が言葉に出す前に。
「皆様別室でお待ちしましょう。いいですわね?」と、初期の勉強会から居てくれる娘が提案してくれた。
「えぇ」と皆同意してくれて別室で待ってくれることになった。
「教会で神に祈る生活をするしかないでしょう……」
自分の娘が未婚のまま神に祈る……修道女としての生活を強いるのはつらいものがあるのだろう。
「そして、覇王国や周辺諸国にも通達の使者を遣わしましょう」
「……それしかないな」
「そして愚妹の婚約者である公爵への謝罪と……」
「……そうであるな戦に備えた準備をしなければならないな……」
「えぇ公爵の配下の寄り子や縁者に反乱を起こされると不味いですから……サザーランド王国と公爵両者を相手できるように、戦支度を済ませた方がいいかと特に食料は、他国が買い始めると高騰しますから冬備えとでも言って徴収・買上げればいいでしょう」
「そうであるな……次の婿候補であるがどうする? 都合のよい男はほぼいないが……」
「問題ありませんよサザーランド王国を平定すれば自ずと、縁談は舞い込んでくるでしょうから……」
私は皆を送り届けてもらうとこれからの未来を憂いながら、赤い赤い血の様に真っ赤な赤いワインを薄く伸ばした。透明感のある高級なグラスに注いだワイン越しに月を見て、私はワインを一口口に含んだ。
少しの渋みはある物の深みのある味わいであり、少しのアルコール感はある物の甘味も強く飲みやすい。
私は少し物悲しいモノの幸せを感じながら赤いワインを飲みほし、私は最良の選択を続けてきたのだと言い聞かせるように反芻して、これから私の否……私たちのせいで多くの血が流れることになる事を憂いながら、コレからは王としての器になる覚悟を決めると共に、清濁併せ呑む覚悟でワインを傾けた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
よろしければブックマークの登録と高評価をお願いしますm(_ _)m。
そのひと手間が、作者の活力になりますので……つまらなければ☆☆☆☆☆を一つ押して★☆☆☆☆に面白ければ☆☆☆☆☆を全て押して★★★★★にしていただければ幸いです。
よろしければこちらの作品も如何でしょうか? 現代日本を舞台にした超能力モノのボーイ・ミーツ・ガール作品でタイトルは、【俺の超能力がアイテムボックスだった件。夢のラノベの主人公にはどうやら俺は慣れないようです……だけど機転を効かせてアイテムボックスで無双する。】です。
あらすじ
城南大学の3回生高槙雄介は、とある能力を持っていた。数年前、少年誌の主人公の必殺技を部屋で、一人叫んでいた時に覚醒してしまった。空間を操作して、その中に無生物を収容する事ができる亜空間を創り出す能力【アイテムボックス】に目覚めていた。
一時は歓喜の声を上げたが、ユウスケが望んでいたのは、00年代のボイーミーツガールであった。釘宮病に花澤病数多の症状を持つ彼にとっては、それは耐え難いことだった。
そんな時法学部2回生で大学でも一番カワイイと専らの噂される。星河彩華に声をかけられ、あれよあれよと言うままに、政府の特務機関【神儀院】の外部協力員となってしまい世界有数の運び屋として名を馳せていたそんなユウスケの日常の一幕の話……で少年誌の読み切りや一昔前のなろうのクライマックスだけ書いてどう? 読みたい? と言った感じの短編ですよろしければお願いしますm(_ _)m
まだなろうのアカウントを持っていない方は、この機会にアカウントの作成をしては如何でしょうか?
Twitterをやっていない作者様との交流や、好きな作品に評価やレビューがかけて、なろうのサイトを開けば更新作品を自動で教えてくれたり、栞機能でどこまで読んだかわからなくなる事もありません。約5分程度で作れるので、この機会にいかがでしょうか? 例えばアニメ化作品のReゼ○から始まる異世界生活などの大長編を読む際には、必須機能だと思います。