第四話 ジャガ村のおもてなし♡
「ふあぁ、よく寝たぁ」
いつの間にか熟睡していた佑都は、朝日を浴びて目を覚ます。そして両腕をぐっと上へ伸ばし、軽くあくびをすると、辺りを見回す。
そこはいつもとは違う場所だった。
「どこだここ!?」
いつもの服や漫画が散らかっている自分の部屋とはまるで違う。まるでキャンプ場にあるコテージのように、丸太を積み重ねて作られた小さな部屋にいる。
佑都は慌ててベッドから降りると、恐る恐る部屋の扉を開ける。するとそこには、少し広めのリビングがあった。
「あら、起きたのね」
リビングに一体化したキッチンで、二十代半ばくらいの女性がエプロンを着て料理を作っていた。
「あの、ここは一体?」
「ここはジャガ村の宿屋よ。って言っても部屋は一つしかないけどね。まずはそこのテーブルに座って。もうすぐ朝ご飯できるから」
佑都は女性の指示通り、オドオドしながら目の前にあるテーブルのイスに座る。
――ジャガ村ってどこの村だろう、初めて聞いたな。
困惑する佑都をよそ目に、女性は作り立ての料理を彼に振る舞う。
「お待たせしました。こちら揚げたてのフライドポテトとハッシュドポテト、それからマッシュポテトにジャガイモのポタージュね。それとジャガイモステーキに、ジャガイモのお漬け物。飲み物はジャガイモの葉っぱを発酵させて作ったジャガイモティーを飲んでね。最後にデザートのジャガイモアイスがあるわ」
「お姉さんはジャガイモに家族でも殺されたんですか?」
突然振る舞われたジャガイモのフルコースを、呆れ顔で見つめる佑都だったが、お腹が空いていた事もあり、ありがたく頂く。
「あら、いい食べっぷりね。ご飯を食べたらゆっくりお話ししましょうか」
「あ、はい」
佑都は空腹と困惑の間で葛藤しながらも、何とか無理してジャガイモのフルコースを平らげる。
「はい、最後にジャガイモアイス」
「う、吐きそう……」
「吐いたら殺すわよ」
「えっ!?」
大量の脂汗を流しながらもジャガイモアイスも完食した佑都は、目覚めて早々に体力の限界を迎えていた。
しかしそんな彼を尻目に、宿屋の女性はある提案をする。
「少し休んだら、ンダ村長のところへ行きましょうか。この村のみんなも、あなたに色々聞きたい事があるそうなの」
――聞きたい事?
佑都は三十分ほど部屋で休むと、女性に連れられて宿屋を出る。そしてすれ違う村人達の視線に気まずさを感じながらも、ゆっくりと村長の家へ向かう。
しかし道すがら、佑都達の前に一人の少女が現れる。
「見つけた!」
少女は黒いロングパーカーを身につけ、頭には魔女が被るような三角帽子を乗せている。そして佑都の顔を見ると、彼を指差し、まくし立てる。
「おい男、お前がミミ様と入れ替わりでやってきたっていう人間だな!? ミミ様はどうした!?」
初対面の少女にいきなり怒鳴られて、困惑する佑都。しかし少女は忌憚なく佑都を責め立てる。
「黙ってるって事は、後ろめたい事があるわけだな!?」
「いや、ちょっと待って! 俺もミミがどうなったのかは知らないんだ! 今、このお姉さんに連れられて村長の家に向かってるんだけど、そこで何かが分かればと思って――」
「つまりミミ様を守れなかったという訳か!!」
少女は怒りをあらわにし、全身に大量のエネルギーを湧かせる。
「ちなみにあのエネルギーは彼女の魔力ね。あの子の名前はモモちゃん、天才魔法使いのミミちゃんの後輩にあたるの。今は大好きなミミちゃんが行方知らずという事で、ちょっと機嫌が悪いみたいね」
いきなり宿屋のお姉さんが目の前の少女について解説を入れる。
「いや、説明してる場合じゃないでしょ! それに機嫌が悪いのは、ちょっとじゃないと思います!」
佑都がツッコミを入れたところで、周囲に大量の火の玉が発生する。
「燃えクズになれ!! 虎嘯火生!!」
「ギャアァァァ!!」
モモが叫ぶと同時に、周囲の火の玉は一斉に佑都を狙って襲いかかる。佑都は慌てて走り出し、その場から離れる。しかし火の玉の群れは逃げる佑都を追尾する。
「おい逃げるな! 追撃の、光芒一風!」
今度は佑都の眼前から台風並みの向い風が吹く。全力で走っていた佑都だが、踏ん張っていないと後ろへと吹き飛ばされそうになる。
そして足を止めた佑都のもとへ、先程の火の玉の群れが一斉に突っ込む。
――あの女、本気で俺を殺す気かよ!!
『呼べ』
突如、佑都の頭の中に声が響く。
『私ヲ呼ベ。呼ベバ、オ前ヲ助ケニイク』
――この声は、あの剣か! えっと、確か英雄ストローの……。
『英雄トロスガ使ッテイタ剣ダガ。私ニハ〝グライゲン〟トイウ名ガアル』
――グライゲン?
『ソウダ。生キ延ビタケレバ、我ガ名ヲ呼ベ』
「あぁもう、何だかよく分かんないけど……来い、グライゲン!!」
佑都が叫ぶと同時に、彼の身に降り注いだ火の玉は激しく爆発し、周囲には黒い煙が立ち込める。
そして煙は一振りの斬撃によって吹き飛ばされ、中からは剣を握りしめた佑都が現れる。
「ふぅ、ドキドキした……」
伝説の剣〝グライゲン〟を手にした佑都は、剣の意志によって襲い来る魔法を全て斬り払った。そして目の前で驚きの表情を見せるモモへと剣の鋒を向ける。
「グライゲンがいれば俺は負ける気はしねぇ。まだやるか? お?」
急に上から目線でモモを見下す佑都。しかし煽り耐性のないモモはつい煽りに乗ってしまう。
「ザコの癖して馬鹿にしやがって……。そのまま止まれ、時間破壊」
油断したところに時間停止の魔法をかけられてしまった佑都は、その場で固まる。しかし思考はいつものように行える。
――や、やべぇ、舐め過ぎたァァァ!
「このままぶっ殺してやる。出て来い、破撃龍」
モモが呼ぶと、上空より現れた巨大な龍がゆっくりと地上へ迫り、佑都を睨み付ける。
「いやぁ、これ……俺みたいな一般人に向けていいもんじゃないでしょこれ」
固まったまま大量の汗を流す佑都。一方で勝ちを確信し、余裕の表情を見せるモモ。
「光栄に思え、派手に殺してやるよ」
モモの殺意が牙を剥く。