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のりかえ世界のクロスクライシス  作者: こみってる。
3/6

第三話 黒貂之手(こくちょうのて)

 戦いの最中、突然現れた巨大な黒い手に飲み込まれてしまった佑都ゆうとは、知らぬ間に謎の祭壇さいだんに寝かされ、その周りには九人の老人達が取り囲んでいた。


「いやぁ、マズいのう。どれくらいマズいかと言うと、ばあさんが作る肉ジャガくらいマズいのう」


「そうかぁ、それはマズいのう」


 老人達は目の前に横たわる佑都ゆうとの体を眺めながら、困惑の表情を浮かべている。


「地球なる、未知の惑星へと迷い込んだミミを連れ戻す為に〝黒貂之手こくちょうのて〟を発動したのじゃが、まさか地球の人間を連れて来てしまうとはのう」


 黒貂之手こくちょうのてとは、指定したターゲットを暗黒の手で強制的に捕獲し、更に強制的に自身の元へとたぐり寄せる魔法である。


 しかしその強制力ゆえに、かなりの量の魔力を消費してしまう。よって老人たちは、九人分の魔力を集めて、この魔法を発動した。


「そもそも黒貂之手こくちょうのてには、〝最も魔力を持つ者〟を連れ戻すように命じたはずじゃ。なぜ地球の民が連れて来られたんじゃ?」


「それは恐らく、この男が抱えておる剣の魔力に反応したのじゃろう」


 老人の一人が、佑都が抱きかかえている剣に触れようとするが、別の老人があわてて止める。


「よせぃ、何が起こるかわからんぞ!」


 数秒のあいだ沈黙が続き、わずかな緊張感が生まれる。


「しかし収穫もあるぞ。わしらの世界で発動した魔法が、地球なる他の惑星へと干渉かんしょうできたのじゃ。もしかしたら、二つの世界を繋ぐゲートのようなものがあるかも知れんのう」


 老人達は感心してうなずくが、一人の老人が手を挙げて提案する。


「難しい話は、わしにはごめんじゃ。まずはこの男をどうするかじゃろう。わしはこの男は、ここで消してしまってもよいと思うのじゃがな」


 老人の提案に一人は賛成したが、残りの七人によってすぐさま却下される。


「ならん、この男は地球なる惑星についていくらか情報を持っておるはずじゃ。それにミミについても何か知っておろう。結論を急ぐでない」


 その場の空気は少し悪くなったが、構わず別の老人が提案をする。


「ならば、わしの村で預かろう。わしのジャガ村では、魔法使いのモモがミミの帰りを待っておる。何か手掛かりがあるなら、モモも助かるじゃろう」


 この老人の提案に何人かの老人は安堵あんどし、気の抜けたため息を漏らす。


「ならば後の事は任せたぞ。ミミについて何か分かったら、また知らせてくれ。では、一時退散としようか」


 老人達は散り散りとなり、残った一人が佑都の体に触れ、転移魔法を発動する。


「では、行こうか。歓迎するぞ少年」


 二人の体は光を放ち、その場から消える。


 そして、ジャガ村なる村落そんらくへとワープする。


◇◇◇


「ここは……?」


 それとほぼ同時刻、今度はミミが目を覚ます。


「この部屋は何? 少し古い部屋なんだろうけど、私がいた村よりもお金がかかってる感じがする」


 ミミは辺りを見回し、見慣れない風景に困惑する。そして自分の左腕に目を向けた時、何本ものくだが刺さっている事に驚く。


「な、何この管!? もしかして私、実験されてる!?」


 ミミは腕の管を引き抜こうとするが、たまたまその場に現れた女性に引き止められる。


「待ちなさい! その管は抜いちゃダメ!」


 ミミは驚き、動きを止める。そして目の前の女を不可解な目つきで見つめる。


「落ち着いて、ここは病院よ。あなたは血だらけで倒れてたから真っ先に運ばれて来たの。血がかなり減っていたから、まだ立つのは辛いと思うわよ」


「びょういん? 私は治療されてるの?」


 看護婦と思われる女性はニコっと笑い、あの戦いについて説明する。


「大変な目に遭ったわね。被害があったのは大宮駅の周辺だけだから、自衛隊と警察が対処してくれて今はもう落ち着いたの。今までにない出来事だったから、テレビもネットも荒れてるけどね」


「てれび? ねっと? 何それ?」


 看護婦は驚いて、目を大きく開く。


「まさか、記憶にも障害が……」


「あ、いえ、記憶は大丈夫です。何でもありません」


 ミミは目を泳がせながらも、何とかごまかそうとする。


――あ、危ない危ない。ここは私のいた世界とは違うもんね。さすが奇跡の星と言うか、てれびとかねっととか、色々あるんだ。


 ミミはそのままベッドへもたれ込み、大きくあくびをすると、再び目を閉じる。


「あ、ちなみにあなた、全治四週間だから。一ヶ月は入院してもらうわよ」


「ファー!!」


 ミミは再び気絶した。

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