表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のりかえ世界のクロスクライシス  作者: こみってる。
1/6

第一話 ボケモンゲットだぜ!!

 埼玉県さいたま市の大宮駅に隣接する総合ショッピングセンター「マルウィ」、その四階にある玩具おもちゃコーナーのレジ前に、二十人程の人が並んでいた。


 そのお目当ては、本日発売の新作トレーディングカードゲームである。


「今日こそ手に入れるぜ、ボケモンカードのスタートデッキをよ!」


 ボケモンとは今流行りの国民的人気アニメ「ボケッと紋次郎もんじろう☆」の略称である。


 このアニメは、主人公の紋次郎もんじろうが、次々起こるトラブルに巻き込まれて苦しむ人々の心を救うため、笑いで世界を包もうとボケ倒すお笑いアニメである。


 ボケモンは放送開始よりわずが三ヶ月で、あらゆる世代から「安心して観れる」と評判の大ヒット作品となった。


 そして遂に、ボケモンに登場するキャラクターたちが織りなすトレーディングカードゲームが登場した。しかし第一弾は好評のあまり、初日で完売。


 しかし念願の第二弾が発表され、男子高校生の二人組は速攻で予約。そして発売日の今日、開店と同時に予約済みの紙を持ってレジに並んでいるのだ。


「遂に、遂に買えるんだ! 楽しみだな佑都ゆうと


 佑都ゆうとと呼ばれた男はやや挙動不審になり、辺りをキョロキョロ見回している。


「ほ、本当に予約しただけで買えるのか?」


「買えるに決まってんだろ! その為の予約だしな」


 楽しみのあまり心臓の鼓動が鳴り止まないこの男の名前は遥希はるき。二人とも高校二年生の男子生徒で、今はちょうど冬休みの最中だった。


「ご予約ありがとうございました。こちらの商品、一点で四千九百八十円になります」


 高い、と一瞬思ったが、それでも念願のボケモンカードを手に入れてご機嫌になった二人は、同じショッピングセンター二階のファーストフード店「マコトナルド」へと足を運ぶ。そしてお互いのカードを見せつけ合う。


「オイ見ろよ佑都ゆうと紋次郎もんじろうのレアカードが入ってたぞ!」


「マジかよ、いいな遥希はるき! でも俺だって、ヒロインの明美あけみちゃんの水着姿のカードがあったぜ。しかもウルトラレアだ!」


 コーラ片手に盛り上がり、全てのカードを見せ合うと、二人は少し早めの昼食を摂る。食後もカードを交換するなどしてお店に居座る二人だったが、佑都ゆうとがトイレに行きたくなり、彼だけ一人で店の外へと出る。


「えっと、トイレトイレ……あ、階段の向こうにあるのか」


 佑都はトイレへと急ぎ階段を通り過ぎる手前で、不意に右手にある階段の上を見る。するとそこに、白いワンピースを着た小さな女の子がいる事に気付いた。


「ねぇ、あなた」


「へっ!?」


 少女は突然、佑都に話しかける。


「ここはもうすぐ戦場になる。生き延びたかったら、今すぐ逃げて」


「何を、言ってるんだ?」


 佑都の返答を聞くと、少女はやや表情を雲らせ、そのまま光が散るように姿を消した。


「き、消えた!? いや、そんな訳……。あぁ、そうか、昨日眠れなかったし、半分夢でも見てたのかもな」


 佑都は用を済まし、再びお店に向かう。


 すると突然、ショッピングモール内に台風の様な突風が吹き荒れ、佑都は思わず右腕で目を塞ぐ。


――うわっ、何だ?


「おい、佑都! 今すぐ逃げろ!」


 視界をふさいだ事で目では確認できないが、友人の遥希はるきの叫び声が聞こえた。


「な、なぁ遥希、一体何がどうなって――」


 言葉を言い終わるよりも先に強風は止み、佑都はゆっくり目を開ける。するとそこには、血塗ちまみれになり倒れている遥希の姿があった。


「遥希!?」


 佑都は慌てて遥希に近寄るが、その時、先程の〝少女の声〟が脳内に響き渡る。


「だから逃げてって言ったのに」


 佑都は周囲を見回すが、少女の姿はない。


「くそっ、どうなってんだ!?」


 気付けばあちこちから悲鳴と怒号が聞こえてくる。ショッピングモール内は一瞬でパニックとなり、みんな一斉に逃げまどう。


 そして遥希が飛び出したと見られるマコトナルドの店内から、二足で歩く人型のけものが現れる。


「何だよありゃ……」


 佑都は突然の異常事態で体中の力が抜け、その場に崩れ落ちる。


「う、動け、動け足! 逃げないと、逃げないと俺も、殺される!!」


 一刻も早くその場を離れたかった佑都だったが、無情にも獣と目が合ってしまう。獣は予備動作なく佑都へと迫り、鋭利えいりな爪で襲いかかる。


「うわぁぁぁぁ!!」


 死を直感して悲鳴をあげた瞬間だった。彼の背後から鋭い一陣の風が吹き、直後に獣が悲鳴を上げる。佑都が目を開けると、獣の肉体は黒い炎に包まれ、もがき苦しんでいた。


「な、なんだ⁉︎ 何が起こって……」


 とっさに佑都は後ろを振り向く。そこには先程とは違う、佑都と同い年ほどの女性が立っていた。しかし女性は身体中が傷だらけで、大量の血を流している。


「間に合ってよかった。ごめんね、巻き込んじゃって……」


 女性は肉体から何らかのエネルギーを発しているが、それは佑都から見てもかなり弱々しく感じられる。


「き、君は一体?」


「自己紹介をしている暇はなさそうね。今の獣は、戯獣ぎじゅう。まだまだ近くにいると思った方がいいわよ」


 女は辺りを見回し、ため息をつく。


――まさか本当にあったとはね……奇跡の星「地球」。でも戯獣ぎじゅうまで来てしまったら、意味がないわね。


「ねぇ君、名前は?」


 突然の女の問いかけに、佑都は慌てて答える。


「俺ですか!? 俺の名前は佑都ゆうとって言います!」


「分かった、ユウ君でいいわね? 私の名前はミミよ!」


――あれ、自己紹介しないんじゃなかったっけ!?


「時間がない、簡潔に言う。今から二人で、戯獣ぎじゅうを倒そう!!」


「……え?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ