5-2
翌日、昼。
僕は父のケータイから、一本の電話をするつもりだ。
このケータイもいつまで維持出来るのか?わからない。ーー僕には時間がなかった。
まず山崎太郎と言う人物に僕は電話をかけた。
ケータイの電話帳に、彼ら四人の名前と番号が登録されていた。
山崎太郎。
三度目のコール音の後、鼻にかけるような女の声が聞こえてくる。
「ーーもしもし?」
「あなた誰?」
女はそう言いながら、タバコでも吸っているようにして、深い息を吐き出す。
ーー僕、間違えたかな?それとも電話番号が変わってる?
それはこっちが聞きたい。と思いながら、僕は聞いた。
「僕は斎藤と言います。山崎さんのケータイですよね?」
「そうよーー斎藤さん?ちょっと待って。太郎に変わるから」
受話器の向こうで女の声が言う。
「太郎ーー電話」
「はーい」
ーー良かった。間違いじゃない。
「もしもし、どなた?」
低めの男の声が響いてから僕は話始めた。
「いきなりのお電話ですいません。僕、斎藤秀二と言います」
「斎藤?ーーあー健吾の息子??」
「そうです。生前、父がお世話になったそうですので、父の事でお話しておきたい事があります」
「ーーどんな?」
不思議そうな声で、彼は言った。
「先月、父がなくなりましたーーそして、見てほしいものがあるので、一度お会いできないでしょうか?」
「あぁ、夜ならいーよ」
「それじゃ明日いいですか?」
「構わないよ。ーー何時にどこで?」
「夜8時、⚪️⚪️ファミレスでどうですか?」
「わかった。それじゃ明日、8時にーー」
声だけ聞いていると、とても誠実そうな人が思い浮かんだ。