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目が覚めると、夏でもないのに僕は身体中に大汗を流していた。
それは、あの悪夢のせいだろう。
父が首をつり、足場のないところでブラブラと横に降られている。
ーー僕はあの時死んだ。
僕の中で何かが砕け散るような音を聞いた気がする。
ーー見ていろ!!僕は父さんの様に殺されたりしない。
強く思っている。
しかし、僕はためらい、まだ動き始めたばかりだ。
目が覚めてしばらくすると、僕はパソコンの電源を立ち上げた。
今僕は「僕の復讐の協力者、探してます」という闇サイトを立ち上げたばかりだ。
世の中的には「ーー復讐なんて」と言う風潮もあるが、多くの人は刺激ほしさに、復讐サイトを見ているようだ。
アクセス数が急上昇している。
そこに一通のメールが届いた。
「私が復讐の手伝いをしましょう」
アカウント名は「ウサギ」女子の様だ。
ーー人の復讐を手伝うなんて、この女、どうにかしている。
そうは思うが、本当だとしたらありがたい。
「ーーでは一度お会いできないでしょうか?」
あの日、父の死亡保険金は僕が受け取った。母の入院費を出しても余るくらいに。
それならばいっそ、復讐にお金をかけようと思った。どうせ、僕が持っていても、使いきれないだろう。
そして僕は復讐を手伝う条件として、100万をかけた。
「ウサギ」というペンネームの子と、僕は明日会えることになった。
展開が早すぎて、僕の頭が追い付かなくなっている。
ーー僕は一体どんな復讐をするつもりなんだっけ?
あれほどまでに考え抜いた復讐が、僕の頭から抜けてしまった。
その夜、改めて復讐のプランを僕は紙に書いた。
翌日。
例の喫茶店で、僕はウサギというペンネームの子と会う事になっている。
見ず知らずの人だけに、少し緊張する。
彼女はどんな人なのだろう?
突然、電話が鳴った。
「もしもし」
小さな声で、その電話に出ると僕は店の外に出た。
「ーーおう、その後どうだ?」
「気にかけてくれていたんですね。まだ何も状況が変わらないので、もーどうしていいのか?わかりません。あ、今日の夜行ってもいいですか?」
「あぁ、構わないよ。どうした?」
「家に帰ると一人なので、つまらなくて」
「そっか。じゃ遊びに来いよ」
「はい。夜に伺います」
僕は受話器を置く。
電話の主は藤田しげるだ。
どうやら、僕の事を気にかけてくれていたようだ。少し申し訳ない気持ちになった。
ウサギ。
電話が終わると、用意されたテーブルの前にはすごく怪しげな人が座っていた。
メイクがすごすぎて、それを取った後の姿が想像できない。
恐る恐る僕は声をかける。
ーーもしかして、ウサギさんですか?
彼女は頷く。
こわっ。ーーそんな怖い復讐は望んでないのに。
外見を見ただけで、つい一歩引いてしまう。
「アクセスありがとうございます」
「はい。それでどんな復讐をお望みで??」
「ーーそんな対した復讐ではないんですが。人を殺すとか、怪我させるとか。そーゆー訳ではなくて、、」
彼女はスッと立ち上がった。
「ーーえっと、、あのっ」
「私はちゃんとした復讐がしたいので、私じゃない人を探してください」
ウサギは帰っていった。
僕はその喫茶店に、ただ1人取り残された。