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ある日、父が死んだ  作者: みゆたろ
26/39

8-3

ようやくの思いで、家にたどり着くと、玄関先には恵が立っていた。

「どうだった?」と微笑んでいる。


「ーーごめん。今日は疲れた。そのまま寝かせてくれ」

どこから出てるのか?僕は素っ気ない声を出していた。


ーー何かあった?


母である恵はそれを的確に感じ取っていた。



いつもの二階への階段を上る足音。

「ーー今はそっとしておきましょう」

恵はぼやいた。



何はともあれ、息子である秀二が何事もなく帰ってきてくれたんだーーそれがすごく嬉しくて、危険だと思っていただけに涙が溢れた。


「ーーおかえり。お疲れ様」と。


階段をかけ上ってる息子の背中に言った。当然の事ながら、秀二からの返事はない。


秀二は着替えもせず、ベッドに横たわる。

目頭を抑えた。


父さんは結局、揺すった以外は非がないのにーー共犯者にされて、、。


涙が流れる。


ーー父さんのバカ。あんな奴等に言いように利用されて、殺されて。バカだよ、あんた。


この真実を知って、僕はどーするつもりだったんだろう?

まさか、こんな結末だったなんてー。


父さんは加害者でもあり、被害者でもある。その比率は被害者の方が大きいだろう。


ーーそれでも父は間違っている。


階段を歩いてくる軽い足音が聴こえてきた。

おそらく恵だろう。


トントントン。


小さなノックの音が響いた。

「ーー秀二、ご飯はどーするの?」

「ーーいらない」

「食べないと体に毒よ。ここに置いておくから、適当に食べなさい」

「ーーあぁ」

「おやすみ」

入り口に夕飯を用意して、恵は階段を下りて行った。


恵の足音が寂しげに響く。

そして秀二は一人の部屋に引きこもったまま、どこまでを母に話すべきなのか?考えている。



朝。

気がつくと、朝が訪れていた。

少しも眠れないままーー。


階段を上ってくる足音。

コンコンコン。

部屋をノックする音の後、恵の声が聞こえた。

「ーーご飯、食べてくれたのね?ありがとう」

「うん」

蚊の泣くような声で、秀二が言った。

「少しは眠れた?」

秀二は黙っている。

「ーーそう、眠れなかったのね。落ち着いたら、話聞かせてね」

ゴトンと食事を置く音が響いてくる。

「ご飯、食べてね」

そう言って、恵は階段を下りて行った。


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