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ある日、父が死んだ  作者: みゆたろ
20/39

7-2

健吾は平静を装ったつもりだったが、うまく装えていないのかも知れなかった。


18時。

待ち合わせのその時間になると、スナックやバーが集合しているあの通りも人通りが多くなる。

通りすぎるすべての人が、自分を見ているような錯覚に陥る。


健吾は例の喫茶店に入っていく。

「待ち合わせなんだけど、、」

店員にそう言って、店内を見渡す。しかし、まだ太郎は来ていない様だった。

店員に案内されるままに、健吾は腰をかけてアイスコーヒーを頼んだ。


数分後、窓の外をぼんやりと眺めている健吾の元に、店員がアイスコーヒーを運んでくる。


それとほぼ変わらないタイミングで、太郎が到着した。


「お待たせ」

「とりあえずコーヒーでいい?アイス?それともホット?」

「アイスでいーや、あちーっ」

相変わらずの太郎だった。

まるで何事もなかったかのように振る舞っている。

「悪かったな、、急に呼び出して」

「あぁ」

「これ」

太郎は紙袋を差し出す。

持った瞬間、健吾はその重さに驚いた。

「どーやってこんな大金工面したんだよ?」

「俺にもいろいろとアテはあるんだ」

太郎は得意気に言った。


中身を確かめる。

それには本当に万札ばかりが入っていた。


「ーーこれでお前も共犯だ」

太郎のにやけた顔。

「一つ確認しておいていいか?」

健吾は聞いた。

「ーーなんだ?」

太郎は素っ気ない顔をして、ストローでアイスコーヒーをすすった。

氷が溶けて、色を失いかけているそれはもうコーヒーと呼べる代物ではなくなっていた。

「お前も共犯って言ったな?」

「あぁ」

「じゃ、俺以外にも共犯がいるのか?」

「もちろん」

「どーやって共犯にしたんだ?」

「簡単だよ。ーー弱味を握ればいい」

「以外と難しいだろ?」

「まぁな、、俺には簡単なんだ」

「例えば、健吾に持ってきた金あるだろ?」

声を潜めて太郎が言う。

「うん」

興味津々な健吾。

「あれを用意したのは俺じゃないーー」

「じゃ、誰が?」

「藤田しげるだよ」

健吾は黙って聞いている。

「そのお金を出させる事で、藤田しげるも共犯さ」

「なるほど」

「万が一、彼が共犯だと警察に話したとしても、どー見てもお金を出してまで共犯になろうなんてヤツはいないだろう?もちろん人を殺せば血が出るのに、彼のようにホームレスとして生活していれば、お金がなく、着替えられないだろう?」

「言われてみればーー」

「その為に彼にはホームレスのフリをしてもらってる」

太郎は得意気にそう言った。

「そんな形で、みんながちょっとずつ事件に関わっているのさ」


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