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ある日、父が死んだ  作者: みゆたろ
13/39

5-7

この頃は恵にも誰と会うか、を話この頃すようにしている。万が一の時は彼女が対応してくれるこの頃だろう。



13時。

あの喫茶店に着くと、僕は店員に伝えた。

「待ち合わせなんだけどーー」

「もしかしたら、あの方じゃないですか?」

店員が手のひらを向け、指し示した方を見てみると、ひげ面のホームレスの様な外見の男が座っていた。

僕は彼に近づく。


「あの、もしかして藤田さんですか?」

「そうだ」

「僕が連絡した斎藤健吾の息子で秀二と言います」

「時間ならたっぷりある。話を聞こうか?」

せっかちな人らしい。

異様な臭いが僕の回りの空気を汚していく。


「はい。父は少し前になくなりました」

「そっか。死因は?」

「自殺だと言われています」

「それでお前は何を調べている?自殺なのにー?」

「自殺しようとした理由が分からなくて調べてるんです」

「それで何か救われるのか?」

彼は僕に聞いた。

「わかりません。でも、わからないままにはしたくないのでーー」

男はため息を一つこぼした。

父の死を話しても驚いた様子が見えなかった。

ーーこの男が犯人なのだろうか?

「俺からは何が聞きたい?」

「えっと、藤田さんにも、これを見てほしいんです」

僕は封筒を手渡した。

「これは?」

その封筒から中身を取り出して、マジマジとみている。

「なんだこれ?人の名前しか書いてないじゃないか?遺書かと思ったら違うのか?」

不思議そうな顔をしている。

「なぜ、遺書だと思ったんですか?」

「自殺って言われてるんだろ?じゃ普通に遺書だと思うだろ?」

ーーそれもそーか。

「この四人ーーあなたは知ってる方ですか?」

「うーん?俺は多分知らないなぁ」

「なぜ、ここにあなたの名前があるんでしょう?」

「ーーさぁなぁ?」

「ぶっちゃけて聞いていいですか?」

「あぁ」

「ーーあなたは父を殺しましたか?」

男は表情一つ変えない。

「ーーわからない。俺には昔の記憶がないんだ」

深刻な顔つきで、彼はそう答えた。


ーー記憶喪失の男。藤田しげる、か。


「あなたはなぜ記憶をなくしたんですか?」

「対したことじゃない」

男はタバコの煙を上に向けて吐き出した。


「ありがとうございます。またお電話するかも知れませんが、よろしくお願いします」


「にいちゃん、ちょっと待った」


藤田しげるはそう言って、秀二の肩に手を乗せた。


秀二はゆっくりと振り返る。


「なんですか?」


「俺には昔の記憶がない。でも、日記には書いているんだ。見てみないか?」


「はい。見に行っていいですか?」


「あぁ」


しげるは快く承諾した。

彼の家はあるんだろうか?日記を書いてるならホームレスって事はないのかもしれない。


歩いて数分。

目的地にたどり着いた。


「ここだ」


白い壁に囲まれた大きな家だ。


ーーえっ?こんな男が、こんな豪邸に住んでるのか?


僕は思わず目を疑ってしまう。



「お邪魔します」

軽く頭をさげて室内に入る。


男に促され、大きなソファに腰かけた。


「それで、日記と言うのは?」


「すぐ持ってくる。待っててくれ」


「はい」


男は5分くらい経って、ようやく戻ってきた。

「これを、見てみるといい」

手に取った日記帳。

「これ、お借りしてもよろしいですか?」

「ーーもーいらないから、やるよ」

「ありがとうございます」

頭を下げて、僕は豪邸を後にした。

手には藤田の記憶の変わりとでもいう日記帳。

僕は家で、ゆっくりとそれを読むことにした。


帰る道中、もう一人の男。

中山兼(けん)にショートメールを打った。


「初めまして。斎藤健吾の息子で秀二と言います。父の件でお話があります。少しお時間をいただけないでしょうか?」と。



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