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ある日、父が死んだ  作者: みゆたろ
12/39

5-6

藤田しげる。


電話をかけてもコールオンが響くだけでしげると言う人物は出なかった。

繋がらない状態になっているのだろうか。

それとも忙しいのだろうか?


仕方ない。

彼を後回しにして、中山兼に電話をする事にした。


「中山兼」


コール音が鳴り響く。

「ーーただいま電話に出ることが出来ません」

僕はしょうがなく、留守電に名前と電話番号を残して電話を切った。


ーーくっそー。ここまで順調に来ていたのに。


僕は布団から出る気にもならなくて、ふて腐れている。


ピンポーン。


玄関のインターフォンが鳴り響いた。

今日は誰とも会わないつもりで、僕は居留守を使った。

なのに、玄関の向こうでガチャガチャと鍵を回す音がした。


玄関のドアが開く。


「こんにちはー」

聞いた事のある声だ。

僕は急いで階段をかけ下りるとそこには原口恵が立っていた。


「ーーあれ?何でカギ持ってるんですか?」


説明は後で、と彼女は笑った。


「どうぞ」

すぐさま、原口恵は腰をかける。

僕は冷蔵庫の中のペットボトルのコーヒーをグラスに注いで、彼女に差し出す。


「いきなり訪問してごめんなさいね」

恵は言った。

「いえーーそれでどーしました?」

「あなたが来てから、私の方でもあの人から預かった物とか調べてみたの。そしたらーー」


「そうしたら?」


僕は彼女の言葉を待った。


「こんなものが見つかったの」


彼女は白い封筒を僕に差し出した。

手紙だ。


ーー秀二へ。

俺に何かがあった時、お前は俺の死の真相を調べてくれるだろうと信じている。

その際、藤田しげると中山兼。その二人には連絡がつきにくいとはずだ。

藤田しげるはあの時の慰謝料を揉み消したから電話に出ないのだろう。

そして兼は俺とは関係のないところで、金銭トラブルを起こしていて、それが原因で電話に出なくなっているといっていた。

この二人にはメールでの連絡を試みてほしい。

そして、秀二。俺に何かがあった時には一人ではなく母である恵と共に真実を探してほしい。


原田健吾



それは父が僕に宛てた手紙だった。

これが父の最後の言葉と思った。


そして次に彼女が差し出したのが、この家のカギだった。

「このカギもその封筒に入ってたのよ」


ーーなるほど。

僕はなぜ彼女がカギを持っていたのか?わかった気がする。


これからやろうとしてる事は危険なのかも知れない。

僕はそう直感した。


「それとーー」

恵が口ごもる。

「なんですか?」

「まだ健吾さんの遺品があるの。私の家に、、見に来る?」

恵は聞いた。

「はい。ありがとうございます」

僕はすぐにジャージから私服に着替えた。


徒歩数分の場所に、恵の家は存在していた。

「どうぞ、入って」

恵は室内に招き入れる。


ーーあなたのお父さんから預かったものはすべてこの中に入ってるわ。

元はビスケットが入っていたであろう四角い缶を僕に差し出した。


「ーー見ていいですか??」

「もちろんよ。見て」


缶の蓋を開けるとまず、目についたのがオリンピックが開催された年の記念効果のようなものだった。

ピカピカの500円玉だ。


そして、僕の幼い頃の写真。

この頃はお母さんも一緒に暮らしていたのだろうか?3人で笑っている。


それと家の権利書の様なもの。

原口恵は権利書だと言っていたが、僕にはそれがわからない。


父と母。二人の名前が書かれ、印鑑が押された婚姻届ーー。


そして、僕に宛てた手紙。

それだけが残っていた。


「お母さんも一緒に真実を探すわ」

「でもーーそうすると二人とも危険なのかも知れない」

「一人だけ生き残るよりはマシよ」

母はそー言って、笑っていた。


これらの品物にどんな意味があるのか?わからないが、二人で探すなら真実にたどり着けそうな気がした。


母がいた。

僕にはまだ母という実感はない。

でも母なんだろう。

婚姻届ーーそれが母である事を示している。


僕は藤田しげるにショートメールを打った。


「初めまして。斎藤健吾の息子の秀二と言います。父の件で話があります。またご連絡させていただきます」


送信ボタンを押す。

数分後、電話がなる。見覚えのある番号だった。

液晶画面には、藤田しげると言う文字が流れていく。


「もしもし、斎藤さんですか?」

「はい。電話ありがとうございます。僕が斎藤健吾の息子で秀二と言います。突然メールしてしまい、すいませんでした」

「それで?健吾の事で話って?」

「父は一月ほど前に亡くなりました」

「ーー何をバカな事を?健吾が死ぬ訳ないだろ?」

「それが亡くなったんです」

「なんで?」

「警察の話では自殺じゃないかと言う事ですが、自殺なら自殺の理由を知りたくて、僕は個人的に調べてるんです」

「なるほど」

「それで、あなたにも見てほしい物があるんです。少しだけお時間いただけないでしょうか?」

「あぁ、今日しか時間とれないけど、今日でいいかな?」

「はい。何時にどこへ伺えばいーですか?」

待ち合わせは前回と同じ喫茶店だった。

沢田昌平と言う人物と会ったあの喫茶店だ。

「はい。わかりました。13時頃伺います」


藤田しげる。

本日13時。沢田昌平と会ったあの喫茶店。


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