表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日、父が死んだ  作者: みゆたろ
1/39

悪夢

俺は夢を見ていた。

遠い昔の夢だ。

あれはまだ俺が12才の夏。

今から六年前の悪夢だ。


12才の夏。

学校を終え、家に帰ると玄関のドアを開け、室内に入る。

そこで俺は目を疑った。


父である健吾が、天井からぶら下がっていたからだ。


朝、家を出た時は、いつもと何ら変わらない表情で「秀二、頑張ってこいよ」と笑っていた。

いつもと同じ父の姿が、ここに合ったのに、、。


そのぶら下がった父を眺め、気持ちの整理をしようとしたが、出来なくて秀二はただ呆然と過ごしていた。

「父さんーーどーして?」

「どーしてこんな?」

涙が溢れてくる。

こんな風に泣いたのも久しぶりだ。


僕は警察に電話した記憶もないが、パトカーの音が近づいてくる。

無意識に発していただろう俺の悲鳴を聞き付けて、近所の人が警察を呼んでくれたに違いない。


ピンポーン。

警察官が入ってくる。


「ーー君、名前は?」

「斎藤秀二です。12才」

「ーー俺が学校から帰ってきたら父さんが、、」

涙を流しながら、父の脱け殻に指を指す。

どんな表情をしていたのか?俺にはわからない。


警察官は真剣な眼差しで俺の肩を叩き言った。

「家の中のもの、何も触ってないね?」

「はい」

そう答えると、俺は婦人警察官に保護された。


警察官が室内に入り、ドラマで見るような印をつけている。

その間、俺は婦人警官に連れられ、パトカーの中で待たされていた。

その間に状況を聞かれる事になる。


「お父さんが自殺するような原因はあったかな?」

「ーー多分、、ないと思います」

「それじゃ殺されるような理由は?」

「わかりません。ないと思いますが、、」


警察官の顔が見ているうちに、黒い塊になっていく。

そこで俺は目を覚ました。

瞳からは涙が溢れている。もー6年も前の事なのに、、。

どーしても忘れられない。


ーーねぇ、お父さん。

ーーどーしてこんな事になっちゃったのかなぁ?


父と二人で生きていた俺は、いきなり一人になり、肩身の狭い思いをしながら、親戚の家に居候させてもらっている。


ーーどうして僕だけが、こんな目に会わなきゃいけないのだろう。

俺のお父さんはなぜ、その命を失わなければいけなかったんだろう。


ねぇ、お父さん、、どーして??

俺を残して、どーして死んじゃったの?


壮絶な現場と化した家を眺めている。その夢を俺は繰り返し見てきた。

警察官は「自殺」だと言っていた。しかし、別の場所に父の死の原因があったのかも知れないーー6年も経った今になって俺はそう思う。父が今も俺に何かを伝えているような気がして、、。


その日。

雨も降っていないのに曇っていて、遠くの方では雷の音が繰り返された。

変な天候だった。


あれから6年が経ち、今日で俺は18才になる。


6年前のあの日。

父の死という絶望しかなかったが、あの日は俺の誕生日だった。

本当なら父が笑顔で迎え入れ、その誕生日を祝ってくれるはずだったのにーー。


何度問いかけても、父はもう何も答えてはくれないーー。


そして俺はまた悲しい夢を見た。

父の最後の姿を、繰り返すようにーー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ