1. 突然何かが起こることって滅多にないよね。
「あ~~~~、暇すぎる。」
昼過ぎにそんな小言をある一軒家の和室で一人漏らしているのは西木戸大翔、ある田舎の工業大学に所属している大学三年生だ。夏休みに暇を持て余していている大学生の一人である。
大学生の夏休みといえば、友人と遊ぶ、彼女とイチャイチャする、など楽しいことばかりで暇などないように思えるが、案外暇なものである。
夏休みに入ると県外から同じ大学に来た友人は、お盆に入ると実家に帰省し遊ぶことが難しくなってしまう。
彼女とイチャイチャするなど、どんな都会でも女性比率がとんでもなく少ない工業大学だ、田舎ともなれば彼女を作るとなるとハードルがかなり高い。そのようなこともあり今すぐ遊べる友人もいない、イチャイチャする彼女もいない西木戸大翔はこう思った。
(ゲーセンでも行くか…)
西木戸大翔の趣味の一つははゲームセンターに行きで音楽ゲームをすることである。
高校時代にバスの待ち時間に音楽ゲーム、略すと音ゲーをやり始めたことがこの趣味の始まりだ。
(よし、いくか。)
親から貰った車を走らせゲームセンター<ファイナル・ラウンド>へと向かう。
◇
「くっそ~、あの曲はクリア出来そうだったんだけどな~」
そんなことを一人呟きながら車を運転している。
「あ、やっべ。夜ご飯の買い出ししなきゃ。」
今の西木戸家は大学三年生の大翔と中学三年生の妹、西木戸めぐみが一緒に暮らしている。親は二人で海外出張を何年もしている。そのため夏休み期間中の夜ご飯は大翔が作っている。
(今日の夜ご飯はカレイの煮つけと味噌汁でいいか、簡単だし。)
スーパーでカレイの切り身を買い、部活を終え帰宅する妹の為に夜ご飯を作る大翔であった。
「ただいま~。」
部活から帰っためぐみが、家の扉を開けて声を出しているのが聞こえた。
俺は即座に玄関に向かい、声をかけた。
「おかえり、ご飯できてるよ。」
「今日のご飯なに?」
「カレイの煮つけと、冷蔵庫にあった野菜の味噌汁。」
「ふーん、そうなんだ。」
せっかく夜ご飯を作ったのにこのリアクションである。
この妹、めぐみはクールな肝心の女の子で何を言ってもリアクションが薄いのだ。
そうなんだ、という言葉があるだけでも珍しいぐらいである。
このことから、めぐみはカレイの煮つけが好きであるということが今日判明した。
そのくらい無口な子なのだ。
「美味しくできてる?」
「いっつも兄ちゃんのご飯は美味しいよ。」
「それならいいんだけど。」
二人で黙々と夜ご飯を食べる。
会話は少ないがめぐみは口下手なことを知っているため、全く苦にならない。
「ごちそうさま。」
「お粗末様でした。」
「じゃあ、私お風呂に入ってくるね。」
「了解よー。」
食器を片づけながら俺は返事をした。
これは兄バカなのかもしれないがめぐみはかなり美人な方だと俺は思っている。無口だが黒髪ストレートのぱっつんで、目はぱっちりとしている陸上部の女子だ。身長は低いが引き締まっている体である。俺には言っていないだけで、告白など何度もされているだろう。
告白など全くされてこなかった兄としては何だか悔しい気分である。
「ふぅ、ようやく洗い物も終わったな。」
食器を洗い終えた俺は、まだお風呂に入っているめぐみに向って脱衣所からお風呂場に向かって。
「兄ちゃん明日も暇だからお酒買ってくるね~。」
と言って夜のコンビニに向かうのだった。
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