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お金を求めてたら明日の運勢を決めれるサイコロに出会った。

作者: 死馬奇大造

冬のある日


「わー!田中さん!外見てください!雪が降ってますよ!」


「雪なんかよりお金が降って欲しいです。」


「うわー。つまんない大人。せっかくの初雪なのに。」


これはお金に飢えてしょうがないアラサー会社員

田中航(タナカワタル)が体験した不思議なお話


?「もー。なんでそんなにお金にこだわるんですか?」


田中「え?だってお金さえあれば何もかもやりたい放題、

お金が幸せを産み、お金が人生を豊かするんだよ。」


?「じゃあそんなつまらない大人の田中さんのために

いいこと教えてあげます。これを見てください。」


とあるチラシを渡す


田中「ん?なにこれ?何でも叶え屋…

めちゃくちゃ胡散臭いんだけど。」


?「でもそんなにお金が欲しいなら行ってみたらどうですか?

もし本当に叶ったらこんな小さな会社に留まらなくて済みますし。」


そう、田中航が勤めている会社、ここは凄く給料が安い。

という事で、田中航は沢山のお金を求めて後輩の喜田(キダ)あかり

が勧めてくれた「何でも叶え屋」に行くことにした。


田中「とりあえず喜田ちゃんがくれたチラシに電話番号が載ってるから

ここにかけてみるか。」


プルルル… プルルル… プルルル… ガチャッ


六角「お電話ありがとうございます。何でも叶え屋、六角(ムカク)が承ります。」


電話には女性が出た


田中「田中航という者です。あの何でも叶え屋ってどこにありますか?」


六角「どこにもありません。」


田中「え?どういうことですか?」


六角「何でも叶え屋はお客様に場所を指定して頂いて、

指定された場所でお客様とお会いし願いを叶えます。」


田中「なるほど… じゃあ」


田中航はとあるカフェを集合場所に指定した


田中「午後3時に来るって言ってたけど…

もう過ぎてる… 過ぎてるどころか30分遅れ。

会社を早退してまで来たのになんだよ…。」


チャリン… いらっしゃませ


1人の女性がカフェに入ってきた。

その女性は迷うことなく田中航と同じ席に座った


田中「この女性が六角さんか。初対面で申し訳ないが何かおかしい。

いや、初対面なのにおかしいのは六角さんの方だ。


六角さんは他にも数人、お客さんがいたにもかかわらず

一切、迷うことも無く俺と一緒の席に座った。

六角さんは俺と会った事もないのに何故、分かったんだ?


まあ、良い。考えても分からない。たまたまだと思おう。」


六角「初めまして。田中様。何でも叶え屋、六角と申します。

今日はよろしくお願いいたします。」


田中「田中航です。お願いします。」


六角「早速ではありますが、田中様。何を叶えて欲しいのですか?」


田中「じ、実は自分、お金が大好きでして沢山のお金が手に入れば

もっと楽しい人生を送れるのにな、と思っていまして。」


六角「つまりありったけのお金が欲しいと。

ではその願い、叶えて差し上げましょう。」


そう言い、六角はある物をポケットから取り出した


田中「サイコロ?それでお金が貰えるんですか?」


六角「はい。貰えます。ただしタダという訳ではありません。

得を貰うという事はその分の代償を払う必要があります。」


田中「代償…。お、お金ですか…。

てかそもそも、そのサイコロでどうやってお金が貰えるんですか?」


六角「このサイコロはよくある普通のサイコロとは違い

数字の目ではなく、おみくじの目なんです。


大吉、中吉、小吉、末吉、凶、大凶、の6面で構成されてる。


おみくじサイコロ。言わばこれは神のサイコロ。


その神の力を借りて次の日の運勢を無理やり決められるのです。


サイコロを振るのはその日のいつでも大丈夫です。

ただしおみくじサイコロの効果は1日1回まで。

次の日になれば前日の効果はリセットされます。

あとやり直しも効きません。


つまりその日に大吉が出れば次の日はとても運がいいですし、

その日に大凶が出れば次の日はつくづく運がないです。


ちなみに代償というのは大凶のこと。

なのでお金はくださらなくて大丈夫です。


他に聞きたいことがあれば何なりとどうぞ。」


田中「じゃあ大凶が出た次の日ってどれくらい運が悪いんですか?」


六角「運が悪いとは言っても事故にあったりだとかそういう

命に関わるような悪いことでは無いです。例えば


カップラーメンを食べようとして、半分くらいまで

お湯を入れたのに、そこでポットのお湯が切れてしまう。


このような、ちょっとした運の悪さが積み重なるという感じです。」


田中「なるほど、じゃあ安心だ。

あ、あともうひとつ、そもそも大吉が出ても

その運の良さがお金と全く関係ない事だったりとかしますか?」


六角「その辺はご安心を。おみくじサイコロは優秀です。

なんと言っても神が宿っていますから。


おみくじサイコロは、持ち主が叶えたい物事を把握し、

運の良さを持ち主の欲望と合わせるように出来ています。


つまり田中様の場合、運の良さは全てお金関係になります。」


田中航は六角の説明を聞き、目を輝かせながら嬉しそうに

迷うこと無くおみくじサイコロを受け取った。


ここから始まったのだった。

田中航の沢山のお金を求める冒険が


━━━━━━━━━━━━━━━


田中航はその後、カフェを出て家に帰った


「よーし。早速、サイコロを振ってみようかな。

あ、でも。記念すべき1回目だし、缶ビールでも飲みながら!」


カチャッ


「ゴクゴクゴクッ… カァー!やっぱこれだな!

よーし、それではさっそく。せーの、ポイッ」


カランッコロコロコロコロ…


[末吉]


「末吉かー… 微妙だな。まあ最初はこんなもんか。

まあ、でも。明日になればこのサイコロにどのくらいの

チカラがあるのかが分かるのか。楽しみだな。」


━━━━━━━━━━━━━━━

初日… 末吉


田中「おはよーう。」


喜田「おはようございます!田中さん!今日も寒いですね。」


田中「寒いねぇ。あ、てか喜田ちゃん。行ってみたよ。何でも叶え屋。」


喜田「結局行ったんですね。笑 でどうだったんですか?」


田中「まあ行った、ていうか会ったんだけど…。

正直、まだ分かんないんだよね。

今日1日過ごしてみなきゃ。」


喜田「どういう事ですか?

ただお金を沢山、貰ったって訳じゃないようですが。」


田中「実は、六角っていう女性にあって… 」


田中航は昨日、カフェであったことを話した


喜田「え、待って。田中さんその話、本当に信じてるんですか?

神とかいう世界一、胡散臭いキーワード出てきてるし。」


田中「いや正直、俺もまだ完全に信じてるわけじゃないけど。

でも、サイコロは無料だった訳だし、

もしそれが本当だったら大金持ちになれる!」


喜田「まあ、別にいいですけど。

ただ変な沼にだけはハマらないでくださいね。」


その日の晩


「あれ?昨日、末吉でたよね?

別に今日は何ともない普通の日だったんだけど。


まあ別に信じてたわけじゃないけど。

やっぱり嘘っぱちだったのか?


あ、そうだ。電話かけてみるか。」


プルルル… プルルル… プルルル… ガチャッ


六角「お電話ありがとうございます。田中様。」


田中「え、なんで電話相手が俺だって分かったんですか?」


六角「大事な大事なお客様なので、

履歴から登録させていただきました。


なのでこれから困った事があれば、何なりと。」


田中「おー。それは助かります。じゃあ早速ですが…」


六角「なるほど。昨日、末吉が出たのに今日はごく普通だったと。


実はですね。大吉、中吉、小吉、末吉、凶、大凶。

それぞれに運の強さの度合いが決まっています。


大吉は幸運。中吉は強運。小吉は中運。末吉は小運。

凶は弱運。大凶は不運。となっています。


末吉は小運。小運は普通よりほんの少しだけ運があるくらいです。」


田中「でも今日、少しの運もなかった気が…」


六角「今日、田中様の会社でなにか起きませんでしたか?」


田中「あ、そうだ。俺が少しだけ関わってた仕事が何故か大成功を

収め、上司に褒められ何故か奢ってもらったんだった。」


六角「末吉の小運は意識しないと気づけないレベルの運です。

これからは少しの幸せも噛み締めて生きてみてはどうですか?


あと田中様が奢ってもらったことにより、その分のお金の消費

を抑えることが出来た。ほんの少しではありますがお金の運です。


おみくじサイコロが田中様の欲望に

合わせて運を送っている証拠です。


怪しいのは認めますが、そろそろ疑うのは辞めてくださいね。」


そう言い電話は切れた


田中航はベッドに横たわりながら疑問を浮かべてた


「六角さんは俺が仕事で大成功し、奢ってもらったことを

まるで知っていたかのような口ぶりだった。


しかも俺は失礼だと思い、

六角さんの前では疑いの言動を表に出していない。

なのに何故、疑っているのを六角さんは知っていたんだ…


まあ、とりあえずお金の運はしっかり得た訳だし

おみくじサイコロは信じてみるが、

六角さんはまだ疑い続けてみよう。」


━━━━━━━━━━━━━━━

1週間後… 家での晩


現在までで、中吉、小吉、末吉、凶、大凶

大吉以外の目は全て出た。ただ大吉だけはまだ出ていなかった


「中吉、小吉、末吉、凶、大凶。それぞれの運を味わった。

そこで思ったことがある。一つ一つの運がちっぽけすぎる。


これだと大吉が出たとしても大した運は見込めない。

てかそもそも大吉なんて本当に出るのか…。


神が宿ってるサイコロなんて言ってたけど

全然、物足りない。というか弱すぎる。

これが本当にこのサイコロの全力なのか…?


あ、そういえば。電話があるじゃないか。

六角さんにかけるの初日以来だな…。」


ピー… おかけになった電話番号は現在使われておりません


「え?ちょっと。嘘でしょ…。まさか逃げた…?

やっぱりこのサイコロ、危ないものだったりするのかな…。


もうサイコロを振るのは辞めた方がいいかもな…。

いや、でも。せめて1回くらい大吉を出してみたい!から続ける。」


━━━━━━━━━━━━━━━

1週間後… 家での晩


おみくじサイコロを手に入れてから2週間が経った

だが、今もまだ大吉は出ていなかった


「流石に出なさすぎるなぁ。

大凶は3回ほど出てるんだけど…。


とは言っても、大凶も大したこと無かったんだよなぁ…。

タンスの角に小指を思いっきりぶつけたり、

家のテレビが故障したり、会社で少し失敗したり。


やっぱり大吉が出ても大したことないのかな…。

まあ一応、狙うんですけどね。ポイッ」


カランッコロコロコロコロ…


[大吉]


「チラッ… はぁ…やっぱり。また大吉かぁ…。

ん?え?大吉…? 大吉!?え? ダイキチィィイイ!?


で、出たぁぁぁあああ!!ついに…ついにやったぞ!


明日が楽しみで仕方がない!一体なにが起こるんだ…!


とは言っても。大凶であのレベルだ。

大吉を期待しすぎてはいけないな。」


━━━━━━━━━━━━━━━

次の日の朝… 大吉の日


ポストに郵便物が無いか確認する田中航

そこには何やら封筒らしき物があった


「ん?なんだこれ?


田中様、この度は「ブラジルへ行こう!1週間無料の旅!」

えのご応募、誠にありがとうございます。

田中様は「ブラジルへ行こう!1週間無料の旅!」

に見事、当選されました。おめでとうございます。


え?なんだっけこれ…?あーそういえば。

2ヶ月くらい前に応募してたようなしてなかったような…。

確か無料って言葉に惹かれてつい応募しちゃったんだっけな…。

え?てか、当選しちゃってるし…。


まあブラジルなんて距離的に言ったら1番遠いし

個人的に行こうもんなら大量のお金が必要になるし。


それが全て無料になって旅行を楽しめるなら

行かない訳にはいかないよな。あ、ダジャレだ。


てか、確かこの旅。15人くらいまでだった気がする。

まあ日本中でどれだけの人が応募してるかは知らないけど

これに当選するなんて死ぬ程、運いいな。


あ!てかそうじゃん!今日大吉だったんだ!

だから当選したのか…。正直、期待はしてなかったけど

これは流石に大吉の力、恐るべしだな…。


ブラジル、無料の旅は1週間後か…。せっかくだから楽しも!」


━━━━━━━━━━━━━━━

ブラジル、無料の旅の前日…


喜田「田中さん、良いなぁ。無料でブラジル行けるなんて。」


田中「正直、めちゃくちゃ楽しみです。」


喜田「明日ですもんねぇ。ちなみにブラジルは今、真夏ですからね。

そのままの服装で行くと、干からびて死にますよ。」


田中「分かってるよ。それくらい。」


喜田「まあ、それはそうと田中さん、

おみくじサイコロまだ振ってるんですか?」


田中「え?いや、振ってない。なんかもう大吉当てちゃって

満足しちゃったんだよね。一応、持ち歩いてはいるけど。


あと気づいたことがある。おみくじサイコロは良い目が出ても

お金その物が貰える訳じゃなくて、お金の消費を抑えられるだけ。


俺が求めてた物とは違った。だから今は振ってない。」


喜田「ブラジル旅行には持っていくんですか?」


田中「まあ一応、持っていくつもりだよ。」


喜田「ふーん。そうなんですね。………。」


田中「ん?今、喜田ちゃんなんか言った?」


喜田「いえ、なんでもないです!ブラジル楽しんで来てください!」


━━━━━━━━━━━━━━━

ブラジル、無料の旅… 初日


当機はまもなく離陸します


田中「着いたー!ブラジルだー!

てか日差しが強すぎて火傷しそう。」


14人の当選者が1週間泊まるホテルに連れてこられた


黒兵「初めまして皆様!今回、案内役を努めさせていただきます!

黒兵熱次(クロヘイネツジ)と申します。どうぞよろしくお願いします!


とりあえず、このホテルの部屋決めをしましょうか!

と、ここで1つご報告がございます。実は…

部屋は5部屋までしか取れていません。


つまり1部屋に3人ずつ泊まっていただきます。

その3人のグループでブラジル旅行を楽しんでいただきます。」


?「え、でも。14人いるわけだから5部屋分の1部屋だけは

2人になるんじゃないですか?」


田中「確かにそうだよな…。」


黒兵「ふふふ…。実はですね。15人なんですよ。」


?「いや何回数えても14人ですけど…」


黒兵「その中に… その中に私を含めましたか?

実は今回の旅、案内役ではありますが私も一応、参加者なんです!

なのでこれで15人。これで3人ずつ部屋分けが出来ます!」


田中「つまり応募する時に15人までって書いてあったけど

そこに黒兵さんは含まれていた。じゃあ実質14人まで。

つくづく運が良いな。大吉、本当に凄いんだな…。」


そして部屋分けが行われた


?「という訳で俺はこの2人と一緒に旅行を楽しむってわけだ。」


田中「まあ、とりあえず自己紹介からします?」


黒兵「じゃあお先に!私は黒兵熱次!よろしくね!」


田中・?「し、知ってます…笑」


稲光「じゃあ次は俺が行かせて貰うぜ。俺の名前は稲光龍(イナビカリリュウ)

よろしくな!そして… 最後は君だな!」


田中「えー田中航と申します。お願いします。」


ということで田中航は黒兵熱次、稲光龍と共に

ブラジル旅行を楽しむこととなった


━━━━━━━━━━━━━━━

3日後…


田中航達は飲食店でお昼を食べていた。


稲光「やっぱりカレーはどこで食っても美味いなー!!」


田中「本当。美味しいですね。」


稲光「てか、前から思ってたんだけど航くんなんで、

いつもサイコロ持ち歩いてるの?」


田中「あ、これですか?実はこれおみくじサイコロって言って… 」


黒兵「ブゥゥゥゥゥ!!!! ゲホゲホッ!! 」


田中「な、なんですか!? 急に吹き出さないでください。」


黒兵「た、田中くん今、おみくじサイコロって言った?」


田中「え、ええ。言いましたけど…。」


黒兵「ちょっと見してもらってもいい?」


田中「はい… いいですけど。」


黒兵「ほ、本当だ…。本当におみくじサイコロだ…。」


田中「え?黒兵さんおみくじサイコロ知ってるんですか?」


黒兵「知ってる…。」


稲光「え?知らないの俺だけ?なんなのおみくじサイコロって?」


黒兵「おみくじサイコロは出た目の運勢を1日だけ味わうことが

出来る幸せを呼ぶ神のアイテムと呼ばれている。」


田中「そうそう。」


稲光「え、なにそれ? すごっ!」


黒兵「でもそれは、おみくじサイコロを使わせたいが為の嘘。

本当は大吉が3回出てしまうと持ち主の感情が消えてしまうという、

一見、最高のアイテムに見えて実は凄く恐ろしい呪いのアイテム。」


田中「そうそう… って… え? えー?! 嘘でしょ!?」


稲光「いや、死ぬほど怖いじゃん!

だから航くん、そんな静かなのか… 可哀想に…」


田中「いや、これは元からですよ… まだ大吉3回出てないですし。

というか、黒兵さん。その話、本当なんですか?」


黒兵「本当よ!てか田中くんこれ一体、誰に貰ったの?!」


田中「え? 六角っていう女性です…」


黒兵「六角… 知らないなぁ…」


田中「黒兵さんはその、感情が無くなっちゃうっていう情報、

てかそもそもおみくじサイコロ自体、どこで知ったんですか?」


黒兵「それはね… 昔、ブラジルの事を良く知りたくてブラジルの街

をブラブラ探索してた時、ある宗教の人に出会ったのよ。


その人は神運教(シンウンキョウ)という宗教の人で、その人に

私も勧められたの、そのおみくじサイコロを。

でも胡散臭いし、怪しさマックスだったから断ったの。


でもその後、神運教とおみくじサイコロが気になった私は

調べてみたの。そしておみくじサイコロは大吉が3回

でたら感情を無くすという事がわかった。

つまりおみくじサイコロは、無理やり神を動かすアイテム。


神から無理やり運を貰うわけで、その代償として大凶があると、

思わせておいて本当は大吉がおみくじサイコロで1番怖い目なのよ。


神から無理やり運を貰う代償として、持ち主から感情を奪い取る。

それがこのおみくじサイコロの本当の狙い。」


稲光「てか、それってつまり、航くんの感情を無くすのが本当の

目的で六角って女は航くんへ、おみくじサイコロを渡した。


六角って女は、航くんに対して恨んでたりするやつなのか?」


田中「いや、でも… 実際あったことあるけど…

初めて会う人だったし、もし以前にあってたとしても

あれだけ印象に残る人、覚えてないわけないし… 」


黒兵「そんなに脳裏に焼き付くほど印象が強いって、

第一印象は一体、どんな感じだったの?」


田中「いや、なんか変だったんですよ…

カフェで結構、人がいたにもかかわらず

一切、迷うことなく俺のところに来たんですよ…

まるで俺の姿を元々知っていたかのように… 」


黒兵「!? そうだ! 思い出した!

神運教の事を調べてた時に、神運教は変装術や変声術…

自分の身を隠すことが出来る能力を伝授する。

って書いてあったわ… 。」


稲光「つまり六角って女は初対面を偽った航くんの知り合い。

しかも航くんを相当、憎んでいる人。思い当たる人いる?」


田中「いや、居ないと思います… 」


黒兵「んー、まあ今、考えても分からないわね。

とりあえずその、おみくじサイコロを絶対使わないこと!

それさえ気をつけてれば大丈夫よ!」


田中「そうですね… 」


黒兵「ブラジル旅行はまだこれから!

その事は忘れて今は、とにかく楽しみましょう!」


━━━━━━━━━━━━━━━

ブラジル旅行の最終日…


田中「これでよしっと。」


稲光「このコーラ、誰の飲みかけ?」


黒兵「あ、ごめんなさい!それ私だわ!」


田中航達は帰国をするために、ホテルを出る準備をしていた。


黒兵「でも、もう2人とも帰っちゃうのね… 」


田中「あ、そっか。黒兵さんはブラジルに住んでるんですもんね。」


稲光「まあ、またいつか会いに来るから大丈夫!」


黒兵「そういえば、田中くん、

最後に言っておきたいことがあるの。」


田中「ん? なんですか?」


黒兵「ほら、おみくじサイコロの話をしてた時に田中くんの

感情を無くそうとしている人が居るって… 。


もしその人が身近な人で田中くんが今はもうサイコロを

振ってないということに気づいてたとしたら…

感情を消すという目的が果たせなくなる。

そしたら、もっと危ない事をしでかすかもしれない…


だから田中くん。帰ったら本当に気をつけなさいね… 」


田中「黒兵さん… ご心配ありがとうございます。

でも大丈夫です。なんとか犯人を突き止めて解決してみせます!

おみくじサイコロの事や他にも色々、本当にお世話になりました!」


稲光「まあ、航くんには俺もついてるしね!」


黒兵「そうね!じゃあ2人とも元気でね!また来るのよ!」


田中・稲光「はい!」


という訳で黒兵熱次とはお別れになった田中航と稲光龍

そして飛行機に乗り、日本へ無事帰国したのであった


━━━━━━━━━━━━━━━

帰国してから1週間が経ったある日の晩…


「とりあえず今のところ危険な目にはあっていない。

とはいえ、いつ狙われるか分からない。だから

ここ1週間、俺の周りで怪しい人がいないかを調べた。


だが分からない。一体、誰が六角という女性の正体なのか… 」


ピンポーン…


誰か来たようだ


田中「ん? 誰だこんな夜遅くに… 」


そこには黒いフードを深く被った男が立っていた

顔がよく見えない


田中「ど、どちら様ですか?」


その男はゆっくりと田中航に近寄る


田中「お、おい! 聞いてるのか!」


男は刃物を取り出し田中航のお腹に刺した。


田中「や、辞め… うわー!! 痛… くない… 」


?「あはははは!!ごめんごめん!!ビビるかなって思ってつい笑」


その男はフードを取る


田中「お、お前!」


男の正体はブラジル旅行を共にした稲光龍であった

そして田中航は稲光龍を部屋の中へ入れた


田中「で、何のようだよ。」


稲光「いや、その、航くんを狙ってるやつがいるって

聞いて怖がってる田中くんを助けに来た!」


田中「いや、お前が怖がらせてんだろ!」


稲光「いや、さっきのはちょっとしたジョークじゃん!

でも、本当に狙われているのは事実でしょ? 」


田中「多分… でも今のところ特に何も無い

周りの人が怪しくないか調べたりしたけどダメだった。」


稲光「じゃあさ、今はバレないように必死に隠してるから

見つかりずらいかもしれないけど、過去に六角さんと話したり

会ったりしてて気になったこととかなかったの?」


田中「実は、気になったことはめちゃくちゃある。」


稲光「じゃあそこから犯人を探し当ててみようよ!」


田中「確かにな… じゃあまず… 初めて会った時。

あの時は確か… そうだ。六角さん遅れてきたんだった。」


稲光「え?初対面なのにか?失礼なやつだな。

でも、なんで遅れたんだろうな。変装に手こずったとか!」


田中「それだ!でも、変装なんて俺と会う約束の時間より

だいぶ前からしとけばいいのに、それができない状況に居た… 」


稲光「つまり六角は航くんと会う時間のギリギリまで自分の用事

があった、もしくは約束の時間の前にもう航くんと会っていて

航くんと別れてから急いで変装をした。だから遅れた。」


田中「その時、俺は約束の時間になるまで会社で仕事をしていた。

そして時間になる30分前に用事があるからといい会社を早退した。

稲光が言う変装する前に俺と既にあっていたとするなら、

六角さんの正体は俺と同じ会社に勤めてるということになる…」


稲光「そうなると他に気になってた事が繋がってきたりするかも」


田中「他に気になった事… あ!そういえば!

会社で俺が大成功を収めた事、六角さんはその事をまるで

知っていたかのような口ぶりで俺と話していた。」


稲光「ということは航くんの仕事先の人が犯人で間違えなさそうだな」


田中「でも一体、誰が… 」


稲光「てか、そうじゃん!

今、六角に電話かけてみればいいじゃん!」


田中「あーそれが、前にかけてみたけど

現在使われておりませんになってて」


稲光「逃げたか… その電話番号さえ生きてれば電話をかけた本人

電話の持ち主が分かるのにな… 」


田中「電話番号… あ! そういえば… だから… そうか…

でも… なんで… お前が… 嘘だろ… ?」


稲光「ふふ… どうやら分かったようだね… 犯人が 」


田中「あー。分かった。分かってしまった。」


━━━━━━━━━━━━━━━

次の日…


田中「今日も疲れたー」


喜田「お疲れ様です!田中さん!」


田中「あ、喜田ちゃん。おつかれー。

そういえば喜田ちゃん、急で申し訳ないんだけどさ今日この後、

一緒にご飯いかない? 」


喜田「いいですよ!私もちょうど仕事終わったところですし!」


田中「俺、いい店しってるから連れて行ってあげるよ」


喜田「本当ですかー!やったー!」


と言い田中航は喜田あかりをカフェの近くの公園へ連れていく


喜田「田中さん?ここどこですか?この辺りにお店なんて無いですよ?」


田中「あるよ。お店。」


喜田「え?どこですか?お店どころか人すら見当たら無いですけど…」


田中「あそにカフェがあるでしょ。」


喜田「え、ええ。ありますけど… 」


田中「懐かしいね。あそこ。初めて会ったのがあそこだったよね。」


喜田「え?いや、私は会社で初めて田中さんと会いましたけど…」


田中「違うよ。」


喜田「え?どういうことですか?」


田中「俺は喜田ちゃんには聞いてない。六角さんに聞いてるんだよ」


喜田「む、六角さん? それっておみくじサイコロをくれた人じゃ?」


田中「そう、あのカフェで俺におみくじサイコロをくれた人。

あのカフェで、おみくじサイコロが感情を失う恐ろしい

呪いのアイテムということを言わずに、俺の感情を

奪おうとした人。それが君だったとはね。ショックだよ」


喜田「もし仮にそうだったとして、その証拠はあるんですか?」


田中「ある。そもそも何でも叶え屋を勧めてくれたのは喜田ちゃん。

あと電話番号が載ってる喜田ちゃんがくれたチラシを

調べてみたんだ。そしたらそんなチラシは存在しなかった。

つまりあのチラシは喜田ちゃんが作ったチラシ。


そしてあそこに載ってた電話番号は喜田ちゃんの別の携帯。

別の携帯で、六角さんとなり俺を騙していたんだな。

しかもその電話番号にかけても今はかからない。

多分、携帯ごと証拠隠滅したんだろうな。」


喜田「証拠というのはそれだけですか?」


田中「あとあのカフェで遅れてきたのも俺が会社を早退するまで

あの会社で一緒に働いてたから。喜田ちゃんは俺がカフェに

行くために早退するのを見てから自分も直ぐに早退したんだ。

そして変装に時間がかかりすぎて遅れてしまった。」


喜田「そんなの憶測にすぎないですよ!証拠でも何でない!」


田中「聞いたんだよ。今日、会社の上司に。俺が早退した日

喜田ちゃんも早退したかどうかをな。そしたら見事予想的中。


あと六角さんはカフェに入ってきた時

俺以外にもお客さんが数人いたにもかかわらず俺と同じ席に座った。

普通、初対面なら俺が誰か分からず迷うはずだ。でも迷わなかった。

何故か? それは喜田ちゃんが俺の姿を既に知っていたから。


あとそれに俺がある仕事で大成功を収めた

その企画に喜田ちゃんも参加をしていた。

だから電話で俺の大成功を知ったかのような口ぶりだったんだ。


あと六角さんは電話であんまり疑わないでくださいと言ってきた。

俺は六角さんの前では疑った言動を表に出していない。

今思えば喜田ちゃんは何故かおみくじサイコロの事

ばかりよく聞いてきた。その話の中で俺は疑いをあらわにしていた。


それを喜田ちゃんは六角さんの方で

疑わないでくださいね、と言ってしまった。」


喜田「なるほど… 他には?」


田中「あと六角って名前。これにもヒントがあるかもって考えてみて

分かったんだ。喜田という名前の中に四角が6つある。だから六角。

凄い単純だった。これも喜田ちゃんっぽい。


あと何より俺が今、おみくじサイコロは呪いのサイコロと言って

もし本当に喜田ちゃんが犯人じゃないならもっと驚くはずだ。

でも喜田ちゃんは驚かなかった。


なにせ喜田ちゃんは俺の感情を失くすという目的のために

おみくじサイコロを俺に渡した。つまり喜田ちゃんは

元々おみくじサイコロが呪いのサイコロって分かっていた。


だから俺が呪いのサイコロって言っても対して驚かず、

むしろ直ぐに証拠を求めて来た。この言動が何よりの証拠だよ。」


喜田「完敗ですね… まさかここまでバレていたなんて…

でも正直、バレているかもなって思って今、着いてきたんです。」


田中「バレてる可能性があるのにわざわざ誘いに乗ったのか?なんで?」


喜田「もう終わらせたかったんです…

実は私、田中さんのことが好きだったんですよ。」


田中「え?えーー!? 本当に?」


喜田「ええ。本当です。私は会社に入社した時に田中さんに

物凄い助けられて、その時、憧れの先輩になりました。

そして私も田中さんの力になりたいなっと思ったんです。


最初の頃は、私が少しの気ずかいでコーヒーを入れて

あげたり、飴をあげたり、仕事をお手伝いしたりして

それで田中さんに沢山、喜んでいただけました。

それが本当に嬉しかったです。


でも日が経つにつれて田中さんは私の少しの気ずかいも

喜ばなくなりしまいにはお金以外何も欲しくないと

言われてしまい、そこで私はどうにか田中さんに小さな喜びや

小さな幸せを感じて欲しいと思い神運教という宗教に入りました。


そこでおみくじサイコロを手に入れ、変装術も学びました。

そして私はおみくじサイコロさえ使えば田中さんはまた

小さな幸せを感じる人になってくれるんじゃないかと思い

おみくじサイコロを田中さんに渡しました。


もちろん感情を失う事も知っていました。

少しの幸せを感じてもらいまた小さな幸せでも

喜んでくれる人に戻って欲しい。ただそれだけを思っていました。

でもおみくじサイコロのせいで余計、お金が欲しいという

欲望に埋もれていくのを見て、ついに呆れたんです。


最初は小さな幸せを感じてくれたらすぐに取り上げるつもりでした。

でも、私の中で怒りと悲しみが生まれてついにこう思ったのです。

小さな幸せも感じれない人間なんて感情を無くしてしまえ、と。」


田中「そんなふうに思っていたのか…

喜田ちゃん、すまん。本当に申し訳なかった。


お金に目が眩んだゴミ人間の俺だけど、

俺にもお金を欲しがる目的がちゃんとあったんだ!」


喜田「もう大丈夫ですよ!気にしないでください!

田中さん、このカバンの中身。何が入ってると思います?

実はですね。この中には大量のおみくじサイコロがあるんです」


田中「ま、まさか… お前… 」


喜田「そのまさかです!

そもそも私が恋すらしなければこんな事にはならなかった。

だから私の感情を今ここで消してしまいます!


カバンがパンパンになるほどのおみくじサイコロ…

多分、100個以上はありますね… はは…」


田中「やめるんだ!喜田!」


喜田「もう遅いですよ!私はこの憎たらしい感情を失くす!」


その瞬間、喜田あかりは大量のサイコロを投げた

田中航は必死に止めにかかるがサイコロは全部投げられた…


カランッコロコロコロコロ…


田中「大吉が、いち… に… さん… 」


大量のサイコロが散乱している

あろうことか大吉の目は3個以上出てしまっていた

その瞬間、喜田あかりは座り込んでしまった


田中「お、おい… 嘘だろ… おい喜田!おい!」


喜田あかりは反応がない そして田中航は涙を流す


田中「本当に… 感情が…


すまん… 喜田… 今から俺がお金を欲しがってた理由を言う!


良く聞いてくれ!俺はお前、喜田あかりと結婚し世界一

幸せな家庭を築くためにお金を求めていたんだ!


俺もお前を死ぬほど愛していたんだー!!」


田中航はそう言い泣きながら喜田あかりへ優しくキスをした


その瞬間、散乱してたおみくじサイコロが赤く光だした

そして1つ1つが爆発し始めた

それはまるで花火のように綺麗に



そしておみくじサイコロはひとつ残らず砕け散った



そして…


田中「喜田… 」


喜田「田中さん……… 結婚しよ… !」


喜田あかりの感情は元に戻っていた

2人の愛の力がおみくじサイコロの呪いに勝った瞬間であった



━━━━━━━━━━━━━━━

1年後… 2人は結婚し一緒に暮らしていた




喜田「航さん!あの日からちょうど1年経ちましたよ!」


田中「思い出したくないです。」


喜田「もー!なんでですか!結局、性格は暗いままですね」


田中「でも変わったこともあるぞ。」


喜田「なんですか?」


田中「お金なんかより2人でいれる事がなにより幸せってこと!」




お金を求めてたアラサー会社員の田中航は


本当の幸せという物を知り


小さな幸せに感謝をし


生きていくのであった



おしまい

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