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シャカムニの使者☆にゅうめんマン  作者: 奥戸ぱす彦
10章 乙女の帰還
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乙女の帰還(2)

本館にある管長室の前までやって来たにゅうめんマンは木製の扉をノックした。すると中から

「入ってくれ」

 という声がしたので扉を開けた。


その部屋は多分十畳以上あって、まずまずの広さだったが、装飾はほとんどなく、巨大組織の親玉が仕事をするには地味な部屋だった。質実で大きな木の机、いくつかの事務的な棚、来客用のテーブルとソファのほかは、電話やゴミ箱など業務に必要な細々とした物が置いてあるだけだ。金銀財宝を散りばめた華美な部屋で、膝に乗せた飼いネコの頭をなでたり、美人秘書たちとたわむれているのかと思ったが、想像していたのと違った。


部屋には管長のほか副管長のホーネットがおり、机をはさんで、いすに座った管長と向かい合って立っていた。2人で何かの相談でもしていたのだろう。ちなみに、管長は厚手の作務衣、ホーネットはいつもの仮面にダークグレーの長袖シャツと同色のズボンという服装だ。以前は水晶玉のようにツルツルだった管長の頭は、しばらくみない間にゴルフ場の芝のようにフサフサになっていた。


にゅうめんマンはホーネットの真横へ移動し、管長に向き合った。

「話がある」

 にゅうめんマンが言うと、管長が答える前にホーネットが口をはさんだ。

「管長に向かって、なんて口のきき方だ」

「かまわん。もとより、こいつに礼儀など期待してはいないさ」

 ホーネットにそう言ってから、管長はにゅうめんマンにたずねた。

「にゅうめんの話だ」

「まあ、そうだろうな。そんな話は聞きたくもないが、どうせ言いたいことを話すまで帰る気はないのだろう。言ってみろ」

「にゅうめんを禁止している法律を廃止してもらいたい」

「それはできない」

「そう言うと思ったよ。だが、それならこちらも黙っていないぞ」

「どうするつもりだ」

「お前たちが独占的に作って国民に配給している、髪を生やすにゅうめんの製造施設を破壊する。そのにゅうめんを通じて国民を操っているみたいだから、それがなくなれば今の体制は立ち行かなくなるはずだ」

「実際にそんなことができるのかどうかはともかく、聞き捨てならんな。あくまで私たちの邪魔をするというのなら君には退場してもらわねばならない」

「どうやって」

「そうだな――まどろっこしい話はなしにしよう。今から屋上へ出て、拳で決着をつけるというのではどうかな」

「そんな提案をするとは意外だが、その申し出、受けて立とう」


というわけで、正義のヒーローと悪の親玉の決闘が3分くらいで決まった。将棋の対局や野球の試合もこれくらいスピーディーでありたいものだ。だが、にゅうめんマンの強さを知るホーネットが管長に進言した。

「管長が自ら相手をする必要はありません。この男を排除する方法は他にもあります」

「それにしては、こいつがうちの活動を妨害するのを、今まで誰も止められないじゃないか。それとも、取っ組み合いでは私がにゅうめんマンにかなわないというのか」

「そうではありません」

「ならいいじゃないか。さあ、屋上へ上がろう」

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