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シャカムニの使者☆にゅうめんマン  作者: 奥戸ぱす彦
6章 乙女の転機!
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乙女の転機!(7)

「このまま放っておけば、にゅうめんマンは間もなく死ぬだろう。しかし、君が私の弟子になれば、ラゴラ教徒の能力によってにゅうめんマンを助けられる」

「……にゅうめんマンはあなたに重症を負わせた敵なのに、なぜ助けるんですか」

「君を弟子に取る利益の方が大きいからだ。それに、にゅうめんマンにはもう用がないから、今後、少なくともこちらからは、あえて関わるつもりもない。そもそも、この間にゅうめんマンにやられたのは油断していたからであって、万が一にゅうめんマンと再び争うことがあっても特段問題はない」

 三輪さんは管長の言葉を検討した。管長がにゅうめんマンの回復に手を貸すのはやはり不自然な気もするが、とりあえず筋が通っているようではある。

「どうだね。どうしても嫌だというなら仕方ないが」


三輪さんは、にゅうめんマンを見殺しにするか、この世の誰よりも憎い相手の弟子なるか、選ばなければならない。これほど難しい選択がかつてあっただろうか。これと比べれば「あんの入っていないあんパンと、ジャムの入っていないジャムパンと、どちらが好きか選べ」と言われる方がまだ簡単だ。


だが、三輪さんは迷わなかった。

「分かりました。弟子になります」

「よし!そうこないとな。ラゴラ教を代表して君を歓迎するぞ」

 そう言うと管長は机の引き出しを開けて2色の仮面を取り出した。いわゆる仮面舞踏会に着けていくような、しゃれたデザインだ。目の周りと額の一部を覆い、鼻と口は覆わない。金と、黒っぽい色合いの2種類の金属でできているようで、黄色と黒のツートンカラーに近い配色だった。

「君のためにこの仮面を用意しておいた。これには2つの機能がある。第1に、この仮面を通じて私は君に暗黒のエネルギーを送り込む。それによって君は『ダークサイド』を操る能力を手っ取り早く獲得できる。さらに、私のエネルギーに感化されて、君の心もやがてラゴラ教徒らしいダークサイドに満たされるだろう。2つ目の機能として、その仮面をつけている限り君の正体は誰にも分からなくなる。つまり、自分から教えない限り君が三輪素子であることは誰にもばれない。その方がやりやすいと思うのでな。なお、その仮面は私の力により、一度着けたら二度と自分では外せない仕組みになっている。すなわち、それを身に着けたら後戻りはできないということだ」

 管長はいすから立ち上がり、三輪さんの座っている所まで行って仮面を手渡した。

「今ここで着けてくれ」


三輪さんは、手の中の仮面が放つ怪しい輝きを見ると、得体の知れない気味の悪さを感じて、背筋が冷たくなった。

「どうした。怖気づいたのか」

「……いいえ」

 三輪さんは仮面を顔に押し当てた。すると急に仮面が張りつき、そこから目に見えない暗いエネルギーが体の中に染み入った。それは、にゅうめんマンが昏睡状態におちいって以来三輪さんの心にわだかまっていた激しい憎しみと混じり合って、黒く燃え上がる炎のような膨大なエネルギーを胸のうちにかきたてた。その様子を満足そうに見つめながら管長は言った。

「今後、表向きはラゴラ教徒でなく六地蔵の副管長として活動してくれ。それから、正体を隠しているのに名前がそのままでは意味がないから、君に新たな名を与える。これからは六地蔵の『ホーネット』を名乗るがいい。発毛に成功した私の次の目標『日本の支配』を共に成し遂げようではないか。ハッハッハ!」


かくして、海辺の研究所に通う心優しい学生だった三輪さんは、悪の組織「宗教法人六地蔵」に就職した。我らがヒロインに明日はあるのか?

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