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シャカムニの使者☆にゅうめんマン  作者: 奥戸ぱす彦
6章 乙女の転機!
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乙女の転機!(4)

数日後、例の坊主は約束どおり再び病院に現れた。前と同じように、三輪さんが病棟を出たところで坊主は声をかけた。

「手紙は読んでいただけましたが」

「ええ。読みました」

「ありがとうございます。手紙の内容に興味があるなら、三輪さんを六地蔵本部へお連れするようにと管長から指示されているのですが、どうしますか」

「連れて行ってください」

「よかった。それではついて来てください」


坊主に案内されて、三輪さんはそばの駐車場に停めてあった車に乗り込んだ。それから六地蔵へ向けてすぐに2人で出発したが、何とも言いがたい暗い気持ちになった。ついて行くことに同意はしたものの、三輪さんは管長の言うことを信用してはいなかったし、それどころか、本当はその男のことを考えるのも嫌だった。


   *   *   *


三輪さんが宗教法人六地蔵の本部に来るのはもちろんはじめてだった。六地蔵と言えば、怪しい踊りを踊って人々を連れ去る恐ろしい集団だとみんな思っているので、信者でなければ自分から訪問する人間はほとんどいないだろう。広大な敷地にはいくつもの建物が建っていて、広い庭などもあるようだった。恐い団体だと思っていたが、屋外に点在する坊主たちは意外とくつろいでいて、中にはけん玉をしたり、ハンドスピナーを回したり、逆立ちの練習をして失敗して倒れてうめいたりしている者もいた。


三輪さんは坊主に連れられて大きな建物に入り、管長のものと思しき部屋までやって来た。坊主が木製の扉をノックして

「三輪素子さんをお連れしました」

 と告げると、中から

「入ってくれ」

 と返事があった。それで三輪さんは坊主と共に中へ入った。そこそこ広いが思ったより質素な部屋だ。調度類で一番高級そうなのは来客用の椅子だった。机も大きくて立派だが、見た目よりも機能を重視のデザインだ。だが、そんなことはどうでもいい。衝撃的だったのは、短期間で変わり果てた管長の頭だ。数週間前に三輪さんを誘拐したとき、管長の頭は鏡面のようにつるつるで、その気になれば、その頭を見ながらメイクができそうなほどだったのに、今や20代の若者みたいに、豊かな黒髪でふさふさになっているのである。管長の身に何が起こったというのか。


「ご苦労だった。2人で話をしたいので下がってもらえるか」

 管長は坊主に言った。はい、と言って坊主が退出すると、今度は三輪さんに言った。

「よく来てくれた。礼を言う。そこのいすにかけてくれ」

 三輪さんは来客用の大げさな椅子に腰掛けた。そして2人は何秒間か無言で対峙した。静かで濃密な雰囲気だった。


「こう言っても信じてもらえないかもしれないが、危害を加えるつもりはないので安心してほしい」

 やがて管長はそう言ったが、実際まったく信用できなかった。一月足らずでつるつるだった頭がふさふさになる坊主なんて怪しすぎる。一体何を食べたらそんなに髪が伸びるのか。ひょっとしたら、かつらか何かかぶっているのだろうか。それにしては生え際などが自然すぎる気もするが。

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