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シャカムニの使者☆にゅうめんマン  作者: 奥戸ぱす彦
4章 にゅうめんマン vs 理科系の男
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にゅうめんマン vs 理科系の男(4)

守ってばかりではらちが明かないと考え、にゅうめんマンは殴られた腕が痛いのを我慢しつつ思い切って攻めに出た。

「とおっ!」

 羽沙林が攻撃の手を緩めた一瞬の隙ににゅうめんマンは空中高く飛び上がり、落ちる勢いで敵の脳天にエルボードロップをぶち込んで、相手のななめ後ろに着地した。これは効き目があったらしく羽沙林は両手で頭を抱えた。そこですかさずにゅうめんマンは、規格外に大きな敵の背中にローリングソバットを叩き込んだ。その結果羽沙林は前のめりに倒れたが、想像以上にタフであるようで、間を置かずに起き上がってファイティングポーズをとった。


「なかなかやるじゃないか」

 何を思ったか、にゅうめんマンは一方的に語り始めた。

「だがこの勝負。始まる前からお前の負けだ」

「なぜだ」

「有効成分を抽出しただか増幅しただか知らないが、お前は一時的にちょっとにゅうめんを食べてみただけだ。一方、俺は1日3食、いや、3時のおやつを含めて1日4食、毎日欠かさずにゅうめんを食べている。――この意味が分かるな?」

「全然分からない」

「お前のような『にわかにゅうめん』では、俺にはかなわないということだ!」


言うやいなや、にゅうめんマンは羽沙林の膝に回し蹴りを見舞った。大きな効きめはなかったものの脚を蹴られた羽沙林は一瞬よろめいた。にゅうめんマンはその瞬間を突いて、相手の胸に稲妻のようなパンチをぶち込んだ。すると、羽沙林がバランスを崩して尻もちを突いたので、にゅうめんマンは相手の頭を狙って素早くキックを放った。しかし、それは片手で受け止められてしまった。にゅうめんマンは敵に息をつくいとまを与えず、今度は拳で頭を殴ろうとした。だが、羽沙林はその拳を受け止めてがっちりつかみ、そうした捕らえたにゅうめんマンの右腕を両手でへし折ろうとした。

「ぬぉぉぉ…!」

 にゅうめんマンは腕に力を込めて全力で抵抗した。筋肉魔神と違って見た目には分からないが、にゅうめんマンとて途方もない怪力の持ち主である。そう簡単に腕を折られたりはしない。にゅうめんマンは、空いている左手で羽沙林のこめかみに拳骨をぶち込み、相手の手の力が緩んだ隙に自分の右腕を引き抜いて事なきを得た。だが敵もさる者で、素早く立ち上がって、お返しの回し蹴りをにゅうめんマンに放った。にゅうめんマンは直前まで捕まっていた右腕に意識を取られていたこともあり、極端にリーチが長い敵のキックをかわす余裕がなく、とっさに両腕を構えてその攻撃をブロックしたものの、強烈な蹴りの勢いを受けて、転がるように後ろへ倒れた。さらなる攻撃を受けないよう、どうにかすぐに体勢を立て直したが、これはかなりこたえた。体のあちこちを擦りむいて血が流れた。


そのダメージから回復する時間を稼ぐため、にゅうめんマンは小走りに相手から離れた。すると、羽沙林が野生のバッファローのような恐ろしいスピードで突進してきたので、にゅうめんマンは再び宙高く飛び上がってかわした。スペインの闘牛にもこれほどの迫力はないだろう。


しばらく逃げ回っているうちににゅうめんマンは体力を回復した。ここからは楽しい反撃の時間だ。中途半端な攻撃では効き目がないのでできるだけ破壊力のある攻撃をしなければならない。にゅうめんマンはある「作戦」を思いついて、なおも羽沙林から逃げた。すると、そのうちに相手が再び体当たりを仕掛けて来た。そこでにゅうめんマンは自分からも敵に向かって全力疾走し、トップスピードに乗って猛烈なドロップキックを放った。――それは、猛スピードで突進する野生のバッファローに対し、同じく猛スピードで突っ込むカンガルーが真正面からジャンプキックをぶち込むといった趣の、むちゃくちゃな衝突だった。これにはさすがの筋肉魔神もたえられず、すさまじい衝撃を受けて仰向けに倒れた。一方、攻撃を仕掛けた側のにゅうめんマンも、体格で劣っていたせいもあり無傷ではいられず、激しい反動を受けて地面に墜落した。どちらもすぐに起き上がることはできなかった。

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