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シャカムニの使者☆にゅうめんマン  作者: 奥戸ぱす彦
3章 にゅうめんマンの過去
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にゅうめんマンの過去(5)

「ところで2人に提案があるんだけど」

 にゅうめんマンたちが手を離した後で、平群さんは言った。

「どんな提案ですか」

 三輪さんがたずねた。

「今度の日曜日に3人でピクニックに行こうよ」

「ピクニックですか。どうしてまた」

「それは……私がピクニックフリークだから」

「ピクニックフリークなんて初めて聞いたな」

 にゅうめんマンは言った。

「映画フリークだっているんだから、ピクニックのフリークがいてもいいでしょ。ピクニックは運動になって体にいいし、心もリフレッシュするんだよ!」

「確かに」

「でしょ?行きたいでしょ?三輪さんは来るよね」

「ごめんなさい。その日は用事があるんです。土曜日なら空いてますけど」

「じゃあ土曜日にしよう。にゅうめんマンもその日でいいよね。多分用事もないにんでしょ?」

「俺だって海岸でゴミを拾うという重大な用事があるんだけどな……」

「じゃあ来ないの」

「行く」

「来てくれると思った――それじゃあ今週土曜日の朝10時にこのアパートの前に集合でいい?弁当持参で」

「いいよ」

「いいですよ」


そういうわけで、なぜか次の土曜日に3人でピクニックに行くことになった。にゅうめん会は直にお開きとなり、にゅうめんマンはこの日味わった幸せを反芻はんすうしつつ、散歩がてらのんびり家へ帰った。


   *   *   *


「しかし真夏に覆面ってのはたまらんなあ」

 野原の松の林の陰の小さな瓦葺かわらぶきの家に帰って来たにゅうめんマンは、玄関の扉を締めるやいなや頭にかぶっていた覆面を脱いだ。マスクの下にあったのはみにくい傷に覆われた人にはとても見せられない顔……ではなく、いたって普通の若者の顔だ。いや、それどころか、どちらかというと男前かもしれない。普通の日本人の顔がニホンザルだとすると、にゅうめんマンの顔はチンパンジーなみではあるだろう。


それではなぜいつも覆面をかぶっているのか?それは、正義の味方にゅうめんマンがこの世に生まれたいきさつと関係がある。今でこそ無敵のヒーローとして天下に威名をとどろかせているにゅうめんマンだが、実は少し前までは、にゅうめんが好きでしょうがない普通の人間だった。そのあたりの事情をここで説明しておこう。事の起こりは半年くらい前にさかのぼる。


   *   *   *


当時にゅうめんマンは桜井鶴彦という名前の学生として生活していた。大学院に進学したばかりで、ある海辺の研究室の所属だった。そこは大学の本部から遠く離れた研究室で、10数人の学生がいた。その中の1人が三輪素子さんで鶴彦の同級生だった。


その研究室では学生室を出た所が休憩スペースになっていて、そこで学生たちが歓談したり飲み物を飲んだりする。ある日休憩スペースでコーヒーを淹れていた鶴彦は、お菓子の包み紙が床に落ちていることに気づいた。しかし、自分が落としたものでもないし面倒くさいので放っておいた。それからカップに淹れたコーヒーを持って学生室に戻るとき、入れ違いで三輪さんが学生室から出て来た。自分の机に帰ってコーヒーを飲もうとしたところ、鶴彦は砂糖を入れ忘れたことに気がついて、再び休憩スペースに出た。すると床のごみがなくなっていた。


その後鶴彦は、ときどき三輪さんが人知れずごみを捨てたり、汚れているところをきれいにしたり、休憩スペースの食器を片付けたりしてくれていることを知った。それに気づいたとき鶴彦は恋に落ちた。三輪さんはルックスも悪くないが、それ以上に鶴彦はこの人の人柄を尊敬しているのだ。

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