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6、魔女は渋々結婚した
「ベラっ! 来てくれたんだ! ありがとう!」
表情は明るいが私には彼の目がどうにも淀んでいる気がしてならない。
初対面の印象が悪いのが原因だろうか?
何故彼は私に対してこうも憧憬混じりの視線を送るのか。
わからない。興味もないが。
「手紙で伝えた通り、このお城の中に危険な呪いがあるの。
それを探させて欲しいわ」
用件を切り出すと若干不機嫌な色が彼からにじみ出てきた。
わかってはいたがやはり粘着質なタイプだ。
とても面倒くさい。
「それを僕が受け入れるメリットは何? ないよね。やだ。
そうだ。僕と結婚してくれるならいいよ?」
やばい。うざい。殴りたい。
まぁいい。強い呪いだ。探せばすぐ見つかるだろう。
呪いを見つけて排除したらさっさとおさらばしよう。
彼には私を捕まえられないだろうし。
「それでいいわ」
彼はリンゴが入りそうな程ぽかんと口を開けてマヌケ面をさらした後、喜色満面の笑み
を浮かべた。
彼の目から初めて暗い物が消えた気がする。