3、おばあちゃんは亡くなった
おばあちゃんは静かに亡くなった。
見送りは私と猟師のおじさんで行った。
屋敷にいるのは私1人だけになった。
「ベラドンナ様。今日からあなたが私のマスターです」
初代様はそう笑った。普段とは違う見た目通りの淑女みたいな笑い方で。
普段悪いお姉さんみたいな笑い方でちょいちょい変な事を吹き込んでくるのに。
主と従が明確に分けられた様な気がした。
「そうね」
胸の奥の重い空気を絞り出すように出した私の声はとても冷え冷えとしていた。
「今日明日はお仕事の予定は入っていませんし、今日はベッドで1日中寝ていても大丈夫でしょう」
貞淑な淑女の顔をして初代様はそう言う。初代様は私よりもずっと人間らしい。
記録が生きている私よりも人間らしいって何の笑い話だろうか?
今回だって意訳すれば仕事にならないでしょうし、寝室で泣いてきなさいって事だろう。
私は何だろう。初代様を人間とは違うと区別する癖に自分がそれよりも劣っているとコンプレックスを抱える。
おばあちゃんには色々教えてもらったのに、初代様の事ばかり考えて嫉妬している。
おばあちゃんは初代様と一緒に居すぎるなと言っていたのに気づけば居てしまう。
おばあちゃんから引き継いだ仕事もあるのにこんな事ではいけないんだ。
魔女の仕事はこんな事では熟せない。
おばあちゃんの担当していたドワーフ達は気はいいけど荒っぽいところがある。
本当は魔女の仕事の引継ぎは数十年くらい前に行われる予定だった。
私のお母さんが仕事を引き継がないでどこか行っちゃったからいけないんだ。
初代様は仕方ないって言う。頑張ってますよって言ってくれる。
でも私が未熟だから。境界はボロボロで異界の住人がこの世界に転がり込んでくる。
初代様は今はしょうがない。後で異界に送り返そう。今は境界を整えようと言ってくれる。
でも今がダメなのは変わらないんだ。
私は力が欲しい。